「変な絵」読みました。
図書館で予約して借りるのに5か月かかりました。
そんな大人気の「変な絵」の考察やあらすじ、登場人物紹介や時系列を書きたいと思います。
歯に衣着せずに書いていますので、
気分を害しましたらごめんなさい。
変な絵の考察
栗原さんが足をケガした理由
栗原さんが足をケガした理由ですが、そんなに深い意味も伏線もないのかな、と個人的に思っています。
「栗原さんの足のケガは事件の調査中に直美にやられた」というような考察を見ました。
あぁ、なるほど。伏線が広がりまくりでおもしろい、と思いました。
ただ、これはないかな、と個人的に。
スーパーのレジ打ちで疲れ果てている直美さんには、栗原さんの足を骨折させる暇なんてないんじゃないでしょうか。
64歳のおばちゃんが、大学生でかなりキレッキレの頭脳を持つ栗原さんの足を骨折させるのは無理なんじゃないでしょうか。
じゃ、栗原さんの足のケガの原因は? 入院するほどの骨折とは?
駅のホームの階段から派手に落ちたとか。
妥当なのは、交通事故かな。
栗原さんの足のケガに伏線はないと考えているので、こんなところだと思いますが、どうでしょうか?
ただ、直美さんが栗原さんを駅のホームの階段から突き落とした、栗原さんが信号待ちしているところを直美さんが後ろから突き飛ばした。というのもないことはないんですよね。
いや、楽しいですね。あれやこれや考えると。
結局のところ、こうやってあれやこれやと考えて楽しめればいいのかな、と思います。
七篠レン
七篠レン(ななしのれん)は、今野武司(こんのたけし)のペンネームです。
こんのたけしの「た」と「け」の字を分解すると「た」が「ナ」と「こ」になって、「け」が「レ」と「ナ」になります。
「こ ん の ナこ レナ し」を並べ替えると「ナナしのレんここ」になるから「七篠レン 心の日記」になったと栗原さんが解説してますが、「ちょっと強引よね」と思いました。
「ナナしのレんここ」から「七篠レン 心の日記」にまで持っていくのなら、「七篠レン ここにいるよ」「七篠レン ココナッツ日記」「ここから始まる 七篠レン日記」あたりまで突き抜けて欲しかった。
今野武司が「七篠レン ココナッツ日記」を選んだとして、栗原さんが「こんのたけし」へたどり着けたかどうかも知りたいですけど。
ブログを消した理由
レンというか武司が書いた2012年11月28日の最後の記事「一番愛する人へ」の「あなた」が誰かわかるヒントが消した記事の中に書いてあったのかもしれません。
「あなた」がユキのことじゃなくて直美のことだとここでわかったら、終わりどころか物語が始まりませんから。
というか、武司は最後の記事を書いたあとに自殺するわけですが、武司はユキが残した絵の謎に早い段階で気づいていたのではないでしょうか。気づいていながら葛藤し、頑張ったんだけどダメだったのだと思います。
武司は、優太と行った墓参りで「直美の前ではユキの話はしないで」とお願いしています。武司と優太のお墓での約束は、自分が死んだあとのお願いだったような気がしました。
ユキはなぜ逃げなかったのか
個人的に、ユキが逃げなかった理由はわかりません。
というよりも、ユキが逃げなかったのは納得できません。母親って「めっちゃ」強いですから。
母親が良かれ悪かれ子供のために無敵無双なのは、それこそ直美を見ていてもわかりますし、熊井勇の母親のエピソード(251ページから252ページ)を見てもわかります。
自分を殺そうとする直美のやり方がどんなに遠回しだろうと、夫が母親にべったら漬けで、「あなたの母親が私を殺そうとしているの」と夫に訴えて「あほか!」と信じてくれなさそうでも、
自分の身内を頼れなくても、仕事がなくても、行く場所がなくても、「塩分取りすぎぐらいで死なないっしょ」と思っていても、ヒットマン直美のやりたい放題にユキが付き合うことは考えられません。
だって自分が死んだら、自分を殺した人間が自分の子供を育てる可能性が高いわけでしょ。夫は母親の言うことに「イエッサー!」で頼りないし。
そんな人間に大事な子供をまかせて死ねますか。人殺しに大切なわが子を育ててほしくないと考えるのが普通です。
というか、「あなたの母親に殺されました」という絵を描いて、「それを知った武司は自殺するだろう」なんて考える暇があったら、世の女性は子供のために何がベストなのか考えまくりますよ。
出産予定日の一週間前に何時間も泣き続ける暇があったら、これから母親になる女性は子供のために涙を拭いて立ち上がり戦うと思います。
自分の母親を殺した、ばあちゃんに育てられたと知ったときの子供の気持ちを考えたら、直美の殺意に目をつぶるなんてことは考えられません。
直美に言いなりの武司に自分の子供をまかせて死ぬことを選びますかね? ご丁寧に父親と子供が手をつないでいる絵まで描いて、なんて思いました。
ただ、直美のお母さんが直美にしたことを考えると、無敵無双の母の愛と、わたしがここまで書いたすべてがひっくり返るんですよね。なので、ユキが逃げなかった理由はわかりません。
変な絵と変な家どっちが面白い?
変な家です。個人的にですけど。
変な家の方が面白いと思う理由は、変な家は大好きな栗原さんが語りまくるから。今回は栗原さんがあまり語らないから。今回の栗原さんの語りは青臭いというか、フレッシュというか、あの「ドロッと、ねっとり」したおっさん臭ささがないからダメです。
今回の変な絵では、YouTubeで聞く栗原さんのあの声がイメージできなかったのですよね、なぜか。
だから、変な家の方が面白いというよりは、変な家の方が好きなのかもしれません。
今回の変な絵は、「もっと、もっと栗原さんボイスをよこせ!」みたいな感じでした。
次回作は、耳元で栗原さんのボイスがチェンジャーされているあの声が聞こえてくるストーリーを期待しております。
あらすじ
プロローグ
目次にプロローグはないですけど、目次の前にプロローグのようなものが書かれています。
心理学者の萩尾登美子が、母親を殺害した11歳の女の子が書いた絵を講義に来ていた学生に見せます。
その絵には「何度も口を書き直した、少女」「ドアがない家」「枝の先がトゲのような木」が描かれていました。萩尾登美子は11歳の女の子が母親に虐待されていたことを学生に話し、女の子の描いた絵を解説していきます。
・虐待されていた子は、お母さんを怒らせないように作り笑いをするので、笑顔の絵がうまく描けないから何度も書き直した。
・ドアのない家は、11歳の女の子の心を表していて、自分の心の中に誰も入れたくないから出入口がない。
・枝の先がトゲトゲなのは「突き刺してやる」という攻撃的な感情を表している。
でも、木の絵にはトゲトゲの枝の他に、鳥が住んでいる様子も描かれていました。
「11歳の女の子は、攻撃的な感情の奥に母性愛を隠し持っていて、動物や小さな子供と触れ合えば女の子の心は優しく育つと、当時は考えました」そのように萩尾登美子は学生に話しました。
最後に萩尾登美子はこう言っています。
当時の自分の診断に自信を持っています。
大ハズレ。あなたの診断で、のちのち4人が死にますけどね。みたいな。
第一章 風に立つ女の絵
大学生だからなのか、栗原さんのねっとり具合がちょっと遠慮がちで個人的に物足りない第一章でした。
佐々木修平がオカルトサークルの後輩、栗原さんから聞いた「七篠レン 心の日記」というブログを読み、謎を解明していく第一章。
ではなく、ちゃちゃっと栗原さんが絵やらブログの謎を解いていく第一章です。
女性、赤ん坊、老婆の絵を重ねると、ひとつの謎が解け。
男性、子供の絵を重ねると、また一つの謎が解けます。
佐々木さん以上に、わたしは栗原さんに会いたいです。しかし、どこまで読んでも、栗原さんとは「変な絵」の最後まで再会することはできませんでした。
第二章 部屋を覆う、もやの絵
ポンコツ心理学者の萩尾登美子のせい(たぶん)で、春岡美穂に危険がおよぶところだった第二章でした。
「あのクソ保育士!」とか言っちゃう直美さん怖すぎ。
今野優太くん6歳が保育園で「変な絵」を描きます。
この「変な絵」の謎を保育士の春岡美穂が解こうとしますが、学生時代に受講した発達心理学の授業(たぶん講師は萩尾登美子)の教えを思い出したがために、謎の考察が明後日の方向へ飛んで行きます。
絵の謎を解いたと勘違いした美穂さんが、自信満々で「お前、優太君を虐待してるだろーっ!」なんて言い出すから、直美の怒りは絶好調に達しました。
ある日、直美が朝起きると優太がマンションの部屋からいなくなっていました。
直美は、「最近、誰かに付きまとわれている」と感じていたので大慌て。保育園に電話したり、管理人室へ連絡を入れたりします。
マンションの防犯カメラを見ると優太が一人でマンションから出たことがわかりました。誰かに連れ去られたのではないことがわかり直美は安堵します。
優太の描いた「変な絵」の謎を直美が解明し、直美は優太を見つけます。優太は墓地にいました。優太が描いた「変な絵」は墓石の絵でした。
直美が「変な絵」の謎を解いたことにより、萩尾登美子の講義を受けるよりも、萩尾登美子のカウンセリングを受けた方が、物事の本質を見抜ける人になれることが証明されました。
物語の最後に、直美が64歳であること、直美の息子の名前が武司で、武司の妻が由紀であること。
由紀が優太の母親で、由紀は直美の義理の娘であること。
武司が「七篠レン 心の日記」を書いていたことがわかります。
第三章 美術教師 最後の絵
岩田俊介が、とても美人だと表現した亀戸由紀ちゃんにプッシュしてゴールインしていれば、この二人だけでも幸せになれたのではなかろうか? なんて思った、第三章でした。
岩田俊介が「K山・美術教師殺人事件」の真相を追い、ヒットマン直美の逆鱗に触れヒットされる第三章でした。
「K山・美術教師殺人」は、高校美術教師である三浦義春が殺害された事件です。
岩田俊介は高校生のころ、三浦義春に「はなやぎ弁当」をよくごちそうになっていたので、「K山・美術教師殺人事件」を再調査しますが、この一飯之恩的な律義さがあだになりました。
俊介くんホント可哀そう。俊介くんが美術室でユキちゃんに会ったときに全力で背中を押してあげたつもりでしたが、届かずに残念です。
あと、「はなやぎ弁当」の流動食はマズそうだし、読んでいるこっちの足が痛くなってきた第三章でした。
最終章 文鳥を守る木の絵
伏線回収よりも、「栗原さん、待ってました!」という最終章でした。
拘置所にいる今野直美がすべての伏線を回収してくれます。
父が亡くなり、母から大切な文鳥を守るために、直美は母を殺したこと。
そのあと6年間、児童自立支援施設で過ごし、助産婦を目指して看護学校に通い始めたこと。
お金が無かったので喫茶店でバイトすることになり、そこで三浦義春と出会い結婚してL県に移住したこと。数年後に武司を産んだこと。
義春に暴力を振るわれている武司が、母に殺されそうだった文鳥に見えたこと。その光景を見て、義春を殺そうと決心したこと。
義春が死ぬ直前に絵を描いたのは、武司を守るためだったこと。義春は本当に武司を愛していたこと。
義春の死後、豊川と由紀がやって来て家がにぎやかになったこと。豊川に義春殺害を見られていて、豊川に脅されていたこと。
義春を殺害してから3年後に岩田俊介が義春殺害の事件を調べていると知り、岩田俊介を殺害したこと。にっくき豊川を殺害し、岩田俊介の殺害を豊川になすりつけたこと。
岩田と豊川を殺害したあと、東京へ出戻ったこと。息子の武司が連れてきた彼女が亀戸由紀だったこと。
武司と由紀が結婚し、由紀が妊娠したこと。由紀のいない世界で、由紀が産んだ子供の母親になりたいと思ったこと。由紀を塩分攻撃で殺害したこと。由紀を殺したことを知った武司が自殺したこと。
誰よりも武司のことを愛していたこと。
直美は、母、三浦義春、岩田俊介、豊川信夫、今野由紀の5人を殺害しましたが、母を殺害した方法がすごかったです。
母を殺した方法がヒットマンさながらで、11歳とは思えない才能あふれる殺しの技術が炸裂していました。
母の上体を蹴り倒し、勢いをつけて腹に飛び乗り、左足は胃、右足は下腹部を確実に狙い動きを封じ、仕上げは左足に全体重をかけて首を踏みつけてとどめに首を折るっ! とか、もう怖いです。
「残された優太くんはどうなるのかな?」「直美さんと同じくどこかの施設に入れられちゃうのかな?」なんて心配しておりましたが、栗原さんと熊井さんが何とかしてくれて良かったです。
さすが栗原さん、という最後でした。
時系列
- 1951今野直美 生まれる。
- 1962今野直美(11歳)母親を殺害した。
- 1992.9.21三浦義春(41歳)の遺体が発見される。
- 1995.8.28岩田俊介が熊井勇に「K山・美術教師殺人事件」の取材資料を見せてもらう。
- 1995.9.21L県K山の8合目で、岩田俊介の遺体が発見される。
- 1996.9.26福井県のマンションで、豊川信夫(43)の遺体が発見される。
- 2008.10.13レン、最初の日記を書いた。
- 2008.12.25レン、日記でユキの妊娠を知らせる。
- 2009.5.18レン、日記で逆子を知らせる。
- 2009.9.3ユキ、直美の殺意に気づく。
- 2009.9.4ユキ、赤ちゃんの絵を描く。
- 2009.9.5ユキ、子供の絵を描く。
- 2009.9.6ユキ、風に立つ女の絵を描く。
- 2009.9.7ユキ、大人の男性の絵を描く。
- 2009.9.8ユキ、おばあちゃんの絵を描く。
- 2012.11.28レン、最後の日記を書く。
- 2014.5.19佐々木修平、就活中。レンの日記のことを知る。
- 2015.4.20熊井勇、「直美ちゃんを恐怖のどん底へ作戦」を東京で開始する。
- 2015.4.24都内のマンション 6階 602号室
・優太、マンションからいなくなる。
・熊井、マンションで直美に刺される。
・今野直美(64)傷害罪で現行犯逮捕される。 - 2015.5.8熊井勇、入院中。看護師に幼稚園児あつかいされる。
- 2015.6米沢家でバーベキュー。優太は世界一うまい焼きそばを食べた、はず。
以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。