【あらすじ・ネタバレ】黒牢城(こくろうじょう)の感想

小説

歴史に疎いです。興味もありません。

黒田官兵衛さんが何を成し遂げて何をやらかした人かも知りませんし、荒木村重さんにいたっては名前も聞いたことがありません。

そんな人間が、米澤穂信さんの「黒牢城」を読んだ感想をざっくりと書きたいと思います。



ざっくりと登場人物

荒木あらき摂津守村重むらしげ 有岡城の城主。織田信長とケンカ中。官兵衛すきぃー。

小寺官兵衛こでらかんべえ もとの名は、黒田官兵衛くろだかんべえ。またの名を安楽椅子探偵という。

千代保ちよほ 村重の側室。二十歳すぎ。美しく、目元にはそこはかとない悲しみが漂うラスボス。

寅申とらさる 形は下部が広くて、口に向けて狭くなる裾張すそはり。色合いは黄目で、とらさるの日に市が出る天王寺で見つけられたので、寅申と名付けられたとか。この茶壷ひとつで城が買えると言われる名品中の名品。お値段、二千貫文なり。

いまえださく
いまえださく

ちなみにこの時代、一貫で人が一人買えるらしいです

家臣かしん いっぱい登場する。覚えきれない。

ざっくりとあらすじ

序章 因

織田信長を裏切った村重むらしげさん。有岡城に籠城することになります。

そこへ官兵衛かんべえさんが訪ねてきて、「村重さん、信長には勝てませんよ」と言います。

この時代、戦の前に「勝てませんよ」なんて言ったら、普通はその場で斬られても文句が言えない十分な理由になるそうです。

ですが、村重さんは官兵衛さんを斬らずに土牢に閉じ込めます。

死ぬ覚悟で有岡城へとやってきた官兵衛さんは、「わたしを殺せ殺せ」と言いますが、村重さんは聞き入れません。

その後、有岡城でいろいろと事件がおこり村重さんが困ります。

これを解決するのが、閉じ込められた官兵衛さん=安楽椅子探偵あんらくいすたんていです。

安楽椅子探偵(あんらくいすたんてい)とは、ふんぞり返ることができる座り心地の良い椅子の上から動くことなく推理をする探偵だそうです。笑

ではなくて、現場に行かない・・・・探偵。もしくは、官兵衛さんのように現場へ行けない・・・・探偵さんを指す言葉。

安楽椅子探偵は、外部から与えられた情報のみで事件を推理する探偵さんです。

はじめて聞きました。勉強になりました。

第一章 雪花灯籠

「安部さんが裏切ったー!」

「人質の安部自念じねんくんをはりつけにしなくては!!」ってことになるのですが、村重さんはしません。

「自念くんは牢へ入れる」ってことになります。

これも官兵衛さんを土牢に閉じ込めたことと同じく、異例なこと。

がしかし、自念くんは牢に入れられる前に誰かに殺害されてしまいます。

犯人探しが始まりますが、犯人がわかりません。

さぁ、安楽椅子探偵の出番だ!

土牢へレッツゴー!

ちなみに犯人は家臣の一人です。

村重さんが官兵衛さんと自念くんを殺さなかった理由

村重さんは、「すぐ殺すー、すごく殺すー」が信条の、信長と同じは嫌だったんですって。

村重さんは、この考えを知られたくないようですが、官兵衛さんはお見通しです。

・犯人探しをする理由

村重さんへの不信感がつのり、部下の士気が落ちてきたからです。

なぜ、不信感がつのったのか?

なぜ、士気が落ちたのか?

それは、すぐには殺されずに命を助けられた自念くんだけど「本当は村重さんに成敗されたのでは?」と考える人が出てきたからです。

さらに、生かすと言いながら殺しておいて、しかも村重さんは「知らん。わたしは殺していない」なんて言っている。

「いくらなんでも卑怯だろ」と考える人まで出てきたからです。

また、自念くん側からみると、「生かすと言われて、ちょっと安心。が、その直後に殺されたのでは、覚悟も十分ではなかったのでは?」「望みを与えておいて殺すとか、非情の大将信長じゃん!」という、うわさまで出てきてしまったからです。

村重さんは、「キラーマシン信長と同じは嫌だ」なので、このうわさが犯人探しをする一番の理由かもしれません。

第二章 花影手柄

敵大将の首をとった手柄は、高槻衆のものか? 雑賀衆のものか? というのが大筋の第二章です。

当の高槻衆と雑賀衆は手柄争いをしていないのですが、外野がうるさい。

村重困る……。

「そうだ。官兵衛だ! 安楽椅子探偵に相談しよう!!」

村重さんが官兵衛さんに会いに土牢へ降りていくと、いきなり牢番に斬りつけられます。

がしかし、村重さんは牢番を返り討ち。さすがだぜ、村重さん。

牢番が村重さんを斬りつけた理由は、官兵衛にそそのかされたから。

官兵衛さんが牢番にボコられたので、仕返しに城主の村重さんを使って牢番を殺すとか官兵衛さんすごい。

しかも、「牢に入れられていても簡単に人を殺せますね」なんてさらりと言ってしまう安楽椅子探偵すさまじいです。

さて、そそのかしで人を殺すことができる官兵衛さんの悪魔的な頭の良さにかすむ「敵大将の首をとったのは誰だ?」の件ですが、剛腕村重さん本人がやらかしてました。

第三章 遠雷念仏

村重さんは信長さんとひそかに仲直りしようとしていました。

ですが、そのことはトップシークレット。ごく少数の人しか知りません。

そのことを知っている数少ない人の中に無辺むへんさんという使者がいました。

信長さんと仲直りするために、村重さんは無辺さんに書状と寅申を預けますが、町屋のはずれの庵で無辺さんは殺され寅申は持ち去られてしまいます。

「もろたで工藤! もっけの幸い」のように、犯人がわかればよいのですが、村重さんはいつものように犯人がわかりません。

さぁ、安楽椅子探偵の出番だ! ヒントだヒント! ヒントをよこせ!! 

ということで、いつものごとく官兵衛さんにヒントをもらいに行く村重さん。

そして、ヒントを頼りに犯人を追い詰める村重さんでした。

犯人は家臣の誰かです。その家臣は織田と通じていました。

天罰が下ったのか、その家臣は雷に打たれて死にます。が、雷が落ちると同時に銃撃されていました。

また、寅申は犯人の家にあり、無事に村重さんのもとへ帰ってきました。

一件落着……といきたいところなのですが、いよいよ籠城戦がキツくなってきました。

第四章 落日孤影

第三章の犯人を銃撃した犯人は誰なのか。

そんなことよりも、米がないのです。米が。

いよいよ有岡城での籠城がキツくなってきたのです。

そして、家臣たちの心が村重さんからどんどん離れていき、村重さんを重んじない家臣がでてきます。

これでは信長には勝てない。頼みの綱の毛利も来ない。

……気がつくと、な感じで、官兵衛さんのもとへと向かっていた村重さんでした。

安楽椅子探偵にヒントをもらい、犯人探しをする過程で、いままでの事件の黒幕、犯人を操り裏で糸を引いていた人物にたどり着きます。

ラスボスの口から語られる話は理路騒然としていました。

中でも「宗門の教えにもなき片言隻句へんげんせきくが人を惑わすのもこの世なら、いつわりの奇瑞きずいが人を救うのもまた、この世の習いではございませぬか(405ページから)」という言葉に、「いや、そうじゃない」と村重さんは反論できませんでした。

ここで本当ならラスボスが成敗されるところですが、村重さんはそれができない。

でまた、気がつくと、な感じで、官兵衛さんの前にいる村重さんでした。

むらしげ、かんべえ、すきー、みたいな。笑

官兵衛さんの仕返し

黒幕のラスボスにいたるまでを官兵衛さんに話した村重さん。

その話を黙って聞いていた官兵衛さん。

そのあと官兵衛さんがふい・・に「ここから勝ちを得るには、策は一つしかありませぬ」と言います。

その策とは、村重さん自身が毛利さんの所へ助けを呼びに行くというもの。

この策に村重さんは「おお、おお!」と、よほどうれしかったのか知らぬ間に笑っていました。

そして、毛利を連れ有岡城に凱旋する、束の間の夢まで見てしまいます。

官兵衛さんの策を聞き、こうしてはいられないと立ち上がろうとしたとき、ラスボスが話した「いつわりの奇瑞きずいが人を救う」という言葉を思い出します。

いまえださく
いまえださく

奇瑞とは、おめでたいことの前兆として起こる不思議な現象のこと

官兵衛さんは「いつわりの奇瑞」を使って、村重さんに仕返ししようと考えていたのでした。

官兵衛さんの策に乗ると、村重さんは悪名を残すことになります。

どういうことか?

この時代、というか、普通に考えて城主が城をほっぽり出すということは考えられません。

それが、助けを呼びに行くためだとしても。どんな理由があってもです。

というか、外野から見ると「あいつ逃げやがった」になるのが当然ですよね。

官兵衛さんは村重さんを殺すことよりも、武士としては殺されることよりもきつい悪名を残そうとしたのでした。

殺される覚悟で有岡城へとやってきた官兵衛さんが、村重さんをこれほど恨んでいた理由は、自分が土牢に閉じ込められたがために、息子の松壽丸が殺されてしまったことでした。

終章 果

結局、村重さんは毛利さんに助けを求めるため、有岡城をあとにします。

その後、有岡城は落城。

家臣は殺されたり、逃げ去ったり、自害したり。中には、生き延びた家臣もいました。

村重さんは、生き延びて茶人になったとか。

官兵衛さんは、牢番の手引きで有岡城の落城後に助け出されます。

そして、生きていた息子の松壽丸と再会します。

死ななくてよかったね。官兵衛さん。

さいごに

歴史に興味もなく、歴史に疎いわたしが、なぜ「黒牢城」を読んだのか。

それは、近所の図書館でもっとも予約が多い本だったから。笑

苦労して借りた「黒牢城」でしたが、読み始めると「やばい。まったくおもしろくないぞ」となりました。

で、返却日の三日前まで放置。

でも、なんとなく50ページぐらいまで我慢して読んでいたら、とてもおもしろくなってきました。

なぜ、50ページまで我慢できたのか。

それは、歴史ものだと思っていた「黒牢城」が推理小説だったから。

そして、「黒牢城」を借りるまでに6か月かかったいたから。笑

3日間、必死で読みました。443ページまで。

いまえださく
いまえださく

頑張ればできるということを再確認できてよかったです

歴史に疎いので村重さんや官兵衛さんについてウィキペディアをちょっと読んでみましたが、本当は裏で「こんなことがあったのかもしれないな」と思って読むと、とてもよく考えられていて、「黒牢城」はすごく面白い物語だと思いました。

なので、「黒牢城」は歴史に詳しくない方でも楽しく読むことができると思います。

いまえださく
いまえださく

図書館での予約はお早めに!

最後までお読みいただき、ありがとうございました。