小説「レッドクローバー」まさきとしか 著を読みました。
登場人物、あらすじや「レッドクローバー」の謎を紹介します。
ネタバレ全開でお届けしますので、ご注意ください。
すんごいおもしろい内容だったので、原作を読んでいただいてから、また来てください(←ここ大事)
お待ちしております。
お越しいただきありがとうございます。
27500字ほどありますが、よろしかったらお付き合いください。
ネタバレ・あらすじ
「レッドクローバー」の目次は以下のようになっています。
目次
- プロローグ
- 第一章 夏
- 第二章 鎖
- 第三章 火
- 第四章 怒
- 第五章 子
- エピローグ
各章の中で、
「望月ちひろ――14年前」
「勝木剛――現在」
のように、過去や現在に話が飛んで物語が進んでいきます。
順に、あらすじを書いていきます。
プロローグ
勝木が2か月ほど前に起きた「豊洲バーベキュー事件」を思い出すところから物語がはじまります。
豊洲バーベキュー事件
豊洲のバーベキューガーデンで、ヒ素入りの飲み物を飲んだ男女三人が死亡。四人がヒ素中毒になった事件です。
犯人は、丸江田逸央。丸江田はその場で逮捕されています。
第一章 夏
勝木剛 現在
今、勝木は「月刊東都」で働いています。
月刊東都で同僚の徳丸梓と居酒屋で飲みながら「豊洲バーベキュー事件」について話していました。
話の内容は、「世の中は大量殺人事件よりも、芸能人のスキャンダルが好き」というもので、「結局のところ、人は他人の失敗や転落が好きなのだ」という、幸せホルモン噴出皆無の自己嫌悪になる話をしていました。
話の中で徳丸は「ざまあみろって思っています」と言いました。この言葉は「豊洲バーベキュー事件」の犯人・丸江田が取り調べ中に言った言葉でした。
望月ちひろ 14年前・夏1
望月ちひろは14年前の夏、母の久仁子の都合で北海道の灰戸町にある祖母のところへあずけられました。
灰戸町
灰戸町は北海道の南部に位置しており、函館から車で1時間ほどの町です。
灰戸町の人口は約一万五千人で、のどかな港町といった風情の町です。
灰戸町でちひろは赤井三葉と会います。これが怪物、望月ちひろが生まれたきっかけです。
会ったその日に意気投合? 赤井三葉は、望月ちひろを闇神神社へ連れていきました。
このときに三葉とちひろがいろいろな会話をしますが、確実にちひろの方が大人っぽい考え方をしていることがわかります。
ここでなー
灰戸町でちひろちゃんが素敵な人たちに囲まれて過ごしていたらなー
不幸になる人が確実に減っていたのになー
なんて考えてしまいます。
闇神神社
灰戸町にある神社。
ちょっとひねくれた神様がいて、悪い願いだけを叶えてくれます。
祈るとターゲットを殺せるらしい、おっかない神社で、江戸時代に北前船で移住した人が建てたと言われています。
望月ちひろは赤井三葉と会った夜に種田春香とも会います。なんて日だ!
春香はちひろに根掘り葉掘り聞いたあと、「へー。あんた親に置いていかれたんだ」とか嬉しそうに言いました。
春香も性格がかなり悪いポンコツです。
三葉がのちのち敵を討ってくれますけど。
勝木剛 現在
勝木は12年前に起こった「灰戸町一家殺害事件」と「豊洲バーベキュー事件」は同一犯ではないか、と考えていました。
「豊洲バーベキュー事件」の犯人・丸江田が殺害に使ったヒ素は、12年前の事件と同じヒ素だったからです。
・三酸化二ヒ素
三酸化二ヒ素は、シロアリ駆除の殺虫剤として使われていました。
ヒ素は「愚者の毒」と呼ばれています。なぜなら、簡単に検出され、犯罪の痕跡が残るからです。
・灰戸町一家殺害事件
12年前に北海道の灰戸町で起きた事件です。
夕食のシチューとカレー、麦茶にヒ素が入れられていました。
死んだのは、夫、妻、小学三年生の長男、夫の母親の四人です。
同居していた高校一年生の長女は死んでいません。
この死んでいない長女が「赤井三葉」で、赤井三葉の名前から、灰戸町一家殺害事件は「レッドクローバー事件」と呼ばれました。
勝木は、赤井三葉を見たことがありました。
灰戸町一家殺害事件があったころ、勝木は函館にいて事件の取材をしていました。
勝木が赤井三葉を見たのは事件から一か月が過ぎたころで、事件現場となった家で三葉を見ました。
赤井三葉は、家族が死んだ場所でカップラーメンをすすっていました。
「座卓に腰かけていた三葉の背中は幼女のように頼りなかったが、首筋から背中にかけての骨のラインから目が離せなかった」と勝木は言っています。
勝木は、このときの赤井三葉のことが12年経った今でも気になっていて、「豊洲バーベキュー事件」を取材することになりました。
丹沢春香 14年前・夏2
丹沢春香は闇神神社で祈っていました「どうかあいつが死にますように……」と。
春香は娘の富恵を見て思います「なんてぶさいくなんだろう……」と。
春香は思います「不公平だ!」と。
春香は、行き止まりとわかっている暗いトンネルを歩き続けなければならない絶望を感じていました。
ネガティブの極み乙女な春香さんです。
神様、「春香さんにきつく当たるのは、もうやめてあげて」と言いたい(笑)
春香さんの当面の目標は夫の克義を殺すことなので、闇神神社へのお参りはかかせません。
小悪魔三葉は、春香に「おばさんの願い、かなうといいね」と言い、「うちのじいちゃんの家に殺虫剤があるよ」とか春香をそそのかす、というか悪魔のささやきをします。
春香が殺虫剤をルパンしに出かけた夜、春香の家が燃えました。
勝木剛 現在
勝木は「豊洲バーベキュー事件」の犯人・丸江田逸央と面会しました。
この章で、丸江田逸央が「灰戸町一家殺害事件」の犯人ではないことがわかります。事件当時の丸江田逸央のアリバイが見つかっていたからです。
勝木との会話の中で、丸江田は赤井三葉に興味があることがわかります。
実は丸江田は赤井三葉にあったことがあります。
いや正確に言うとちがうんですけど。
のちのち、わかります。
この数時間後、勝木は灰戸町にいました。
勝木は灰戸町のスーパーで赤井三葉のことを聞きましたが手掛かりなしでした。しかし、1か月前にも「灰戸町一家殺害事件」のことを聞かれたとの情報を得ます。
その後、函館に戻った勝木は東都新聞の函館支局へ向かいました。支局長の大山に会うためです。
大山からも、「1か月前に東京からジャーナリストが来て、豊洲と灰戸町の事件の関連性を探っていたよ」との情報を得ました。
ほかにも、丸江田は8年前の26歳のときに札幌で窃盗罪で捕まって罰金刑を受けたことがある、という情報を大山は教えてくれました。
「なんで丸江田は札幌にいたんだ?」と勝木が言うと、「人生につまずいた人間は北に向かうんだよ」と大山は言いました(笑)
あながち間違っていないのが怖いです。
第二章 鎖
塩尻悦子 14年前・秋
丹沢春香の家が燃え、1か月過ぎたころの話。しょっぱなから、悦子の回想が始まります。
回想の内容は、ちひろが二か月前に来たことや、ちひろが心配で夜勤が不安になったことです。その他は、娘の久仁子が突然「ちひろをあずかってほしい」と言ってきたことなどです。
ちひろと三葉の会話で丹沢富恵が火事で亡くなったことがわかります。三葉は丹沢春香が殺したかった相手が富恵だと勘違いしています。
さすがに春香さんが悲惨すぎる。
丹沢春香が殺したかったのは夫の克義だったんだけどね、と三葉に言ってやりたいです。
丹沢春香も火事の後に姿を消したのはタイミングが悪いです。
さすがにそのタイミングで姿を消すと、「家に火をつけたのは春香じゃね?」と近所で噂されても仕方なし、です。
この辺りから、ちひろという人物が少しずつねじ曲がっていくのがわかります。
勝木剛 現在
丸江田逸央との最初の面会から二週間後の話。勝木は、また丸江田に会いに来ました。
勝木が丸江田に「8年前に札幌で逮捕されてたよね」と聞くと反応がありました。
勝木は丸江田が死ぬつもりで札幌に向かったと考えていて、丸江田が「定山渓心中事件」に関係していると勝木は推測していました。
・定山渓心中事件(じょうざんけいしんじゅうじけん)
札幌の奥座敷にある定山渓温泉の近くで、ワゴン車の中から男女四人の遺体が発見された事件。
男性は三十代と六十代で、女性はふたりともに二十代でした。
四人に外傷はなく、目張りされた車内には練炭がありました。
集団自殺として処理されています。
勝木は「定山渓心中事件のときに彼女(三葉)と一緒にいたんじゃないですか?」と丸江田に問いかけます。
丸江田は「彼女は、死んだのかもしれません」と言いました。
丸江田逸央 8年前・秋
26歳のとき、丸江田逸央は天涯孤独になりました。
家も定職もなく、ネカフェで寝泊まりする毎日でしたが、不幸だとは思いませんでした。
そんな丸江田に同じネカフェを利用していた名もなき男が名言を放ちます。
● 名もなき男の名言
不幸な人はその場にうずくまったまま動かない。
幸せな人はさらに上を目指して動き続けるのだ。
幸せなんて幸せなときにはわからない。
失ってはじめて、あのときは幸せだったと気づくのだ。
だから、はたから見れば幸せそうな人でも、当人は幸せじゃないかもしれない。
逆に自分より恵まれた人と比べて、自分は不幸だと思っている人は多い。
この名言を言った男には前歯がありませんでした。
逸央には、男になぜ前歯がないのか? ではなくて、この名言が理解できませんでした。
逸央は、名もなき男がうっとおしくなってネカフェをチェンジします。
逸央がこの名言を理解していたらなぁ……なんて思いました。
今でも十分にありがたい。今の自分よりも不幸な人なんて余裕で1000万人はいるはずだから。
な・の・で、上を向いて歩こうぜ! とはなかなか思えないよね。とも思いますが。
10月14日の午前10時、丸江田逸央は札幌駅の北口にいました。北海道の森の中で死ぬためです。
札幌に集まった自殺希望者は5人いました。メンバーは、イチジョウ、ヨシダ、ルナ、タカマツ、スズキと紹介されました。
最初は森の中で死ぬ予定でしたが、スズキと名乗る女性が「豊平峡ダムへ行きたい」と言ったので目的地が変わります。
スズキの黒いリュックサックには、黄色いクマの編みぐるみがついていました。
・豊平峡ダム
札幌の南区にあります。南区は、ほとんどが山です。
豊平峡ダムは定山渓温泉よりも山奥にあります。
豊平峡ダムの帰り道、黄色いクマのスタンドを持つスズキが本領を発揮します。
スズキは「オラオラオラァーッ!!」と、言いたいことを言いまくりました。
生きてるのが苦痛だとか、生きる才能がないとか言うけれど、それは世の中に殺されているんじゃないの。
自分で死ぬことを選んだ気になっているけど、それはちがうんのよ。あなたたちは殺されているの。
しかも、あなたたちを殺したやつは、あなたたちが死んでも何とも思わないんだな、これが。
というか、あなたたちが死んだことにさえ気づかないんだよね、悲しいかな。
苦しくて生きていけないなんだよ!
楽しいこともやりたいこともないんだよ!
希望がないんだ!
生きている意味がないんだ!
あんたにはわからないのか!
だから死ぬんだ?
だから殺されるんだ?
苦しくて生きていけないなら、苦しみの原因を排除せよ!
あなたたちを殺そうとしているやつらは、あなたたちのことをハエくらいにしか思っていない。
死ぬべきは、あなたたちじゃなくて、あなたたちを殺そうとするやつらだ!
私はおりる!
俺もおりる!
スズキのスタンド能力は丸江田逸央にしか効果がなく、4人は自殺し、逸央はスズキからヒ素をもらいます。
東京へ帰る金を持っていなかった逸央は、札幌のコーヒーショップで置き引きをして捕まりました。
東京へ帰った逸央は、灰戸町一家殺害事件のことを思い出し、ネットで赤井三葉の写真を見つけスズキは赤井三葉だと確信します。
違うんだけどね。
これが、丸江田逸央が灰戸町一家殺害事件の犯人にこだわる理由です。
第三章 火
望月ちひろ 13年前・初夏
ちひろが灰戸町に来てから1年後の話です。
ちひろは修学旅行へ行きたくありませんでした。ちひろが修学旅行へ行きたくない理由は、修学旅行を一緒に回る班の3人が嫌いだからです。
そんなちひろに三葉はこう言います。
その3人は修学旅行へ行かなくていいんじゃね?
ちひろは、その3人が死ねばいいと思ってる?
うちのじいちゃんの家の物置は、鍵がかかっていないよ。
殺虫剤を給食に入れてみたら。
ママから連絡きた?
来てないんだ。
やっぱりあんた捨てられたんだよ。
きっとホントの子供じゃないんだよ。
小悪魔三葉は言いたい放題ですが、怪物を育てているのに気づいていません。
結局、ちひろは体調不良で修学旅行へ行けませんでした。
まぁ、おもしろいぐらい、さまざまなことが悪い方向へタイミグ良く転がります。
ちひろは十か月ぶりに久仁子と会います。会ったのは函館港のそばにあるホテルでした。
ホテルには久仁子の他にもちひろを見ていた人物がいました。誰かはのちのちわかります。
久仁子はこのホテルで「ちひろは邪魔だ」という態度を露骨に見せました。自分は「東京でエステの店をする。ちひろは灰戸町で暮らすのが幸せよね」というようなことを平気で言います。
このとき、ちひろは久仁子から黄色いクマの編みぐるみをもらいます。ちひろはクマも黄色も好きではありませんでしたが、「わー。かわいい」と言いました。
久仁子も怪物を作るのに一役買っています。
もはや、三葉&久仁子が楽しんで怪物を作っているようにさえ見えます。
勝木剛 現在
勝木は豊洲と灰戸町の事件を探っていたジャーナリストを探すことになります。理由は、丸江田逸央と赤井三葉に接点があったことを記事にするためです。記事が自分たちよりも先に他社に書かれる可能性を消すためでもありました。
東都新聞函館支局の大山からの情報で、ジャーナリストの名前は尾形聡とわかっていました。勝木は尾形聡のさらなる情報を得るために灰戸町へ向かいます。
灰戸町で勝木は南部と話をします。三葉と仲が良かったちひろのことや、4年前に塩尻悦子が亡くなり、母親の久仁子がちひろを迎えに来て、ちひろは東京か埼玉へ行ったという情報を得ました。
去り際に南部は「久仁子と三葉が親子ではないのに雰囲気が似ていた」と言いました。
勝木はふと妻の美和子が言ったことを思い出します。
子供を愛さない親は、残念だけどいる。
子供を愛さない親はいるけど、親を一度も愛さない子供はいない。
だから、長女が親を殺したのであれば、先に長女が心を殺されたのだ。
被害者を断罪する言い方に、勝木は絶句したのを思い出しました。
赤井笑子 12年前・春
笑子の兄が亡くなり、笑子と夫の洋介は通夜へ行くことになります。場所は札幌です。
笑子は、札幌で兄が普通の人になっていて、普通に家庭を持って、普通に暮らしていたことを知りました。
笑子が知っている兄は普通ではありませんでした。
昔、一緒に住んでいたころの兄は、一日何をしていたかを笑子に報告させたり、笑子が予定からズレた行動をすると罵倒していました。
兄は会社から帰ってくると、笑子の携帯やバックをすみずみまで調べたり、笑子のアルバイト代を懐に入れ、笑子には毎月三千円のお小遣いを渡していました。
兄は笑子に洋服を買ってきては、目の前で着替えさせたりもしていました。
そんなことを思い出しながら、笑子は兄の家に火をつけようとしましたが、ライターの火力が弱くて火はつきませんでした。
ろくでもないことを強要してきていた兄がどれだけ普通の人に変わろうと、はらわた煮えくり返って家に火をつけようとした笑子の気持ちもわからなくはありません。
ですけど、火はつかなくてよかったよね。みたいな感じです。
笑子と洋介が札幌に行っている間に、闇神神社でボヤ騒ぎがあります。犯人は三葉だという証言もあるが証拠はありません。
札幌から帰ってきた笑子は妙に三葉が癇に障ります。好き勝手に生きている三葉を見ると腹が立ちました。
15歳のころの笑子は奴隷のようで、家畜のようでした。ずっと何かの犠牲になり、自分を殺していましたが、そのことに気づく余裕もありませんでした。
それなのに三葉は、理不尽な周りに対して「なんでやり返さないのさ。なんでやられっぱなしなのさ」と言います。
笑子は、自分にはない強さを持っている三葉にムカついたのです。笑子の中で怒りが爆発してしまいます。三葉に馬乗りになり、殴ったり、ひっぱたいたり、引っかいたりしました。
二人の騒動を聞いて居間から出てきた洋介は、笑子の興奮とピンチをキャッチし、三葉の脇腹を蹴りました。
拓馬が「やめて」とあいだに入り、騒動は収まります。三葉は、目を見開いて、強者のように天井を睨んでいました。
翌日、笑子はパチンコへ行き、景品交換所でイルカのぬいぐるみを手に入れてきます。
もうね。洋介はダメ。完全にアウトです。人として終わっています。
イルカのぬいぐるみが怪物の逆鱗に触れるアイテムになるとは、このときは気がつきませんでした。
勝木剛 現在
勝木は美和子が言ったことが気になっていました。美和子と両親の間に確執があったように思えなかったからです。
勝木は義弟の正則に、美和子と両親の間に何かがなかったかを聞いてみることにします。正則は「おふくろが一方的に中学生の姉貴を無視していた。二年くらい無視は続いていた」と答えました。
話を聞いた勝木は、中学生の美和子は母親に存在しないものとして扱われ続け、毎日心を殺されるような気がしていたのかもしれない、と思いました。
正則と会った二日後に、久仁子の住所がわかります。今は、長谷久仁子(はせくにこ)になっていました。
勝木は長谷久仁子と会って話をしますが、有力な情報は得られませんでした。
久仁子が話した内容は、4年前ちひろを灰戸町に迎えに行ったけど、東京に来てちひろはすぐに出て行ったことや、三葉とちひろが仲が良かったかどうかも知らない、といったことでした。
いやいや、久仁子さん御謙遜を。
4年前に灰戸町の塩尻家で衝撃的な事件があったじゃないですか、と言いたい。
山根清子 12年前・夏
山根清子は赤井家が嫌いでした。
清子と赤井家とのファーストコンタクトは最悪で、洋介はアゴの肉を揺らしてやかましい音楽を垂れ流していたし、笑子は「何様のつもりさ」の態度でした。おまけに赤ん坊だった三葉はオムツをパンパンに膨らませていました。
三葉は仕方ないか(笑)
「あの家族まとめて死んでしまえ」と清子さんが願いました。
翌日、現実になります。
怖いわ(笑)
勝木剛 現在
勝木は、灰戸町の南部から聞いた久仁子と、東京で会った長谷久仁子が本当に同一人物なのか、と感じていました。
勝木は、いろいろと考える中で、尾形聡というフリージャーナリストのことを思い出し、電話をしてみました。
この電話と不破栄の機転で、尾形聡は「みどり探偵興信所」の探偵だとわかります。
「守秘義務バンザイ、守秘義務バンザイ」で逃げようとする尾形聡に対して、何とか会う約束を取り付けた勝木は、みどり探偵興信所で尾形聡からさまざまな情報を得ました。
● 尾形聡から得た情報
- 尾形が依頼されたのは、赤井三葉を探すこと。
- 尾形は赤井三葉を見つけられなかったこと。
- 依頼を受けた二週間後に、依頼人と連絡が取れなくなったこと。
- 依頼人はおそらく偽名を使っていたこと。
- 依頼人に赤井三葉の居場所を知っていそうな人がいると報告したこと。
尾形聡は調査をする中で、灰戸町の人たちを信じていいのか? という疑問を持ちました。
赤井家に火をつけたのは、本当に赤井三葉なのか?
赤井三葉が姿を消したのは、本当に町を出て行ったからなのか?
尾形は勝木に昔見た映画の話をします。
村人たちが結託し、村に害を及ぼす男を殺して、死体を切り刻みスープにして観光客に飲ませる。
そんな映画しりません?
尾形さん、怖いっす。
第四章 怒
望月ちひろ 10年前・夏
ちひろが中学三年生のころの話です。灰戸町に台風が直撃していました。
腰が痛くて動けない悦子のかわりに、ちひろが買い出しに行くことになります。激しい雨の中、ちひろは商店にたどり着きますが、お目当てのトイレットペーパーが一つもありませんでした。
ちひろは商店で何一つ変えずにスーパーへたどり着きますが、スーパーにも商品はほとんどありませんでした。「出遅れた」と、ちひろは悟りますが、町の東側にもトイレットペーパーが売っていそうな店のことを思い出します。
その店には念願の輝くトイレットペーパー4個入りが一つだけ残っていました。それだけではなく、この店にはパンやペットボトルの水などもまだ残っていました。
「ほっ」としたのも束の間のことで、ちひろが少し目を離したすきに60代後半の男性がパンとペットボトルの水をすべて買い占めていました。
ちひろは勇気を出して声をかけます。
お水を一本ゆずってもらえませんか?
男は言いました。
知らねえわ。こっちだって命かかってんだから。
はい。おっさん死刑確定。
ちひろにプッシュされて濁流へダイブすることになりました。
おっさんは私を殺そうとしたから、やり返しただけ。
「あたしにはやり返す権利がある」そう言った三葉の声がちひろの耳に響きます。
三葉はどうして消えたのか。
この町の人間はまだたくさん生きている。どうしてみんなにやり返さずに消えてしまったのか。
このとき、ちひろはそう考えていました。
三葉と最後に会ったのは、二年前の「灰戸町一家殺害事件」の1か月後のことでした。
カーテンから顔をのぞかせた三葉は目を輝かせて自分以外のすべてを見下すような笑みを浮かべていました。
ちひろは自分が大きな思い違いをしているように感じます。ヒ素で家族を殺したのはやはり三葉だったのだと。三葉は、ついにやったのだ、やり返したのだ、殺される前に殺したのだ。と、ちひろは思いました。
威圧的な視線を向ける三葉に、ちひろは三葉が望んでいることを言わなければと、こう言います。
「みんな死んでよかったね」
「やり返したんだね」
「殺される前に殺せてよかったね」
三葉は「まあね」と言いました。
「まあね」と言った三葉の冷たい笑みは、まるで共犯者に向けられたもののようでした。
その瞬間、ちひろは確信します。
ヒ素を入れたのは私じゃない。三葉に操られただけだ。
お前かーーーーい。みたいな(笑)
勝木剛 現在
勝木剛はコンビニで聞き耳を立てていました。聞いているのは長谷久仁子と久仁子の息子の会話です。
二人の会話から、久仁子たちはちひろと頻繁に会っていたことがわかります。勝木には、久仁子が「ちひろのことは知らない」と嘘をついた理由がわかりませんでした。
勝木は不破と徳丸の力を借りて、ちひろの住所を突き止めました。
同時に、みどり探偵興信所がつかんだ情報を買おうとしますが、みどり探偵興信所は情報を売りませんでした。赤井三葉を探していた依頼人はわからずじまいです。
後日、勝木はちひろの家をこっそりと訪ねてみます。遠くから見たちひろは久仁子にそっくりでした。
驚いたことに、ちひろは四、五歳の女の子を連れていました。勝木はちひろと女の子の後をつけます。
女の子は両手を大きく振って歩いていて、持っていたジュースのパックを落としてしまいます。二人ともパックを落としたことに気づきませんでした。落としたパックは、勝木が拾って自分のゴミと一緒にレジ袋に入れました。
そのあと勝木はちひろに声をかけます。「10分だけ」とちひろの家に招かれました。
勝木は帰り際にちひろに殴られて気絶します。
怒涛の急展開!!
この辺りからとてつもなく、おもしろくなってきます。
望月ちひろ 4年前・晩秋1
二十歳のちひろは人に好かれる人間になろうとしていました。きっかけになったのが4年前の定山渓心中事件です。
あの自殺希望者の集団にいたのは、高校二年生のちひろでした。あのとき、ちひろの言葉を理解したのは丸江田逸央だけでした。
ちひろの言葉を聞いた丸江田逸央は、ちひろのすべてを受け入れて従うような感じでした。
ちひろは確信します。
丸江田逸央は私のことが好きなのだ、と。
人に好かれるのはなんて気持ちのいいことなのだろう、と。
ちひろは、人に好かれる人間になりたいと思います。
だから、ちひろは保育士になりました。
いやいや、なんで? みたいな(笑)
ちひろが保育士ではダメだと気づいたのは、保育実習のときでした。子供がいちばん好きなのは母親だと気づいたからです。
保育士は都合のいい存在だと気づきました。だから、ちひろは自分の子が欲しくてたまらなくなります。
そして、ちひろは愛という赤ちゃんを授かりました。
妊娠したことも出産したことも誰も知らないし、父親はわからないし、出生届も出していませんでした。
そんなちひろのところへ、もうすぐ久仁子が会いにきます。
ちひろの考え方がぶっ飛びすぎてどうかと思いますが、欲しいものに一直線な行動力だけは褒められるような気がします。
ちひろのところへは久仁子がやってくるはずでしたが、ドアフォンが鳴り玄関を開けて入ってきたのは「あら、お久しぶり。8年ぶりね」な三葉でした。
三葉はいきなりこう言います。
「ちひろが殺したの?」
ちひろは聞き返していました。
「え? 誰を?」
ちひろに怒りを向ける三葉のリュックサックには青いイルカのぬいぐるみがぶら下がっていました。
ちひろは、このイルカのぬいぐるみが嫌いです。
ちひろが青いイルカのぬいぐるみを初めて見たのは灰戸町一家殺害事件の三か月ほど前でした。
当時、ちひろは中学生で三葉は高校生になっており、二人の距離は遠くなっていました。三葉がちひろから離れていったからです。
ある日ちひろが自室から外をながめていると三葉が見えます。三葉のリュックサックには黄色いクマの編みぐるみがぶら下がっていました。
それだけで三葉とつながっていられると、ちひろは感じられました。いつもは三葉の後姿を見送るだけのちひろでしたが、その日は追いかけてみることにしました。
後をつけ、三葉と笑子の会話をこっそりと聞いていたちひろは、罵倒しあう三葉と笑子が見たかったのですが違いました。
笑子が「やる」と放り投げた青いイルカのぬいぐるみを受け取った三葉は嬉しそうでした。三葉はリュックサックから黄色いクマの編みぐるみをゴミのように捨ててしまいます。
黄色いクマの代わりに青いイルカのぬいぐるみをリュックサックにつけた三葉は、抑えきれないほどの笑みをため込んでいました。
ちひろが三葉のこんな顔を見たのは初めてで、ちひろはその場から動けず、いま見たことは何かの間違いだと思いました。そして裏切られたと感じ、ちひろは黄色いクマの編みぐるみを拾います。
三葉は青いイルカのぬいぐるみを「イルカぼけ!」と言って捨てなければいけなかったのです(笑)
大事なことなので何度も言いますが、三葉は「そんなもんイルカぼけ!」と言わなくちゃけないところを、ちひろにこう言ってしまいます。
「母さんからもらった」と、しかも照れくさそうに。
「お前の母ちゃん、灰戸町の人に殺されたんと違うんかーい!」
という、ちひろの心の声が聞こえました。
そりゃあ怒るよね、ちひろさん。という感じです。
ちひろは言いました。「三葉ちゃんが悪いんだ」と。
「中学を卒業したら殺されるからその前に殺す!」と言ったのは三葉ちゃんでしょうよ、と。
それなのにいつまでたっても殺さないから、わたしが代わりに殺してやったの。
そうさせたのは三葉ちゃん。三葉ちゃんが私を操ったんでしょ。
礼を言われるならまだしも、なんで責められなきゃならんの?
ちひろはここまで言い切って、「そうだろうか」と思います。
わたしは本当に三葉のために殺したんだろうか? と。
灰戸町一家殺害事件の前の晩、ちひろの中で怒りが爆発しそうでした。原因は、久仁子に子供ができたことを知ったからです。
何もかもが不愉快で、なにもかもにイライラし、悲鳴を上げたくなるほどの苛立ちに襲われたとき、ちひろは三葉の家にいました。自分のするべきことがわかったちひろは三葉の家にいました。
ちひろは、カレーとシチューと麦茶にヒ素を入れます。このヒ素は修学旅行の前に三葉が使うようにくれたものでした。
ちひろは考えます。三葉は食べるだろうか。
ちひろは思いました。三葉が死んでもいい。
でも、三葉は食べませんでした。
三葉ちゃん、ゴッドラック。
いや、三葉は小悪魔なので、サタンラック!
ここから現在に戻りますが、三葉のサタンラックは続くのか? というところが見どころです。
「あんた、何を言ってるの?」
「わたしが操ったってなによ?」
「ありがとうってなによ?」と三葉は言いました。
「『みんな死んでよかったね』って、わたしが言ったら、『まあね』って三葉ちゃんは笑ったじゃない」と、ちひろは言い返します。
三葉はくちびるが震え、顔から血の気が引くのがわかりました。
「三葉ちゃんなんでそんな顔をしているの?」
「三葉ちゃんにそんな顔は似合わない!」
三葉ちゃん逃げて―!!
「三葉ちゃんは私のことがもう好きじゃないの?」
「ひょっとして、最初から好きじゃなかったの?」
ちひろはまくし立てるように言いました。
「好きなわけないでしょ!」
三葉さん、ちひろさんにバットで殴られ、マフラーで首を絞められます。
三葉ちゃん、あそこで「好きなわけないでしょ!」は無いわー。
怪物と出会ったら、刺激せずに後ずさりが大事だということがよくわかるシーンでした。
サタンラックは続きませんでした。残念。
種田春香 12年前/現在
12年前
春香は青森県のパチンコ店で働いていました。
母の死を妹が春香に知らせてきます。種田富恵が火事で死んでから1年8か月後のことでした。
娘の富恵が死んでから、春香は生きるエネルギーを失っていました。富恵のことをあんなにぼろくそに言っていたのに。大切じゃなかったのに。富恵のせいで惨めな人生だと思っていたのに。
「富恵が楽しく生きていてくれていたら、それだけで幸せなのに……」と、今なら素直に思えることができました。
母の葬儀は函館でするらしく、妹は春香に家族葬へ来てほしいようでした。
富恵が死んだ火事は、はじめ春香による放火だと疑われました。夜中に小学一年生の子供を残して出かけていたことが不自然だとされたのです。
しかし、火事の原因はタバコの不始末だと断定されました。どちらにしても、春香が富恵を殺したことになります。
母が亡くなった知らせを受けた翌日に、春香は闇神神社に火をつけます。春香がふたたび灰戸町を訪れたのは、闇神神社に火をつけた半年後の冬の初めでした。
この年の8月に灰戸町一家殺害事件がありました。3か月前のことです。
赤井家の四人がヒ素で殺されたことを知り、三葉だけが生きていることを知ったときに春香はすべてを理解しました。
ヒ素で家族を殺したのは三葉だ!
富恵を殺したのも三葉だ!
自分の家族を殺すくらいだから、富恵のことも平気で殺す、きっと殺す。
富恵が眠る家に火をつける冷酷な三葉の顔を、春香ははっきりとイメージできました。
なんでやねーーーん!
わたしが富恵を殺したのではない。三葉が富恵を殺したのだ。
富恵の敵を討つ!
三葉を殺さなくては!
ということで、灰戸町一家殺害事件のほとぼりが冷めた3か月後に、春香さんは灯油が入ったポリタンクを片手に灰戸町に来ております。
灰戸町一家殺害事件のあと、赤井家を燃やしたのは種田春香でした。
現状の春香さんは、ちひろ以上にぶっちぎれ過ぎていて、インタビューはできません。
刺激せずに後ずさりしながら退散します。
以上。現場からです(笑)
12年後
12年後の五月、春香は47歳になっていて、豊洲バーベキュー事件が起きた現場の近くで清掃の仕事をしていました。
12年前、三葉をこの手で焼き殺し、富恵の敵を討ったと春香は信じていました。でも違いました。三葉は生きています。
丸江田逸央を操り、豊洲バーベキュー事件を起こしたのは三葉に違いないと春香は思いました。
なんでやねん。
もはや、春香=なんでやねん、です。
三葉は東京にいる。
だが自力で三葉を探すのはノーサンキューだ!
ということで、春香は尾形聡を雇いました。
二週間後、スーパー探偵尾形は、三葉の居所を知っているかもしれない人を見つけたと連絡してきます。それが久仁子でした。
尾形は三葉と仲が良かった望月ちひろの連絡先を聞くために久仁子を訪ねますが、久仁子は「ちひろとは何年も前からあっていない」と答えます。そして、「そう答えた久仁子の様子がおかしかった」と尾形は感じました。
尾形は、久仁子に会ったときのことを春香に伝えました。
春香は尾形に聞きます。「彼女は幸せそうでしたか?」
春香さん、久仁子さんが大好きね。
というか、久仁子さんは春香さんのあこがれなんでしょうね。
春香は尾形から聞いた久仁子のマンションを尋ねます。マンションは、エレガントでゴージャスでブリリアントでした。
春香が住んでいる場所とは、何もかもが違っていました。
春香さんは立ったまま気絶します(笑)
どれくらい呆然としていたのかわかりませんでしたが、春香は車のクラクションで現実に戻されました。
春香がリアルを感じ周りを見ると、クラクションを鳴らした高級なオーラをまとった車内には久仁子がいました。
春香は久仁子と30年以上会っていないのに、はっきりと久仁子だとわかりました。
でも、久仁子は春香に気づきませんでした。
ラヴなのに、久仁子さんのことがラヴなのに……。
もう春香さん、死にそうです。
高級車の助手席からとってつけたようなスマイルを春香に向ける久仁子は、「早くそこをどけよ!」と言っているようでした。
春香さんは、再度立ったまま気絶しそうになるのをこらえて、高級なオーラをまとった久仁子の車をタクシーで追跡することにします。
春香警察は久仁子を尾行しました。
どうやら久仁子はちひろのアパートへ向かっているようで、何のチャンスかはわかりませんけど「これがラストチャンスだ!」と春香は感じます。
春香はちひろの部屋へと猛ダッシュし、久仁子の背中に蒙古覇極道をお見舞い申し上げました。
蒙古覇極道(もうこはきょくどう)とは?
「北斗の拳」に登場する、カサンドラの獄長、ウイグルがケンシロウに使った技の名前。
異常に膨張させた右肩で体当たりを繰り出し、相手をぶっ飛ばす技です。
驚いた久仁子は、春香のことを覚えていないようで、春香は本日3度目の気絶を経験しそうになりました。
玄関に立っていた若い女が、蒙古覇極道を食らわせた女を「お母さんの知り合い?」と言います。
お母さんに体当たりを食らわせた人物に対して「知り合い?」って……なんでやねん(笑)
春香は言いました。
「あんた、ちひろだよね」
十数年ぶりに見たちひろは、久仁子そっくりの顔になっていました。
当たり前だよ、春香さん。
その人は3回も整形して、久仁子さんに似せたからね。
ちひろを見た春香さんは、気づかないくていい何かに気がついてしまいます。
勝木剛 現在
ちひろに置時計で後頭部を殴られた勝木剛はチンプンカンプンです。
ちひろは久仁子に電話をして「また殺しちゃったかもしれない」なんて言っています。
「また?」
勝木は、尾形聡が依頼を受けた人と連絡がつかなくなったという話しを思い出しました。
消えた依頼人も自分と同じことを考え、このアパートに来たのではないだろうか?
そして、消えた依頼人もぶん殴られたのではないだろうか?
なんて考えていたら、誰かがドアを開けます。
長谷久仁子 現在
久仁子は車でちひろのアパートへ向かっています。
「また殺しちゃったかもしれない」
「約束やぶってごめんなさい」
娘の声が電話から聞こえたとき、久仁子のはらわたは煮えくり返りました。
「またやりやがったな、コノヤロウ」
あのとき、どんなに大変だったか娘は理解していないのだろか。
ちひろのアパートのドアを開けると、最悪の事態が待ちかまえていました。
勝木剛 現在
ドアを開けたのはスーパー探偵の尾形聡でした。
「大丈夫ですか?」と聞く尾形聡に「ああ」と答えたとき、部屋の方で音がしました。
ちひろが窓から外へ出て行くところでした。
尾形は依頼人と連絡がつかなくなったことが引っかかっていて、ちひろのアパートを張り込んでいました。
今日、ちひろのアパートへ来たら若い女と勝木剛が歩いているのを見つけ「この若い女がちひろだろう」と、尾形聡は当たりをつけて張り込んでいたのです。
しばらくするとアパートのドアが少し開き、そのあと不自然に閉じられたので、「何かあったのかもしれない」と感じ、アパートのドアを開けたのです。
尾形グッジョブ!!
さすがスーパー探偵。
尾形と勝木が「消えた依頼人は、ちひろに殺されたのかもしれない」と話しているとき、久仁子がドアを開けて入ってきます。
勝木は久仁子に聞きます。
「ちひろさんは、赤井三葉さんではないですか?」
尾形は「えっ」と声を上げ、久仁子はフリーズしました。
勝木を殺したと勘違いした彼女は、呆然としゃがみ込んでいました。
その後ろ姿が、勝木が12年前に見た三葉の後姿と重りました。
それだけではありません。ゴミがありませんでした。勝木がバックに入れたはずのゴミがなかったのです。
レジ袋に入れたジュースの紙パックには彼女の指紋がついています。ジュースの紙パックから指紋を取られたらまずい。秘密がバレてしまいます。
「この男は秘密を暴こうとしているのだ」と、彼女は考えたのかもしれない。だから、彼女はゴミを取り返そうとしていたのだ。勝木はそのように考えました。
勝木は久仁子に言います。
「ちひろさんと三葉さんが入れ替わったのはいつですか?」
「ちひろさんは今どこにいるんですか?」
そこで勝木は三葉が言ったことを思い出しました。
「また殺しちゃったかもしれない……」
三葉は誰を殺したのか?
尾形の依頼人?
ちひろ?
三葉がちひろを殺したのはあり得ません。
久仁子が娘を殺した三葉を娘にしているからです。
第五章 子
長谷久仁子 4年前・晩秋2
母悦子の葬儀から半年後、久仁子は灰戸町にいました。ちひろを東京に呼ぶためです。
悦子の死後、夫がちひろを気にしはじめ、「東京に読んだらどうだ」と口にしました。
久仁子の夫は、一度だけちひろを見たことがあります。久仁子が函館のホテルでちひろに黄色いクマの編みぐるみを渡したときです。
夫は遠くの席から見ていて、落ち着いたら3人で暮らそうと言っていましたが、自分の子供を久仁子が妊娠していると知った途端に、そんな話はどこかへいきました。
このときにちひろが東京へ帰っていたら……と、何度も思いました。
実家の前に車をとめたとき、久仁子は灰戸町一家殺害事件のことを思い出します。
日本中を震撼させる大事件が、実家のすぐ近くで起きたことに驚きました。事件の直後、久仁子がいの一番に考えたことは、ちひろの無事ではなく「ちひろが戻ってきたらどうしよう」ということでした。
ちひろは東京には来ないだろう……。そう考えながら玄関の前に立ったときに声が聞こえてきます。
「ねえ! ちひろが殺したの?」
悲痛な声でした。
久仁子は玄関の前で立ち尽くしてしまいます。
会話のすべてを聞き取れたわけではありませんが、ちひろと言い争っているのは「灰戸町一家殺害事件」で生き残った長女のようでした。その長女が、ちひろを犯人だと責め立てています。
車をとめたときにあの事件を思い出したのは、不吉な前兆だったのです。
久仁子はちひろが否定するのを祈りました。でも、聞こえてきたのは悪魔にとりつかれた人間の言葉でした。
「私が代わりに殺してあげたんでしょう」
ちひろは誇らしげに言いました。
「『ありがとう』って言われるならわかるけど、なんで責められなきゃならないの?」
ちひろは灰戸町一家殺害事件の犯人だと認めてしまいました。
ちひろもたいがい悪魔だと思いますけどね。
娘の無事よりも「娘が戻ってきたらどうしよう」と考える久仁子さんも悪魔だと思います。
その直後、ドアの向こうから物凄い音が聞こえます。ドアの向こうで尋常じゃないことが起きたのは確かでした。
久仁子はドアを開けずに東京へ帰ろうかと考えます。
おいおい(笑)
冷静になり、ドアノブに手を伸ばして地獄に飛び込むと、目に入ってきたのは黄色いマフラーを首に巻き付け、白目をむいて倒れている女でした。
目を上げると、ちひろと目が合いました。
ちひろは玄関で仁王立ちしていました。
化け物と対峙しているようでした。
「何度もママに殺された」
「体を殺すのは一度しかできないけど、心は何度でも殺せるんだよ。知らなかった?」
「何をしても、何を言っても私が平気だと思ってた?」
ちひろはそう言いました。
久仁子はちひろがなんのことを言っているのかわかりません。
「私は殺される前に殺すことにした」
「三葉ちゃんの家族だけじゃない」
「他にも私を殺そうとした人を殺したことがある」
「これからだってそうする」
「ママがこれ以上わたしを殺すのなら、わたしが先にママを殺すのDEATH!」
「ヒィーーーーーッ‼ もうダメだ怖いよぉーっ!」と久仁子が思った瞬間、「ひーっ!!」と、ひきつけのような音が聞こえました。
次の瞬間、倒れていた女がちひろの足に飛びつき、二人はもつれて転がります。
女の首に巻き着いた黄色いマフラーの両端をつかみ容赦なく引っ張りながら、ちひろはこう言いました。
「みんな死ねばいいのにっ!」
この言葉を聞いた瞬間、久仁子は自分の置かれたリアルを理解します。
私はこの悪魔に殺される。
夫も殺される。
息子も殺される。
久仁子は悪魔祓いをしました。
すごいですよね、ここ。
一番まともじゃないと思われた三葉ちゃんが、一番まともだと感じられます。
ちなみにここの画像は適当です。
「仁王立ち」で検索したら出てきました(笑)
赤井三葉 過去
あいつらが死にますように……三葉は心の底から祈りました。
闇神神社から家に帰ったときには日が暮れていました。自分を残して出かけていた家族に聞こえるよう、三葉はわざと乱暴な音を立てて家に入りました。居間からはテレビの音が大音量で聞こえています。
ドア一枚へだてた向こうで、両親と弟、祖母が死んでいるとは想像もしませんでした。
8月9日の夕方、4人は隣町にオープンしたスーパー銭湯に出かけていた、と後から警察に聞かされました。
ある夜、ちひろが来てこう言いました。
「みんな死んでよかったね。やり返したんだね。殺される前に殺せてよかったね」
三葉は笑みをつくってこう答えました。
「まあね」
翌朝、家族が死んだこたつに腰かけてバラエティー番組を見ながらカップラーメンを食べます。自分は家族を失っても平気なのだと言い聞かせながら。
ある夜、三葉がコンビニから帰ってくると、家の前に見慣れない車がとまっていました。家の周りをうろつく黒い人影も見えます。
三葉はマスコミだと思いUターンします。直後、オレンジ色の炎が上りました。三葉は家に火をつけられたのだと気づきます。
「人影はマスコミではなく灰戸町の人ではないか?」と三葉は考え、「焼き殺されねばならないほどに、私は憎まれ嫌われていたのか?」と感じました。
翌朝、三葉は函館駅からJRに乗りました。
三葉は東京にいました。
東京では若い女というだけで仕事がいくらでもあり、お金ができると整形をしました。
ちひろの家から盗んだ幸せそうに笑う久仁子の写真を見せて、「この顔にしてほしい」と言いました。
三葉は、久仁子と同じ顔になれば幸せになれると思っていました。
3度目の整形で久仁子になりましたが、幸せに笑えませんでした。
数年後、テレビの旅番組で札幌が紹介されているのを見た三葉は、衝動的に北海道に戻り、札幌でスーパー銭湯のチラシをもらいます。
8月9日の夕方、家族4人がスーパー銭湯へ行ったのを思い出さないように努めていましたが、11月の札幌は寒すぎました。チラシについている割引券を使えば、500円で深夜まで滞在できるらしい。しかも館内着&タオル付。「これはラッキーだ。行くしかないっ!」三葉は思いました。
風呂上がりにテレビを見ていると「未解決事件を追え!」というテロップが流れ、「灰戸町」と聞こえます。次の瞬間、「あー、ほれほれ。灰戸町のヒ素の事件」「家の近くで起きたんだ。もう8年経つのかい。なつかしいわぁ」と近くの70代の女性が言いました。
伊藤と呼ばれた70代の女性を見ると、見覚えがある気がしました。伊藤は、「これまだ話したことはなかったかもしれないんだけれどさ」と前置きしてからこう言います。
「灰戸町の事件のとき、もう一人巻き添えを食うところだったのよね」
「埼玉から来た女の子で、赤井の家から夕方帰ったのを見たのさ」
「晩ご飯を一緒に食べてたら、その子まで死んでたよね」
伊藤は、「あの事件の犯人は絶対に長女だ」と締めくくりました。
伊藤さんグッジョブっ!
まぁ、無理なく都合よく、ドキドキさせてくれます。
感謝!!
赤井三葉 現在
「ママどこへ行くの?」
風化の声が、三葉を現実に引き戻します。部屋を逃げ出してから20分後くらいたっていました。
もう警察には通報されただろうか?
いつかはこんな日が来るのではないか? と三葉は思っていました。
その繰り返しで4年経っていました。
「なんで私の顔をしてるの?」
久仁子の声がよみがえります。
「あなたはヒ素で殺された家の子でしょ?」
「なのになんで私の顔をしているの?」
久仁子が血だまりに倒れているちひろにすがりついたとき、三葉の中で何かがはじけてこう言っていました。
警察呼んでちょーよ。
わたしの家族を殺したのはちひろで、ちひろを殺したのはあなただって言ってよ。
そんなのはダメ。
三葉が絶望の底であがいている悲しくて愚かしい久仁子を見ていたとき、部屋の奥から「あー、あああ、あー」と、か細い声が聞こえてきます。声がする和室のふすまを開けると赤ん坊がいました。
「ちひろの赤ちゃん?」
久仁子が赤ん坊に話しかけました。
三葉は思いました。わたしが赤井三葉であることを捨てて、世界の底を転々としているあいだに、ちひろは自分の居場所をつくったということか。「何事か―っ!」と。
呆然とする三葉の胸に温かなものが押しつけられ、言われました。
あなたの赤ちゃんよ。
「あなたはちひろ、わたしの娘。だって、そっくりじゃない、わたしに」久仁子が言いました。
無理よ。
だって、母親に悪魔祓いされたちひろが玄関に転がってんじゃん!
「できるわけがない……」三葉はそう思いました。
ちひろが未婚で出産したことはすぐにわかりました。出生届が提出されていなかったので、東京に越してから出生届を出しました。
風花という名前は、久仁子と二人で考えました。
いや、本当の名前は「愛」なんですけどね。
でも、風花も素敵かも。
一日一日を過ごすうちに、三葉がちひろに馴染んでいくのを感じました。しかし、豊洲バーベキュー事件が三葉の心を揺るがします。
ちひろは生きているのではないか?
そんなとき、種田春香が現れます。
春香は「なんで幸せに暮らしてんのさ!」と叫んだあとにこう言います。「あんた、ちひろじゃない、あんた、三葉だ、赤井三葉だ」と。
春香は「富恵を返せ!」とつかみかかってきました。同時に春香は三葉が富恵を殺したと思っていることを悟ります。
春香は言いました。
「なんで焼け死んでないんだよ! 今度こそ殺してやる!」
三葉は、赤井家に火をつけて、自分を焼き殺そうとしたのは春香だったと確信しました。
三葉は思い切り春香を突き飛ばしました。春香は靴箱に頭をぶつけ、それきり動きませんでした。
深夜に久仁子とふたりで春香を埼玉の山の中に埋めました。
「あなたを絶対に守るから」久仁子は三葉に言いました。しかし、ちひろを殺して家の床下に埋めた4年前から、久仁子が自分のことしか考えない人間だと三葉は知っていました。
三葉は思いました。私も同じだ……ちひろの遺体を床下に埋めて、春香を殺して山中に埋めた。そして、勝木という男を殺そうとした。私も自分の今年か考えない人間だ。
でもそれは、いけないことなのだろうか?
捨てられる前に捨てる。
殺される前に殺す。
絶対にやり返す。
今まで生きてこられたのは、そう心に刻んでいたからではないか?
「ママ、どこへ行くの?」風化が言いました。
「北海道の灰戸町ってところ」三葉は答えました。
今までわたしは何をやっていたのか?
灰戸町の住民を一人残らずキルしようと思っていた若い頃の自分がまぶしく感じられ、「みんな死んでしまえ!」と心から念じていたストロングな自分をとてもまぶしく感じていました。
三葉は、そのまぶしさの中に飛び込みたいと思いました。「今からだって遅くない」と聞こえました。
まず、ちひろが死んでいることを確認する。
それから灰色の町の頂点に立ち、町の人たちが死に絶えた風景を見下ろすのだ!
ヒ素は闇神神社の小屋に、ひとビン埋めてあるしね。
「ね」って、怖いです。
勝木剛 現在
「『ざまあみろ』って、今でもそう思っていますか?」勝木はアクリル板の向こうにいる丸江田逸央に聞きました。
「思っています」丸江田逸央は、迷いなくそう答えました。
丸江田が拘置所に勾留されてから5か月。丸江田との面会は今回で3回目でしたが、これが最後になる可能性がありました。
丸江田は起訴事実を全面的に認めています。豊洲バーベキュー事件は、大量殺傷であり、計画殺人であり、丸江田に反省の文字はありません。
おそらく死刑判決が出るはずです。死刑囚になると、家族や弁護士以外は面会ができません。
「灰戸町の長女、生きていたんですね」丸江田がとつぜん言いました。
赤井三葉は、勝木への傷害罪で指名手配されていました。彼女が姿を消してから1か月経っています。風化は駅構内で保護されましたが、三葉は行方不明でした。
風化のポシェットから三葉が書いたメモが見つかり、三度、灰戸町一家殺害事件は世間の注目を集めます。理由は、灰戸町一家殺害事件の犯人は望月ちひろだとメモに書かれていたからでした。
望月ちひろが住んでいた灰戸町の警察が捜索したところ、床下から白骨死体が見つかります。鑑定で、遺体は望月ちひろであると判明しました。遺体とともに埋められていた凶器から、赤井三葉と長谷久仁子のDNAが検出されました。
同時期に望月ちひろとして赤井三葉が暮らしていたアパートが家宅捜索されます。部屋中に赤井三葉の指紋が付着しており、赤井三葉が望月ちひろになり替わって暮らしていたと断定されました。
さらにアパートの靴箱と床から血痕が出ました。血痕からDNAが検出され、種田春香のものと一致します。
「家族をヒ素で殺したのは望月ちひろだったのですね」
「望月ちひろが殺されたのは4年くらい前なんですよね?」
「望月ちひろが8年前とか9年前に殺された可能性はないのですよね?」
丸江田は言いました。
やはり丸江田は定山渓心中事件の現場にいて、そこであったスズキが三葉なのかちひろなのかを知りたいのだろうと勝木は思います。
8年前は三葉もちひろも生きていました。丸江田が会ったスズキはどちらの可能性もありますが、灰戸町一家殺害事件の犯人と思われる望月ちひろがスズキだったのだろう、と勝木は思いました。丸江田もそう考えているはずです。
「あなたは望月ちひろさんからヒ素をもらったのですよね?」勝木は丸江田に聞きました。
「だとしたら?」丸江田は答えました。
さらに勝木は丸江田に聞きます。
「仮に定山渓心中事件のときに丸江田さんと望月ちひろさんが会ったとします」
「丸江田さんは死のうと思って参加したはずなのに、なぜ死ぬのをやめたのですか?」
「彼女はどうしてあなたにヒ素を渡したのですか?」
「どうしてあなたはヒ素を受け取ったんですか?」
「あなたはそのヒ素で人を殺そうと思ったんですか?」
丸江田は答えました。
「殺されるより殺す方を選んだだけですよ」
「後悔も反省もしていないんですか?」勝木が言います。
丸江田はこう答えました。
「ええ、ざまあみろと思ってますよ」
「世の中のすべてに、もちろん自分自身にも」
なんでもありのネットニュースが、赤井三葉と暮らしていた風化は望月ちひろの子供だと報じていました。
赤井三葉を母親だと信じて疑わず手をつなぎ、大きな声で歌をうたいながら無邪気に歩いていたあの子はこれからどんな幸せを望むのだろうか、と勝木は思いました。
エピローグ
勝木は灰戸町にいました。地元住民の声を聞くためです。
取材に応じてくれた人は一人もいませんでした。どの家も窓を閉め切り、玄関先にも庭先にも人の姿はありません。灰色の町は眠ったようにも死に絶えたようにも見えました。
勝木は風化のポシェットに残されていた赤井三葉のメモを思い出します。
私の家族を殺したのは望月ちひろ。ちひろがヒ素を入れた。
これから灰戸町に行く。
やられたことをやり返すために。
最後に笑うために。
すぐに警察が灰戸町に向かいましたが、赤井三葉は見つかっていません。
目撃情報もありませんでした。
「赤井三葉……」勝木は名前を声にしました。
その瞬間、座卓に座りカップラーメンをすする後ろ姿が鮮やかによみがえり、理解不能な怪物を見ている感覚に襲われたことを思い出します。
「彼女はどこに行ったのだろう……?」
そうつぶやいたら、妻の美和子と話しているような感覚になりました。
「美和子。あのときの子は、怪物ではなかったよ」
「家族を殺してはいなかったよ」
そう言ったら、美和子は何と答えるだろうか。
登場人物
勝木 剛(かつき つよし)
東都新聞を定年退職したあと、「月刊東都」で嘱託職員として働いている。
妻の美和子とは大学時代からのつきあい。三十歳のときに結婚した。子供はいない。
妻が亡くなってから一年経つが、まだ妻の死を受け入れることができていない。
丸江田 逸央(まるえだ いつお)
豊洲バーベキュー事件の犯人。34歳。
無職だったが、起業家と名乗り、存在しない会社のホームページを努力で作った。
20歳のときに母親を亡くし、26歳のときに父親を亡くしている。
父親は自殺だった。
旅行をしたのは小学校の修学旅行だけ。二泊三日で日光東照宮へ行った。
楽しかったという記憶はなく、黄ばんだ下着と、かかとが薄くなった靴下に気づかれまいと苦労したらしい。
なんかちょっと、悲しい。
徳丸 梓(とくまる あずさ)
勝木の同僚。割とどうでもいい。最初にちょろっと出てくる。
勝木 美和子(かつき みわこ)
勝木の妻。泉下の人。
望月 ちひろ(もちづき ちひろ)
小学五年生のときに埼玉県から北海道の灰戸町の祖母のところへ連れてこれれた。
怪物として灰戸町に君臨し、悪魔として祓われる。
望月 久仁子(もちづき くにこ)
旧姓、塩尻 久仁子。ちひろの母親でエクソシスト。
高校を中退して灰戸町から出て東京で一旗揚げる。
赤井 三葉(あかい みつば)
望月ちひろと初めて会ったとき、赤井三葉は中学二年生だった。
怪物、望月ちひろを作ったのは赤井三葉である。
丹沢 春香(たんざわ はるか)
旧姓、種田 春香(たねだ はるか)
自称、久仁子と友達。久仁子LOVE。
丹沢 富恵(たんざわ とみえ)
丹沢春香の娘。小学校一年生。火事で亡くなる。
本当は美優(みゆ)という可愛らしい名前になるはずだったが、姑が富恵と言ったのでトミエになった。
富に恵まれる、富恵が悪いとは言わないが、昭和よね。百歩譲って「子」が付かないので良しとしましょうよ、春香さん。
不破 栄(ふわ さかえ)
月刊東都の編集長。
編集長なのにヘラヘラしているが、メガネの下の目は笑っていない。
薄っぺらなことを適当に言うが、切れ者。
勝木にやんわりとプレッシャーをかけてくる。
塩尻 悦子(しおじり えつこ)
久仁子の母親で、ちひろの祖母。
交通事故で亡くなる。
赤井 拓馬(あかい たくま)
小学生。三葉の弟。三葉と違い、両親と祖母に可愛がられている。
むちむちと太っていて、腕と足は、はち切れそうなソーセージのようだ(ちひろ 談)
ひどいよ、ちひろちゃん。
赤井 洋介(あかい ようすけ)
土井本(どいもと)の血筋。
土井本は町の中腹で暮らす老夫婦のこと。土井本は害虫駆除や清掃業をしていた。
以前はセメント工場で働いていたらしい。とか、どうでもいい。
三葉の腹にケリを入れたことがある、ろくでなし。
赤井 笑子(あかい えみこ)
気まぐれで三葉にイルカのぬいぐるみなんかやるから、怪物が生まれた。
だらしなく太っている。
南部(なんぶ)
名前は出てこない。
塩尻悦子のご近所さん。
50歳ぐらい。眉毛がなくて細く腫れぼったい目をしている。
おとなしそうな顔立ちだが、ずけずけとものを言うおしゃべりさん。
トレードマークは首にかかった、手ぬぐい。
尾形 聡(おがた さとし)
フリーのジャーナリストとして登場するが、実はウルトラスーパー探偵。
みどり探偵興信所に所属している。
40代で中肉中背。物腰は丁寧だけど油断できない印象(大山 談)
長谷 颯(はせ はやて)
久仁子の息子。
ちひろの腹違いの弟。
謎のまとめ
丸江田逸央と赤井三葉は知り合いなのか?
知り合いではありません。
丸江田と三葉は定山渓心中事件で会ったのか?
丸江田が定山渓温泉出会ったスズキは、高校二年生の望月ちひろです。
丸江田逸央が使ったヒ素は赤井三葉からもらったものなのか?
丸江田が使ったヒ素は、ちひろが渡したもの。
ヒ素の出どころは、土井本(三葉のじいちゃん家)です。
12年前の灰戸町一家殺害事件の犯人は?
望月ちひろです。
赤井家に火をつけたのは誰なのか?
種田春香です。
赤井三葉を殺そうとして赤井家に火をつけました。
丹沢家に火をつけたのは誰なのか?
種田春香です。
春香の煙草の不始末で丹沢家に火がつきました。
闇神神社に火をつけたのは誰なのか?
種田春香です。
富恵を忘れたかのような、元夫の克義の幸せそうな笑顔を見て願いを聞いてくれなかった闇神神社に八つ当たりで火をつけました。
あちこちに火をつけたのは、すべて春香さんだったりします。
種田春香さんは、丙午産まれかもしれません。
以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。