「日本語文章チェック辞典」(石黒圭 著、東京堂出版)を読みました。
勉強になったところは、接続詞の使い方。特に企画書や報告書、論文やレポートなどの「お堅い文体」のときに使う接続表現が参考になりました。
以前から、企画書や報告書、論文やレポートを書いているときに「『だから』や『なので』を使うと、ざっくばらんすぎるかな?」と感じておりました。では、「『だから』や『などで』の代わりに何を使いますか?」と聞かれると、わたしは「これだ!!!」と自信を持って答えることができません。
わたしと同じく、そんな方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。
いませんか。そうですか。
そこで、「日本語文章チェック辞典」(石黒圭 著、東京堂出版) で勉強になった。企画書や報告書、論文やレポートなど、「お堅い文体」を書くときには、どのような接続表現を使えばよいかについて書きたいと思います。
「書き言葉」に「話し言葉」を混ぜない
接続表現の選び方で難しいのは文体との関わりですが、2つのことに気をつければ大丈夫。
チェックポイントは2つです。
・「書き言葉」に「話し言葉」が混ざらないように意識する。
・論文やレポートでは「お堅い文体」に合った接続表現を選択する。
「話し言葉」とは、会話するときの言葉です。ですから、直観的に理解しやすい。
一方で「書き言葉」は、文章に使う言葉です。
企画書や報告書、論文やレポートなど、不特定多数の人が読む可能性がある文章は、要点に絞って簡潔に表現する「書き言葉」を使うほうが良いです。
「話し言葉」と「書き言葉」
接続表現には、「話し言葉」で使われやすいものと、「書き言葉」で使われやすいものとがあります。
「話し言葉」で使われやすい接続表現を企画書や報告書、論文やレポートで使うと、論理性にとぼしい、ざっくばらんな印象を与えてしまうため、使わないように気をつける必要があります。
文と文をつなぐ接続表現にはこのようなものがあります。
- 順接
- 逆説
- 添加
- 説明・補足
- 並列
- 選択
- 転換
順に例をあげていきます。
順接と逆接の接続表現
(1)は順接、(2)は逆接の接続表現です。
Before
(1)本研究は広告の言語特徴について調査分析したものである。
だから、本研究はマーケティングの参考に資する。
(2)この調査では終助詞の性別差を明確に確認できなかった。
けれども、それが存在しないわけではない。
日本語文章チェック辞典 172ページから
(1)には順接の接続表現「だから」が使われています。「だから」、「なので」や「それで」は、論文では避けた方がいい接続表現です。
代わりに、「よって」「そのため」「ゆえに」「それゆえ」「したがって」「その結果」「そこで」などを使うのがよいでしょう。
(2)には逆接の「けれども」が使われています。「だけど」「けど」「けれど」「でも」は、「話し言葉」だとわかりやすいのですが、「けれども」や「ところが」は「書き言葉」寄りの印象ですよね。
しかし、「けれども」や「ところが」は「話し言葉」寄りの接続表現です。論文やレポートには積極的に使わない方が良いかもしれません。
論文やレポートにあった逆接の接続表現は、「しかし」「だが」「しかしながら」ですから、以下のように修正すると良いです。
After
(1)本研究は広告の言語特徴について調査分析したものである。
よって、本研究はマーケティングの参考に資する。
(2)この調査では終助詞の性別差を明確に確認できなかった。
しかし、それが存在しないわけではない。
日本語文章チェック辞典 173ページから
添加の接続表現
(3)と(4)は添加表現の例です。
Before
(3)両言語に共通する点と相違する点とを明らかにする。
それに、外国語学習への応用の可能性を探る。
(4)刀は先に平面を何度も打ち、次に、側面を何度も打つ。
そうしてゆっくりと叩き固めていく。
日本語文章チェック辞典 173ページから
「あと」「おまけに」「それと」「それに」「それから」は、「話し言葉」のようになるため使わない。
代わりに、「さらに」「そのうえ」「そのほか」「なお」を使うと良いでしょう。
同様に、「こうして」「こういう風にして」「そうして」「そういう風にして」も使用を避ける。
代わりに、「このようにして」「そのようにして」を使いましょう。
After
(3)両言語に共通する点と相違する点とを明らかにする。
さらに、外国語学習への応用の可能性を探る。
(4)刀は先に平面を何度も打ち、次に、側面を何度も打つ。
そのようにしてゆっくりと叩き固めていく。
日本語文章チェック辞典 173ページから
説明・補足の接続表現
(5)と(6)は、説明・補足の接続表現の例です。
Before
(5)会話の構造分析を進めている。
ただ、フィラーの扱いは保留にしている。
(6)「言葉遣い」は重要なマナーの一つである。
なぜかというと、言葉によってコミュニケーションを図るからである。
日本語文章チェック辞典 173ページから
「ただ」は「話し言葉」のようになるため使用を避ける。
代わりに、「ただし」を使うと良いでしょう。
同様に、「なぜかというと」の使用も避ける。
代わりに、「なぜなら(ば)」を使いましょう。
After
(5)会話の構造分析を進めている。
ただし、フィラーの扱いは保留にしている。
(6)「言葉遣い」は重要なマナーの一つである。
なぜならば、言葉によってコミュニケーションを図るからである。
日本語文章チェック辞典 173ページから
並列、選択、転換の接続表現
並列、選択、転換の接続表現は、論文やレポートに使える。
並列の接続表現は、「また」「ならびに」「および」「一方」です。
選択の接続表現は、「あるいは」「または」「それとも」「もしくは」です。
転換の接続表現は、「さて」「ところで」です。
この中で「ところで」だけは少し「話し言葉」寄りです。
「ところで」は
論文やレポートの内容によっては
使わないほうが無難かもしれません
句と句をつなぐ接続表現
句と句をつなぐ接続表現について確認します。
Before
(7)ソフトウェア産業は知識が重要な位置を占める産業なので、
人材は企業の失敗と成功を決めるかぎとなる。
日本語文章チェック辞典 175ページから
「(な)ので」は「(だ)から」よりも落ち着いた表現ではあります。
しかし、「お堅い文体」では使いにくい印象があります。
「(である)ため」と換えるのがよいでしょう。
After
(7)ソフトウェア産業は知識が重要な位置を占める産業であるため、
人材は企業の失敗と成功を決めるかぎとなる。
日本語文章チェック辞典 175ページから
同様に、「けれど」や「のに」は、「が」へと換える。
(例:「同じ語であるけれど/のに」→「同じ語であるが」)
「し」は「ば」へと換える。
(例:「~と読むときもあるし、」→「~と読むときもあれば」)
「って」は「としても」へと換える。
(例:「全部読んだってわからない」→「全部読んだとしてもわからない」)
まとめ
接続表現には、「話し言葉」で使われやすいものが多くあります。
それらの接続表現は、砕けた印象を与えてしまうため、論文やレポートでは使わないよう気をつけたいです。
・「書き言葉」に「話し言葉」が混ざらないように意識する。
・論文やレポートでは「硬めの文体」に合った接続表現を選択する。
この2つに気をつけましょう。
順接、逆接、添加、説明・補足、並列、選択、転換の意味と、文体を意識してふさわしい接続表現が自然に選択できるように心掛けたいですね。
下の票を見れば一発!!! 頭に叩き込みたいと思います。
話し言葉 | 書き言葉 | ||
順接 | だから、なので、それで | → | よって、そのため、ゆえに、それゆえ、したがって、その結果、そこで |
逆接 | だけど、けど、けれど、でも、けれども、ところが | → | しかし、だが、しかしながら |
添加 | あと、おまけに、それと、それに、それから こうして、こういう風にして、そうして、そういう風にして | → | さらに、そのうえ、そのほか、なお このようにして、そのようにして |
説明・補足 | ただ なぜかというと | → | ただし なぜなら(ば) |
並列 | また、ならびに、および、一方 | → | また、ならびに、および、一方 |
選択 | あるいは、または、それとも、もしくは | → | あるいは、または、それとも、もしくは |
転換 | ところで | → | さて |
句と句をつなぐ接続表現 | (な)ので、(だ)から あるけれど、あるのに あるし だって | → | (である)ため あるが あれば だとしても |
参考文献
「日本語文章チェック辞典」(石黒圭 著、東京堂出版)