【あらすじ・ネタバレ】名探偵のはらわた

小説

「名探偵のはらわた」白井智之 著を読みました。

この記事では、以下の項目について書いています。

・文庫本

・シリーズ・順番

・あらすじ

・登場人物

いまえださく
いまえださく

お越しいただきありがとうございます。

最後に感想も少し書きましたので、よろしかったら、お付き合いください。

 



文庫本とシリーズ・順番について

文庫本

「名探偵のはらわた」の文庫本は、2023年の3月1日に発売されています。

税込み825円です。

シリーズ

2022年に白井智之さんが発表した「『名探偵のいけにえ』人民教会殺人事件」という、「名探偵のはらわた」と似たタイトルの作品がありますが、続編ではないようです。

「名探偵のはらわた」と「名探偵のいけにえ」は、一部の設定を共有する姉妹作品で、同じ探偵が活躍するシリーズものではありません。

順番

「名探偵のはらわた」と「名探偵のいけにえ」は独立した作品として楽しめるようです。

なので、読む順番は「名探偵のはらわた」と「名探偵のいけにえ」のどちらから読んでも良いと思います。

あらすじ(目次)

【記録】

本書の冒頭には「思う様にはゆかなかった」という、津山事件の犯人である都井睦雄(とい むつお)の言葉が書かれていました。そのあと、本書に出てくる事件の【記録】が書かれています。

【記録】で紹介されている事件を簡単に書きます。

玉ノ池バラバラ殺人事件
昭和7年3月7日、南葛飾の赤線地帯で下水溝から男性の胸部、腰部や首などが発見された事件。
同年10月、浜川竜太郎とその弟妹が逮捕された。

八重定事件
昭和11年5月18日、荒川区小原町の待合旅館で、仲居の八重定が恋人の石本吉蔵の首を絞めて殺害したあと、性器を万引き。事件の2日後に八重定は逮捕された。

津ヶ山事件
昭和13年5月21日、岡山県の苫田郡木慈谷村(とまたぐん きじたにむら)で、向井鴇雄(むかい ときお)が集落の家屋に押し入り、猟銃と日本刀で住民たちを次々に殺害した。犠牲者は30名に及ぶ。向井鴇雄は、犯行後に自殺している。

青銀堂事件
昭和23年1月27日、豊島区にある青銀堂という宝石店に、厚生省の人間だと名乗る男が現れて赤痢の予防薬を飲むように従業員に命令。指示に従った従業員16人のうち12人が死亡した。
男は現金と宝石を奪って逃走したが、犯行後に逮捕され、公判で無罪を主張。昭和62年に死去した。

椿産院事件
昭和19年から昭和23年にかけて、新宿区柳町にある椿産院(つばきさんいん)で、大久保院長夫妻が100人以上の乳幼児を預かり、食事を与えず死亡させた事件。夫婦は高額な養育費を受け取っていた。

四葉銀行人質事件
昭和54年1月26日、大阪市住吉区の四葉銀行に松野俊之(まつの としゆき)が猟銃を持って立てこもった。籠城中に、警察官と銀行員を4人射殺している。
事件発生から42時間後に機動隊が突入し、松野を射殺した。

農薬コーラ事件
昭和60年の4月から11月にかけて、有機リン系殺虫剤のチェシアホスが入れられたコーラ瓶が自動販売機に置かれ、口にした大学生が死亡。東京都、千葉や埼玉で12人が死亡したが捜査は難航し、平成12年に時効が成立した。

いまえださく
いまえださく

「名探偵のはらわた」は、これらの事件の犯人が地獄からよみがえって現代でやりたい放題します。

そのやりたい放題を古城倫道とはらわた君が解決していくというストーリーです。

神咒寺事件

神咒寺事件(かんのうじじけん)では、原田亘とみよ子の出会いや、11歳の原田亘が探偵の浦野灸に助けられたエピソードが書かれています。

神咒寺事件の大筋は、岡山県津ヶ山市にある神咒寺の放火殺人事件を解決することです。

神咒寺の火災で青年会のメンバーが犠牲になります。放火殺人の犯人、錫村愛志(すずむら あいじ)の目的は、召儺(しょうな)の儀式をおこなうためでした。

召儺の儀式とは、地獄から鬼を現世に呼び込む儀式のことで青年会のメンバーがいけにえになりました。しかも召儺の儀式の途中でイレギュラーがおこり、現世のあちこちに鬼が召喚されてしまいます。

いまえださく
いまえださく

ここまで普通の推理小説かと思っていたのですが、特異な悪事で地獄へ送られた人物が閻王に選ばれ人鬼になり、召儺の儀式が鬼を現代に召喚することで追儺の儀式が鬼を地獄へ追い返す儀式で……みたいなことが出てきて、かなりビックリしました。

この章で、斬られた傷が原因で浦野灸が死にます。

浦野灸が亡くなった原因は、一人で捜査することにビビった原田亘のおねだりが原因でした。

浦野灸がいつも愛用している防刃ベストを「貸してくれ」と原田亘がタイミング悪くおねだりしてしまったのです。

ちなみに防刃ベストは、浦野灸と原田亘との出会いで描かれていて、ここで伏線を回収しています。

「このあと、物語をどうするんだろ?」なんて思いましたが、閻王さま直々の配慮で物語は続きます。

八重定事件

火葬される前の浦野灸に古城倫道が乗り移り、原田亘とともに現代によみがえった人鬼を退治していきます。の第一弾が「八重定事件」です。

「八重定事件」は、八重定が恋人の石本吉蔵を絞殺し、そのあと石本吉蔵の局部を切断し逃走した事件です。

事件から2日後に八重定は逮捕されました。八重定は警察の取り調べで、石本の首を絞めて意識を奪い、性器を切断して逃げたことを認めました。

「八重定事件」の大筋は、古城倫道と原田亘が、現代によみがえった八重定を探し、人鬼となって殺人を繰り返す八重定を退治することです。

ですが、八重定は今も生きていたりします。2016年の現在でもピンピンしていて、豊丸という、おにぎり屋さんを経営していました。

八重定は人鬼ではなかったのです。

ちなみに、局部を万引きした当時の八重定は25歳でした。「八重定事件」から80年経過していますので、今の八重定は105歳です。

「105歳のおばあちゃんが作るおにぎりはうまそう」とか、単純に思ってしまいました。

いまえださく
いまえださく

石本吉蔵を殺害した犯人は八重定ではありません。

ですが、ここがおもしろいポイントなので、ぜひ読んでみてください。

農薬コーラ事件

「農薬コーラ事件」は、刑部組が経営しているクラブで毒物混入事件が起こり、古城倫道と原田亘が犯人を捜すのが大筋です。

「農薬コーラ事件」は、自販機の上にコーラが置かれていて、その毒入りコーラを飲んだ人が死亡するという事件でしたが、クラブで起きた毒物混入事件に古城倫道は違和感を感じます。

違和感の正体は、犯人像が違ったことでした。

クラブで毒物を入れた人物は「農薬コーラ事件」の犯人ではありませんが、そんな人物よりもわたしは下記の人物のことが気になって仕方がありませんでした。

実際のところ、亘はすでにコーラに農薬を入れた人物と出くわしていたのだが、それを知るのは事件が解決した後のことだった。

「農薬コーラ事件」 189ページから

この文章が話の途中で出てくるので、ここから頭の中の小さいおじさんが「コイツか?」「コイツかも?」と連発してきて、物語に集中できないという……。

にもかかわらず、この人物が誰なのかわかりませんでした。

古城倫道がガールズバーのお気に入りの子に会いたいがために、「コーラに農薬入れたぞ!」なんて脅迫メールを送っていたので、この人物は「古城倫道かな?」と思ったのですが、古城倫道だと「ピタっ」とハマらないというか違和感を感じます。

いまえださく
いまえださく

「農薬コーラ事件」の内容よりも、

コーラに農薬を入れた人物が気になって仕方がなかったという、「農薬コーラ事件」でした。

津ヶ山事件

「津ヶ山事件」は、30人殺しの向井鴇雄(むかい ときお)を地獄へ送り返すミッションです。

がしかし、最初からトラブル続出でした。

浦野探偵事務所が刑部組にお世話になっていることが松脂組にバレて、原田亘はみよ子の父親にボコボコにされますし、刑部組の刑部九条にも今後は「力になれない」と言われたりします。踏んだり蹴ったりで「津ヶ山事件」は始まりました。

事件現場の津ヶ山についてからも踏んだり蹴ったりで、古城倫道は、向井鴇雄に背中を日本刀でバッサリ切られて瀕死の重傷を負いますし、古城倫道が刑部九条からもらった拳銃でみよ子を殺そうとします。

「津ヶ山事件」では、向井鴇雄の人鬼が誰に乗り移り運転しているかが焦点になり、運転手をめぐって古城倫道と原田亘が対立。原田亘はみよ子を守るために古城倫道とぶつかり合います。

いまえださく
いまえださく

極限状態の中、原田亘が理屈で古城倫道を屈服させるのが見どころの「津ヶ山事件」でした。

顚末

抗争まで数ミリだった、松脂組と刑部組は原田亘の活躍に免じて手打ちとなり、古城倫道の丁稚だったり下僕だったりした原田亘は、古城倫道の同僚になりました。

「探偵はらわた」の誕生です。

いまえださく
いまえださく

想像以上にさっぱりとした幕引きでした。

最後にもうちょっと、原田亘とみよ子の父ちゃんに絡んでもらいたかったです。

登場人物

原田 亘(はらだ わたる)

あだ名は、はらわた。浦野探偵事務所で助手として働いている。
左門我泥(さもんがどろ)の小説を愛読している。

みよ子

ポップティーンのモデルをプレス機でのしたようなおおむね可愛らしい容姿。
東京大学文学部の4年生。社会心理学研究室に所属している。
剣道部の元主将で原田亘の彼女で父親はヤクザ。
父親は、松脂念雀(まつやに ねんじゃく)。日本最凶と名高い、指定暴力団松功会(まっこうかい)の直参で、松脂組(まつやにぐみ)という二次団体の組長さん。

浦野 灸(うらの きゅう)

浦野探偵事務所の所長。20年にわたり警察に協力し、多くの難事件を解決している。
浦野灸が事件の捜査中に原田亘を助けたことが縁で、はらわたは浦野探偵事務所の助手となった。

古城 倫道(こじょう りんどう)

半脳の天才、大正から昭和初期にかけて活躍した探偵。
シベリアで砲弾の被害に遭い、脳の三分の一が欠けたので半脳の天才と呼ばれた。
閻王のはからいで、物語の序盤から浦野灸の運転手になる。

刑部 九条(おさべ くじょう)

日本最大規模の指定暴力団、荊木会の二次団「刑部組」の組長。
ちなみに、荊木会と松功会は仲が悪いので、二次団体である刑部組と松脂組も仲が悪い。
刑部九条はジェントルマンでラブラドールレトリバーを連れている。

さいごに

・文庫本

・シリーズ・順番

・あらすじ

・登場人物

これら4つについて書きました。

最後に個人的な感想を書かせていただきます。

推理小説は、登場人物がなぜそうしたのかが納得できれば出来るほど感情移入できますし、そのなぜそうしたのかが突拍子がなく信じがたいことであれば物語はおもしろくなると思っています。

ですが、「名探偵のはらわた」はそれが少なかったかな、と思います。

「名探偵のはらわた」を読んでいる最中、ソファの向かいに座った古城倫道が威圧感バリバリで身を乗り出してきて、力技で考えを納得させられた、というような推理がちょっと多めかなと思いました。

とはいえ、「名探偵のはらわた」は読みやすく、設定がおもしろいのでオススメの推理小説です。

いまえださく
いまえださく

最後までお読みいただき、ありがとうございました。