【あらすじ・ネタバレ】きたきた捕物帖(二)子宝船を読んだ感想と登場人物紹介

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「子宝船『きたきた捕物帖 二」を図書館で予約したのが、たしか5か月くらい前。苦節5か月、やっとのことで子宝船が手元に届き、そして読み終えました。

みなさんお待ちかね、「初ものがたり」のいなり寿司屋の親父の話が出てきたのは158ページと、ずいぶん話が進んでから。

北一が喜多次に「どこかの橋のたもとで屋台をやっていた、お前の親父が慕っていた大伯父さんの話をおでこさんのところへ一緒に聞きにいかないか」というシーンがありました。

いまえださく
いまえださく

どうでもいいんですけど、「大伯父」ってなんぞや? という話

「おじ」には「伯父」と「叔父」があって、「伯父」は自分の親の「兄」か「姉」に使う漢字です。

なので、「大伯父」と表現される謎のいなり寿司屋の親父は、喜多次くんのじいちゃんか、ばあちゃんのお兄ちゃん。正解ですよね?

謎のいなり寿司屋が喜多次くんの祖父の時代の人だとわかると、「初ものがたり」って「きたきた捕物帖」のかなり前のお話なのねと、ちょっと得した気分になりました。

謎のいなり寿司屋の話は微々たるものでしたが、「桜ほうさら」の古橋笙之助の話はちらほらありました。

・村田屋治兵衛と仲が良かった写本を作っていた若いお侍が亡くなった(40ページ)とか

・北さんが今住んでいる富勘長屋にいた若い浪人が闇討ちに遭って死んだ(59ページ)とか

・2年ほど前に、村田屋に親しく出入りしていた若い浪人が斬り殺された(159ページ)とか

159ページのシーンでは、千吉親分が事件のことを少し調べていたと書かれています。北一も事件のことは覚えているとのことでした。

「桜ほうさら」の古橋庄之助が斬られたのが2年前の話ということは、「『きたきた捕物帖』って『桜ほうさら』の2年後の話なんだぁ」とか思えるつながりが割と心地よくて、そしてこちらも、ちょっと得した気持ちになりました。

ということで、「『子宝船』きたきた捕物帖(二)」の、ざっくりなあらすじ、やたらに長い登場人物紹介や、どうでもいい知らなかった単語・覚えておきたい単語、最後に感想を書きたいと思います。

ざっくりあらすじ

第一話 子宝船

伊勢屋の源右衛門さんは絵を描くことが趣味で、子宝に恵まれないカップルにおめでたい絵を描いてプレゼントしていました。

その絵というのは、七福神が宝船にライドオンしているおめでたい絵で、その絵にはパワーがあり実際にその絵をプレゼントされたカップルは子宝に恵まれ、絵のことがいい感じに評判になります。

そんな中「言いがかりじゃん」というような事件が発生。

源右衛門さんが描いた宝船の弁財天がいなくなっていたり、宝船から弁財天が下船しようとしている絵が見つかります。そして、弁財天の気まぐれにあった絵を持っていた夫婦の子供が亡くなってしまいます。

弁財天の気まぐれで子供が亡くなるとかはありえません。なので、恨みを持った人間が源右衛門さんを陥れようとしている……でもないんですよね。では犯人の真の目的は何なのか。北一は真の謎を解くことができるのか。というのが第一話「子宝船」の大筋。のほほんとしていていいです。

その他、北一の朱房の文庫の工房が畑のど真ん中にできて、欅屋敷にいる謎の若様の栄花さんが登場したり。

「初ものがたり」の回向院の茂七親分と関わり合いがある、回向院裏の政五郎親分が登場したり。

富勘長屋の辰吉さんの、天道ぼしは天下一品だったことがわかったりしますが、この章では犯人はわかりません。

第二話 おでこの中身

第一話「子宝船」のてんまつを、北一が喜多次に報告しに行くところから第二話「おでこの中身」は始まります。

この報告しているときに喜多次がおみやげの豆餅を詰まらせて死にかけます。豆餅流れの会話の中で、喜多次の故郷では四角に切った豆餅を三角に切り雑煮に入れるという話が出ます。

で、「豆餅・雑煮・地域」などで検索しましたが、どこで食べられている雑煮かわかりませんでした。喜多次くん、君は一体どこの出身やねん。

それはさておき、

北一が昔の事件を調べようとします。

その事件とは、28年前に村田屋治兵衛さんの奥さんが殺された事件です。この事件は未解決。治兵衛さんの新妻のおとよさんがかどわかされ、殺されたという事件です。

この事件を調べる目的は、末三じいさんの誤解を解くことです。

北一は村田屋治兵衛と組んで仕事がしたい。村田屋治兵衛と仕事をする話は、栄花も青海新兵衛も賛成している。でも、末三じいさんは「村田屋治兵衛は業が深いから、あいつと仕事するのは嫌だ」なんて言っている。これをどうにかしたい……。

ということで、コールドケースなおとよさん殺害事件を解決したい北一くんなのですが、昔の事件どころではない大惨事が起きてしまいます。

ここからが第二話「おでこの中身」の大筋。

二ツ目橋のそばにある「おべんとう 桃井」の角一・おつね・お花の3人が殺されてしまいます。夫婦は30歳前後でお花はまだよちよち歩きでした。

北一は、この夫婦と仲が良く、「桃井の開店10周年のお祝いに朱房の文庫を作らせておくれよ」なんて話もしていたほどです。なので北一は、とてつもないショックを受けます。

3人とも毒を飲んで死んでおり、最初は無理心中と思われました。でも北一の考えは違った。3人家族がとても幸せそうに暮らしていたから。開店10周年記念のお祝いを作る約束をしていたから。そんな人が心中なんてするはずがないと考えました。

この話を武部権左衛門と富勘と北一の3人でしているときに、銀杏の木に隠れるように立っている女を見つけけます。この女が犯人。そして、この女は連続殺人鬼です。でも今は、この女がどこの誰かはわかりません。

北一は検視にきていた栗山周五郎にたずねます。「心中なんでしょうか」と。

栗山周五郎も「一家心中にしては様子がおかしい」と、北一と同じ考えでした。同じ考えを持つ流れから、北一は栗山周五郎に検視の教えを受け、桃井一家殺害事件を調べていくことになります。

事件のことを調べていくうちに「もしかすると似たような事件が過去にあったかもしれない」という考えにいたり、政五郎親分の手下の尋常じゃないほど物覚えのいい人に会いに行くことになります。

その人こそ、おでこ。本名は三太郎ですが、みんな「おでこ」と読んでいます。

おでこさんのところで「おしろい彫り」のことがわかり、人相書きを書いて探すしかないという助言をもらいます。そして、桃井の件で辛い思いでいる北一を励ましてくれ、「いつでも北一の助けになるよ」と言ってくれました。

第二話「おでこの中身」は、ここで終わりです。

この章で桃井一家殺害事件が解決すると思っていたので、個人的に不完全燃焼感がありましたね。

第三話 人魚の毒

おでこにアドバイスしてもらったあやしい女の人相書きをあっちこっちに回してあるものの、進展がないまま時間だけが過ぎていきました。そんな中、容疑者が捕まって桃井一家殺害事件を自白したあとに死んでしまいます。

これに納得いかないのが、北一と栗山周五郎の二人。自白をとった沢井蓮太郎に逆らって独自捜査を開始することに。

そんな中、北一のところへ半次郎がやってきて、お蓮の悪口大会が始まります。このお蓮が北一が探していた銀杏の葉の刺青の女で、連続殺人鬼です。

この時点ではお蓮がどこにいるのかは、わかっていません。悪口大会の最後で半次郎がちょっとした手がかりの話をし、そこから物語が加速します。

その手掛かりとは3年前の話で、染めちょうに出入りしていた糸問屋の番頭がお蓮を見たというもの。今、糸問屋の番頭は隠居して土産物屋をやっており、隣の茶屋にお蓮が老人をケアしながら籠でやってきたという話。でも結局、このとき半次郎はお蓮にたどり着くことができなかった。

ただその茶屋で、お蓮はパンくずをばらまきまくっていきました。

そのパンくずとは、4年前にお蓮と一緒にいた老人の住まいが火事で焼けたこと。そのときに老人は背中にひどいやけどを負ったこと。火事は落雷が原因だったこと。四角い枠に分銅をのせた天秤を入れ込んだ手ぬぐいを持っていたこと。このマークは両替商の印の可能性があること、などなど。

数々のヒントをもらった北一は、「これだけのパンくずがあれば、おでこさんに聞けば楽勝だ」みたいな。で、瞬殺。探し当てたお店が浜松町4丁目ににある「宇月」という質屋でした。

宇月にお蓮がいるのかどうかを確かめたいけど、北一はお蓮に顔がバレています。思案投首でいるところに、青海新兵衛が「私が行って様子をうかがってこよう」と言ってくれました。

青海新兵衛が宇月に探りを入れている間に、北一は喜多次のもとを訪れます。このときに喜多次は桃井であった殺しのことを見ていたかのように事細かに話すのでした。その説明を聞いた北一は背筋が凍りそうになりました。

話の最後に、きたきた捕物帖ワールド最強の生物だと思われる喜多次が言う「お蓮は生まれながらの化けものだ」「人が物にしか見えていない。油断するなよ」と。これを聞いた北一は「お蓮を捕まえるときに手を貸してくれ」と喜多次に頼み、喜多次は一言「わかった」と答えます。

その後、きたきたコンビと半次郎の3人でお蓮を捕まえに行き、お蓮はあっさり捕まってしまいます。ですが、お蓮の連行中に北一がお蓮に殺されそうになります。それを救ったのが喜多次でした。

第三話「人魚の毒」の最後、療養中の北一のところへ村田屋治兵衛がやってきて、第一話「子宝船」の犯人がわかります。

登場人物紹介

回向院裏の政五郎親分

銀髪の大男。はっきりした目鼻立ちで、しかもお洒落さん。ちなみに回向院裏は(えこういんうら)と読みます。政五郎の親分が回向院の茂七という人物。そう、あの「初ものがたり」の回向院の茂七。若いころ、評判になるほどの爪楊枝を作っていた回向院の茂七親分です。政五郎親分は若いころに人を殺していて、茂七親分の子分になることを条件に罪を免れた過去があります。

政五郎親分は茂七親分にはかなわないという理由で、「回向院」ではなく「回向院裏」と名乗っているそうです。めっちゃ粋、そして熱い男。政五郎親分は、奥さんに蕎麦屋をさせています。その蕎麦屋がのれん分けするほど大繁盛しており、北一が知っているだけでも3店舗もあります。蕎麦屋の上りだけで十分に暮らしていける。まさにFIRE。熱い男。

ちなみに千吉親分が深川一帯の岡っ引きになれたのも政五郎親分の後押しがあったからで、千吉親分は「何から何まで政五郎親分にはかなわない」と、政五郎親分には心から敬意を払っていました。

そんな回向院裏の政五郎親分は第一話「子宝船」に登場し、北一が千吉親分の跡継ぎにふさわしいかどうかを試そうとします。というか「いずれは跡取りだ」みたいなことを言っています。北一くんは大活躍だったので、たぶん政五郎親分のお眼鏡にかなったと思います。

千吉親分

前作のしょっぱな、フグに大当たりして亡くなった人。北一くんを拾って育ててくれた人でもありました。

北一くんの「千吉親分、こんなこと言っていたな……」という回想シーンがよくでてきます。千吉親分が言っていたこんなは、すべて名言ぞろいです。

そんな名言の一つがこちら。

ウソってのはな、たいがいの場合、「こうだったらいいなあ」という願いが言葉になったものなんだ。

だから、嘘をつくものをさげすんじゃいけねえ。俺たちは仏様じゃねえんだから。

131ページから

千吉親分カッコよすぎ。

また今回、千吉親分が考えていた夢が明らかになります。その夢とは、岡っ引きが必要のない街の仕組みをつくること。町方役人が岡っ引きに頼らずに御定法を守れる仕組みです。

この時代、事件が発生したら岡っ引きを特攻させて怪しそうな輩をとっ捕まえて拷問しました。責め苦に耐え切れなくなって「わたしがやりました」と白状したら、「ハイこの人が下手人です」で一件落着。自白無双な時代だったんですね、そこには「他に犯人がいるかも?」という考えや、もちろん科学捜査なんてものはありません。冤罪バンザイな時代だったのです。

千吉親分はこの冤罪バンザイをなんとかするには、まず「岡っ引きなんかいらねえ」という理由で、子分たちに跡目を継がせなかったのです。子分たちをポンコツと思っていたわけではありませんでした。良かったね、北一くん。

やっぱり千吉親分カッコよすぎ。

栄花(えいか)

欅屋敷の若様。「栄花」は雅号で、朱房の文庫の絵を描いてくれている。椿山勝元の三男。色白のうりざね顔で朝露のような瞳の輝きを持ち、まっすぐな鼻筋の女子。三男なのに女子。

栄花さんも「わたしは女ではない」とか言っています。さらに「わたしが男じゃなかったら、青海新兵衛の首が飛ぶ」とか恐ろしいことも言っていました。このあたりの謎は、おいおい、だと思います。

北一(きたいち)

主人公。棒手振(ぼてふり)で文庫を売っている。千吉親分の朱房の文庫(しゅぶさのぶんこ)を引き継ぎ、今作では畑の真ん中に朱房の文庫を作る工房を開いた。

今回の北一はあの世に行きかかることが多い。第一話「子宝船」で、凄まじい器量よしの栄花さんの頬が北一の耳たぶをかすめたときにあの世に行きそうになり、第三話「人魚の毒」では、おぼれてあの世に行きそうになった。

富勘(とみかん)

差配人。北一をよく世話してくれる。「富勘」の名前は全編を通して良く出てくる。割とどこにでもいる人。

第一話「子宝船(112ページ)」で、北一が「自分よりも信用できるやつが富勘さんの他にもいる」みたいなことを言ったときに、富勘がわたししかいないだろそんな人間みたいな感じで、そいつ「どこのどいつさ?」と言います。

それを聞いた北一が、あんたは知らないだけで、あんたの命を助けてくれたやつだよ。なんて思い出すシーンがあります。このシーンは前作へのオマージュで、前作の「きたきた捕物帖」を見てないと面白くありません。なので、前作を読んでいない人は、ぜひ前作も読んていただきたい、と思いました。ちなみに富勘を助けたのは喜多次くんです。

青海新兵衛(おうみしんべえ)

北一が欅屋敷と読んでいる屋敷の用人。何かと頼りになる。ちなみに欅屋敷とは、小普請組支配組頭・椿山勝元(こぶしんぐみしはいくみがしら・つばきやまかつもと)の別邸のこと。

末三(すえぞう)じいさん

朱房の文庫を作ってくれる職人。結構、いかついことを言う。末三じいさんのいかつさは、こんなところで見て取れます。

末三じいさんいわく、「村田屋治兵衛は業が深い」とのこと。なぜなら、近しい人が二人もひどい死に方をしたから。一人は奥さん。もう一人は笙之助のことを言っているのだけれど、笙之助って死んでないよね、みたいな。そんなことを末三じいさんは知るよしもなく「村田屋治兵衛と仕事をするのは嫌だ」と言っています。

北一が村田屋治兵衛さんと組んで仕事をしたらナイス商いができると思うんですが、末三じいさんを今後どう説得するか楽しみです。

喜多次(きたじ)

長命湯の窯焚きをしている謎の男。基本、しゃべらない。石地蔵のように口が重い。「子宝船」の作中で喜多次くんが北一に言い放った「バカがにおうぞ、たまらねえ」というセリフが最高に良かったです。なぜバカなのかの理由を聞いた北一くんが「そういうの早くいってよ」と言ったのも良かった。ナイスお笑いコンビです。

北一は、喜多次の父親の骨を拾ってやったことが縁で知り合いました。喜多次は父親が世話になったことに恩を感じ、北一を助けてくれます。伝説の暗殺集団かどうかはわかりませんが、喜多次はそんな生業をしていたと思われる烏天狗一族の出身。北一だけが、喜多次の頼もしさを知っています。

たぶん「きたきた捕物帖」内で最強の生物が喜多次。武部先生とどちらが強いか戦ってほしい。というか、青海新兵衛と武部権左衛門はどちらが強いのか知りたい。

今作で、北一からもらった豆大福を、喜多次がほうばり過ぎて死にかかるシーンがあります。なので、最強は豆大福なのかもしれない……とかなんとか。

冬木町(ふゆきちょう)のおかみさん 松葉(まつば)

千吉親分の寡婦(かふ) 千吉親分亡き後の北一の後ろ盾。今回の「子宝船」では、あまり活躍するシーンがなかったような気も。おかみさんの家から沢井蓮太郎が帰ったあと、北一と松葉のおかみさんが千吉親分の夢の話をするシーンは読んでいて気持ちが良かったです。

おみつ

最近、二の腕の肉付きがよくなったきた、松葉のおかみさんと一緒に暮らしている女中。年齢は謎。北一も知らない。でも北一が「うんと姉さんであることは間違いない」と表現している。きれい好きで料理上手。実家は一膳めし屋です。

おみつは、千吉親分にも気に入られていたし、おかみさんにも好かれている。今回の物語で北一がおみつさんに女子を感じるシーンがあります。北一が姉さん女房と幸せになる日が近いかも?

うた丁(うたちょん)

髪結床の店主。熊のような図体。宇多次(うたじ)+丁髷(ちょんまげ)で、うた丁。うた丁は千吉親分と親しかった。千吉親分のことを「千ちゃん」と呼ぶのは、うた丁だけ。北一はうた丁に薄毛に効果がある髪の素をもらっている。

村田屋治兵衛(むらたやじへい)

佐賀町の貸本屋。炭団眉毛(たどんまゆげ)にどんぐり眼が特徴。いい人なんだけど、若干押しつけがましい。今回、村田屋治兵衛はよく登場します。

多香屋の陸太郎(りくたろう) & お世津(おせつ)

清住町にある煙草と線香の店「多香屋」の若旦那と若内儀。ちなみに「内儀(ないぎ)」とは、町人の妻。おかみ。のことです。

第一話「子宝船」で、赤ん坊が亡くなった気の毒な夫婦です。若内儀のお世津は子供が亡くなった原因が自分にあると思い、死ぬほどの苦しみを味わっています。

そんな若内儀への心配と伊勢屋へのやっかみから、陸太郎は伊勢屋の裏のゴミ捨て場に弁財天がいなくなった宝船の絵を捨てました。お・そ・ら・く・ですけど。

おでこ(三太郎)

妖怪総大将ぬらりひょんのような立派なおでこを持つ。身寄りがなく、政五郎親分が親代わりになっていた。今は御番所(ごばんしょ)の文書係をしている。

住まいは七軒町の貸家で、元は質屋の土蔵だった。この土蔵の中は、ほぼ本棚。なので、火気厳禁。火鉢も使わないので冬は極寒とのこと。

昔のことを思い出すときに「ぶつぶつぐつぐつ……」と呪文を唱える。この呪文を唱えているときに外部からちゃちゃが入ると一からデータのロードをやり直さなくてはならない。

お福

おでこさんの奥さん。縦にも横にも大柄でお多福みたいなまん丸顔。料理上手。

武部権左衛門(ぶべごんざえもん)

手習所の師匠。浪人。妻の名は聡美(さとみ) 5人の子供がいる。とても頼りになる人。

沢井蓮太郎(さわいれんたろう)

本所深川方同心。切れ長の目の人。親父さんは、沢井蓮十郎。沢井蓮十郎も本所深川のやり手の同心だった。沢井蓮太郎は、北一を千吉親分の跡目として使う気ゼロ。今のところは。

栗山周五郎(くりやましゅうごろう)

与力。南町奉行所一の検視官。文句が多い人。中肉中背で50歳前後。ごま塩頭でしゃくれあご、話すと塩辛声。

小舟町二丁目の「あずさ」という組紐屋に「お里」という美人さん(北一 談)と一緒に住んでいる。北一のことを素質ありと踏んでおり、「わたしの下で学べ」と言ってくれる。

久十(ひさじゅう)

桃井一家殺害事件の容疑者。38歳。賭場の仕切りをしていた。クズ野郎だが、桃井事件の冤罪 → 自白でお亡くなりになった、ちょっぴり可哀そうな人。この時代、冤罪 → 拷問か、冤罪 → 拷問 → 自白の理不尽に耐え切れず、お亡くなりになる方がたくさんいたそう。科学捜査よりも、拷問から得た「わたしがやりました」の方に価値があったから。栗山周五郎いわく、この理不尽で、今まで関わった検視の7割が無駄になったそうです。こんな理不尽をなくそうとしていたのが千吉親分。そんな話もちらほら出てきます。

半次郎(はんじろう)

岡っ引き。上総の国木更津湊の船着き場と荷置き場で差配をしている。36歳。猪首で肩幅が広く厚みのある体つき。右腕に人魚の刺青がある。

27歳のときに鉄火場で人を殺しそうになってしまう。そのときに八州廻の旦那に助けてもらった。助けてもらった旦那に「染めちょう事件」のことを話したら、旦那は「お蓮を捕まえて真実を吐かせるために生まれ変われ」と言ってくれた。なので、木更津湊の岡っ引きになったが、お蓮を見つけられないまま9年たっている。

半次郎が生まれ育った九崎村には、人魚が網にかかっておもてなしすれば99日間は大漁ウハウハ。でも、100日目には人魚にお帰り願わないと村が津波に襲われるという言い伝えがあるそう。

お蓮(おれん)

附子使い。生粋の連続殺人鬼。悪さをする前には、にまにま笑うクセがある(半次郎 談) 円の中に銀杏の葉をあしらった刺青が首にある。この銀杏の葉の図柄は、九崎村にあった「染めちょう」の紋でもある。

九崎村でなんちゃって薬屋をしていた、おこうさんの孫。だからトリカブトにも詳しい。半次郎とは乳兄弟で幼馴染。半次郎のことを「半ちゃん」と呼ぶ。きっと半次郎のことが好き。でも半次郎はお蓮のことを「性悪でした」とか「金魚みたいな目で、顔面偏差値低かっただろ」とか「出っ歯で身体もずんぐりしてる」だとか、もうやめてやってというほどボロクソに言っている。

21年前の8月の中ごろ、九崎村にあった「染めちょう」の関係者6人を附子で殺している。理由はたぶん「染めちょう」の娘さんが金ぎょではなく天にょのようだったから。その天女に半次郎が心を奪われていたから。

「染めちょう」の事件後、お蓮は九崎村から姿を消し、どこへいったかわからないでいた。

知らなかった単語 覚えておきたい言葉

慶弔(けいちょう)

慶弔の「慶」は「よろこび」。祝いごとの「慶事」を指す。慶弔の「弔」は「とむらい」。お悔やみごとの「ちょうじ」を指す。

どんな用事であれ、人を集めたら、まず食い物と厠の心配をしろ

大事な基本ををずばっと言った言葉だと思いました。北一がふと思い出した千吉親分の言葉です。

雅号(がごう)

画家や書家が本名の他につける名前。北一に「栄花」は雅号だと言った日から、朱房の文庫に「栄花」の雅号が書き添えられるようになった。

胡乱(うろん)

うさんくさいこと。岡っ引きは胡乱なやつが多いと言われている。回向院の茂七親分や千吉親分の過去は真っ白で、岡っ引き界ではめずらしく胡乱な岡っ引きではなかった。

婀娜っぽい(あだっぽい)

女性の身振りやしぐさに魅力があるさま。なまめかしく、色っぽい。

御納戸茶(おなんどちゃ)

色の名前。お蓮が着ていた着物に使われていた色。御納戸色(暗い青色)に茶色を加えた、暗い青緑色。

猪首(いくび)

首がずんぐり太くて短い。半次郎の首が猪首。

おしょくり

押し送り船。櫓を押してこぐ、小さな船。浅い川で塩やしょうゆを運んでいた。

附子(ぶす)

トリカブトのこと。いやトリカブトは知っていましたけど……。

思案投首(しあんなげくび)

ナイスアイデアが思い浮かばず困っている感じ。ああでもない、こうでもないと深く考え込むさま。はじめて聞きました。

還俗(げんぞく)

僧侶になった人が、俗人に戻ること。「俗人」とは一般ピーポーのこと。

さいごに

わたしの中で「きたきた捕物帖」のイメージは、ネガティブなニュースの間に読まれる、「春一番が吹きました」とか「初雪が降りました」なんていう、のほほんとした感じのイメージでした。

でも今回、第二話「おでこの中身」は凄惨な殺人事件、第三話「人魚の毒」ではスリリングなシーンがあり、「のほほんとしたイメージはどこへ行った?」みたいな。

ですが、とても楽しく読めました。こんなストーリーもありかなと。でもやっぱり、第一話「子宝船」のように、北一くんがみんなの人情に助けられながら町のいざこざをのほほんと解決していく方が好きかな。なんて思ったりしております。

喜多次くんの活躍をもっと見たいし、「北一、おみつさんと急接近」というタイトルも見たいし、おいおい小出しが予想される栄花さんの秘密も気になりますし、武部権左衛門と青海新兵衛の仕合も見てみたいし、北一くんの成長がもっと見てみたい。

「『子宝船』きたきた捕物帖(二)」、次回作が楽しみになるほど面白かったです。