「アリアドネの声」井上真偽(著)のあらすじをネタバレで書きます。
その他、ラストのどんでん返し、このミス、ページ数、映画などについても書きました。
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どんでん返し・このミス・ページ数・映画など
ラストのどんでん返し
ラストのどんでん返しは、一人だと思っていた要救助者が実は二人いたことです。
救助する側の高木春生たちは、「見えない、聞こえない、話せない」の三重障害の中川博美だけを救助しているつもりでいましたが、博美は途中から韮澤粟緒の妹の碧と行動を共にしていました。
そのことを知らない春生たちは、三重障害では避けることができないピンチを博美が避けるので、「中川博美の障害って嘘じゃね?」という感じになります。
個人的にも「目だけちょこっと見えてんじゃね?」なんて思っていましたが、最後に博美と碧が一緒に救助されてくるところを読んで、「あぁ、なるほど」と素晴らしいどんでん返しを堪能することができました。
このミス
「このミス」は「このミステリーがすごい」のことで、「アリアドネの声」は「2024年の『このミステリーがすごい!』」の国内編のランクイン作品です。
「アリアドネの声」の順位は、5位でした。
ちなみに、2024年度のランクイン作品はこちら。
1位 「可燃物」 米澤穂信
2位 「鵺(ぬえ)の碑」 京極夏彦
3位 「あなたが誰かを殺した」 東野圭吾
4位 「エレファントヘッド」 白井智之
5位 「アリアドネの声」 井上真偽
6位 「木挽町のあだ討ち」 永井紗耶子
7位 「君のクイズ」 小川哲
8位 「世界でいちばん透きとおった物語」 杉井光
9位 「鈍色幻視行」 恩田陸
10位 「ちぎれた鎖と光の切れ端」 荒木あかね
「木挽町のあだ討ち」と「君のクイズ」と「世界でいちばん透きとおった物語」は読みました。
読んだ作品の中では「木挽町のあだ討ち」が個人的に一番おもしろかったです。
次点で「アリアドネの声」か「世界でいちばん透きとおった物語」というところです。この二作品は甲乙つけがたいです。
お時間ございましたら「世界でいちばん透きとおった物語」も読んでください。
ページ数、映画
「アリアドネの声」は、プロローグから第6章まであります。
プロローグは7ページから始まり、第6章の「アリアドネ声」は298ページまであります。
「アリアドネの声」は約300ページありますが、とても読みやすかったです。
映画化は2024年3月、この記事を書いている時点で何のアナウンスもありませんが、「アリアドネの声」を映画にしたら面白いと思います。
本を読んでいるだけではトラブル続出にもかかわらず切羽詰まった感じが伝わりづらかった印象でした。
「どことなくピンチですけど、どうせ助かるんでしょ」的な空気が私の部屋に充満したからです。
あと、本ではドローンのスピード感が実感できませんでした。
映画化されてドローンが制御不能になってすごい勢いでドローンが落ちていくシーンを見たりすると、ハラハラドキドキするかもしれません。
映画化されることを期待します。
登場人物
高木 春生(たかぎ はるお)
「無理だと思ったらそこが限界なんだ」が口癖。
所ジョージさんもビックリの遠距離通勤マン。静岡在中で新宿まで2時間かけて通勤している。
勤めているのは株式会社「タラリア」。ドローンビジネスを手掛けるベンチャー企業。
花村 佳代子(はなむら かよこ)
ハルオの教育係だった人。一児の母の三十代。
必殺技は朝一の炭水化物攻撃。
我聞 庸一(がもん よういち)
ハルオの二期上の先輩社員。
物語の前半はパッとしないが、地震後の世界では主役級。
韮澤 粟緒(にらさわ あお)
ハルオの高校の同級生。イヤミったらしい女子。高校時代にハルオとひと悶着あった。
妹がいる。名前は「碧」といい、失声症。
中川 博美(なかがわ ひろみ)
「見えない・聞こえない・話せない」の三重障害の女性。
アイドルとしては若干行き過ぎた三十代半ば。
「令和のヘレンケラー」の異名を持つ。
火野 誠(ひの まこと)
S市中央消防署・WANOKUNI出張所の消防士。
高木春雄のことを「教官」と呼ぶ。
ドローンが操縦できる。
あらすじ
「アリアドネの声」のあらすじは複雑ではありません。
最後のどんでん返しに向かって、高木春生がドローンをひたすらに操縦していくという感じです。
以下から、簡単にあらすじを書きます。
簡単なあらすじ
高木春生は幼い頃、兄を亡くしました。
兄の口癖が「無理だと思ったら、そこが限界なんだ」というものでした。
兄の死で母親が情緒不安定になり、母親のそばにいるために春生は遠距離通勤をしています。
春生も兄の死は自分のせいだと思っており、「無理だと思ったら、そこが限界なんだ」という言葉の呪いに縛られていて、「無理だと思ったらダメ」という限界ギリギリで頑張って生きています。
ちなみに、呪いの口癖に悩んでいた春生でしたが、物語の最後の方でニュアンス違いという抜け道を見つけて割と簡単に呪いを解きました。
春生の会社は「WANOKUNI」プロジェクトに参加していました。
WANOKUNIプロジェクトは、IT技術を駆使して健常者も障がい者も分け隔てなく生活できる都市を構築するというもので、春生の会社はドローンで参加しています。
春生、花村と我聞は、ドローンの空中ショーをするためにWANOKUNIプロジェクトのオープニングセレモニーにやってきて、地震に巻き込まれます。
春生、花村と我聞はドローンを使って、地下で地震に巻き込まれた、中川博美を救出することになります。
使うドローンは、アリアドネシリーズ第三世代の「SVRーIII」で赤銅色の機体。
ちなみに赤銅色は以下のような色です。割と古風な色です。
博美は、見えないし、聞こえないし、話すこともできません。
三重障害の博美を安全な場所までドローンを使って誘導するという作戦です。
具体的にはドローンにつながっているロープを博美につかんでもらい、ドローンで誘導するというものです。
作戦が始まり、アリアドネのカメラが壊れたり、アリアドネが電波の届かないところへ墜落したり、韮澤の妹が行方不明になったり、春生の後頭部に迷惑ユーチューバーのドローンが突っ込んできたりします。
トラブル続出の中で博美がピンチに遭いますが、博美は「見えているかのような」有り得ない動きを繰り出し、危険を回避していきます。
博美が何度も危険を回避するので、「こいつ見えてるんじゃね?」という、中川博美の障害ウソ説が春生たちの間で浮上します。
さらに迷惑ユーチューバーがドローンを使って春生たちの会話を盗みSNSに拡散したので、世間にも中川博美の障害ウソ説が広がりました。
春生たちは不信感を持ちつつも「博美さんは皮膚から伝わる振動的なもので周りを見ているのだ」という、もはや「ワンピースの藤虎か?」「エコロケーションか?」ぐらいのメルヘンな解釈で心をふるい立たせ救助に集中します。
そして、春生たちは博美を安全な場所へ誘導することに成功しました。
ただ、博美の障害ウソ説は完全にぬぐえません。わだかまりバリバリです。
このわだかまりを、ラストでどんでん返しします。
しばらくしてから、韮澤の妹の碧が博美と救出されてきます。
そう、博美と行方不明になっていた碧は一緒に行動していて、二人でピンチを切り抜けていたのでした。
以上です。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。