「黄色い家」川上未映子(著)のあらすじと登場人物をネタバレで書きたいと思います。
……が、その前に、良く検索されているワードを先に紹介します。
黄色い家の主人公は?
伊藤花です。
黄色い家の出版社は? 発売日は?
中央公論社から出版されています。
検索すると2023年2月20日に発売されたと書かれていますが、本書の最後には2023年2月25日に初版発行と書かれています。
たまに見るこの不思議なズレはなんでしょうか?
ページ数は? 価格は?
検索すると608ページとなっています。が、本編は7ページから601ページです。
600ページに若干足りず「600ページを読み切ったぜーっ!」とならないところが少し悲しいです。
価格は2090円(税込み)です。
文庫本はいつ?
はっきり、いつ発売とは言えません。
「2025年の夏ごろには発売されているんじゃないかなー」と思います。
黄色い家について
伊藤花が吉川黄美子のことを思い出し、会いに行く。
一言でいうと、そんな物語です。
伊藤花は命の恩人である吉川黄美子のことを、なぜ20年間も忘れていたのか。
幼かった伊藤花が吉川黄美子と出会ったこと、どん底から救ってくれたこと、同じ時間を共有したことを、なぜ忘れなければならなかったのか。
その理由を、伊藤花の人生をたどりながら、知っていくストーリーです。
「黄色い家」は、約600ページとボリュームたっぷりなので、普通に読むのはきついかもしれません。
わたしは601ページへたどり着くのに1週間かかりました。ものすごい達成感でした(笑)
ネタバレのあらすじと登場人物の紹介がお役に立てばうれしいです。
少し読んでいただいて「おもしろそう」と感じたら、本書をぜひ。
遅れましたが、お越しいただきありがとうございます。
よろしかったら、お付き合いください。
あらすじ・登場人物・ネタバレ
第一章 再開
登場人物
● 吉川 黄美子(よしかわ きみこ)
60歳。女性を監禁、暴行した罪で逮捕された。
弁護人は無罪を主張している。
● 伊藤 花(いとう はな)
40歳。20年ほど前、吉川黄美子と数年間暮らしたことがある。
大手スーパーが母体の総菜屋の販売スタッフとして働いている。
● 加藤 蘭(かとう らん)
20年ほど前、伊藤花と暮らしていたことがある。
今は、主婦で子供がいる。
● 玉森 桃子(たまもり ももこ)
20年ほど前、伊藤花や加藤蘭と暮らしていた。
実の妹と妹の彼氏と揉めて行方不明になっている。
● 琴美(ことみ)
20年前に亡くなっているようだが、この章では詳しいことはわからない。
名字も最後までわからない。
あらすじ
吉川黄美子が逮捕されたことを知り、伊藤花は20年ぶりに加藤蘭に連絡し、会う約束をします。
伊藤花が20年も音信不通だった加藤蘭に連絡をした理由は、20年前に琴美という人物が死んだことに吉川黄美子や伊藤花、加藤蘭や玉森桃子が関わっていたからでした。
伊藤花は加藤蘭に会い、「20年前の琴美さんのことを警察に話した方がいいんじゃね?」と提案しますが、「アホか。やめろ!」と言われます。
加藤蘭は「あんなものは、若気の黒歴史」「警察に話すとか、想像力がヤバい方向にやばいよ」とか名言を出し惜しみなく伊藤花にぶつけました。
伊藤花は、「わたしの電話番号消しといてね」と言ってさっそうと去っていく、加藤蘭を見送り第一章は終わります。
加藤蘭の「想像力がヤバい方向にやばい」が、ヤバイほど名言です。
一生、忘れられない気がします。
第二章 金運
登場人物
● 伊藤 花(いとう はな)
第二章では、15歳から17歳。
あだ名はビビンバだった。ちなみにビビンバはキャラクターの名前。
● 吉川 黄美子(よしかわ きみこ)
35歳。
伊藤花が15歳の夏休みの間、一緒に過ごす。
● 伊藤 愛(いとう あい)
37歳。伊藤花の母親。
かなりざっくりした性格。
● トロスケ
伊藤愛の彼氏。
トロくさくて、活舌が悪いので「トロスケ」と呼ばれている。
あらすじ
15歳の伊藤花の前に、突然、吉川黄美子が現れます。
伊藤花は、母親にはない親近感を吉川黄美子に感じました。
吉川黄美子との生活を、伊藤花は楽しく過ごしていましたが、夏休みが終わると同時に吉川黄美子は突然いなくなりました。
高校二年生になった伊藤花はファミレスでバイトに明け暮れます。
バイトに明け暮れる理由は、引っ越しのための資金を貯めるためでした。
がしかし、1年半をかけて貯めた72万6千円が母親の元彼氏のトロスケに盗まれてしまいます。
何もやる気が起きない伊藤花の前に吉川黄美子が現れて第二章は終わります。
突然いなくなる前に吉川黄美子は、伊藤花のために冷蔵庫に食べ物をぎゅうぎゅうに詰めていきます。
「これはアカン。感動する」と思う一方で、「人の釣り方がわかってんなー」とか下世話なことを考えている心が汚れちまった自分が情けないです。
話が進んで「ひたすらバイトに明け暮れた1年半と72万6千円がチャラか。花ちゃんどん底かわいそう」「釣り師、きっと出てくるな」と思っていたら、これ以上ないタイミングでアングラー吉川黄美子が再登場して、おもしろくなってきました。
とか、物語に引っ張り込まれたわたしも釣られてます(笑)
第三章 祝開店
登場人物
● 伊藤 花
身長163cm。
20歳と偽りビールを飲み、自分がアルコールに強いことを知った17歳の夜。でも、盗んだバイクで走り出してはいない。
初めて見た映画は「魔女の宅急便」だったりで、わりと普通だったりする。
● 吉川黄美子
あまりアルコール耐性がないことがわかる。
愛用のヘアスプレーは、サンスターのVO5。
「わたしはケープ派だったなー」とか思い出す、アラフィフの夜。
● 琴美
古くからの吉川黄美子の友人。ザ・ギンのクラブで働いている。
第三章で、琴美のことがいろいろとわかる。でも、名字はまだ出てこない。
小顔で小柄のすらりとした体形の美人さん。
伊藤花いわく、「芸能人みたいだ」らしい。
● 安 映水(アン・ヨンス)
甲斐犬に似ている、吉川黄美子の古くからの友人。
スナック「れもん」の開店準備を手伝ってくれた。
頭の中の静かな場所へそっと物を置くような不思議な美声の持ち主(伊藤花 談)
● ごんちゃま
「ふぉっ、ふぉふぉ」でリッチな馬主。
「コトミビジン」というサラブレッドを持っている。
● エン
「福や」の女将。自分のことを「アテ」と呼ぶ。
「福や」を20年経営している。見た目がすごく若い。
あらすじ
伊藤花と吉川黄美子はスナックを開店することにしました。
「檸檬」や「レモン」など、迷って悩んで決めたスナックの店名は「れもん」です。
スナックの場所は三軒茶屋の駅から数分歩いたところにある雑居ビルの3階で、1階には「福や」という小料理屋があり、2階にはタトゥーの店があります。
吉川黄美子はビルのオーナーと交渉して、ひと月の家賃を14万7千円にし、保証金を1か月分負けてもらうことに成功しました。
スナック「れもん」の開店の日、琴美がごんちゃまを連れて「れもん」に来店し、「開店祝いだ!」と、ごんちゃまはヘネシーのXOを入れてくれました。
「福や」の女将もお客さんを連れて来てくれて、「れもん」のオープニングは大成功。
スナック「れもん」は、初日に26万3,500円の売り上げをたたき出し、第三章は終わります。
伊藤花の母親が働いていた店の名前は「聖母たちのララバイ」というらしいです。
「ネーミングセンスがすごいな」とか、どうでもいいことで個人的に盛り上がった第三章です。
そんなことよりもですね。
「20で切ってくれ」と琴美が言った、ヘネシーのXOは20万なのか?
琴美さんの名字は?
この2つが個人的に気になって、気になって(笑)
その他には進展があまりない第三章でした。
第四章 予感
登場人物
● 伊藤 花
第四章で初めて加藤蘭と会い、一緒に「タイタニック」を鑑賞する。
● 吉川 黄美子
この章では、ちょっと風邪気味。
● 加藤 蘭
「れもん」の近所のキャバクラで働いていたので、伊藤花と仲良くなる。
埼玉県の幸手市から東京の美容師学校に通っていたが、3時間の通学時間に耐え切れずドロップアウト。
ドロップアウトの原因は「所さんのそこんトコロ」の遠距離通学の賢人たちのように、家族の協力が得られなかったことが原因のようだ。
● アン・ヨンス
伊藤花と吉川黄美子と鍋を囲み、「一味はないのか?」「七味じゃダメだ」とか言って、七味を待たずに帰っていく。
● レオ様(スペシャルサンクス)
「タイタニック」に出演したときの天上天下唯我独尊で無双のレオナルド・ディカプリオ。
伊藤花に「僕はきみがどれだけ頑張り屋さんか知っている」「そして、君がどんなに賢くて素敵な女の子なのかも知っている」とか語りまくって去っていく、伊藤花の夢の中で。
あらすじ
1997年ぐらいの話です。「香港が中国に返還される」とか「あと数年で世紀末。ノストラダムスがどうとか……」なんて会話が出てきます。
「れもん」は開店から3か月たっていましたが順調に営業していました。
あっという間に年の瀬になり、正月休みにアン・ヨンスが伊藤花に携帯電話を持ってきてくれます。
携帯電話の料金は「こっちでなんとかしておく」とアン・ヨンスは言いました。
たまにアン・ヨンスが吉川黄美子に白い封筒を渡します。
伊藤花が中身をこっそりのぞくと、15万円と「オチユウスケ5、ヤマタク7、ヨシミ3」と書かれた紙切れが入っていました。
伊藤花は1月3日に加藤蘭と「タイタニック」を観に行きました。
その後、マクドナルドでこれまでのお互いの人生を語り合い、二人は意気投合します。
伊藤花は「『れもん』を手伝ってくれないか?」と加藤蘭に頼み、第四章は終わります。
第四章のタイトル「予感」の意味がよくわからなかったです。
あとは「タイタニック」の話題が出てきて懐かしかったです。
タイタニックには「上映時間が長すぎるわっ!」という思い出しかありませんけど。
たしか、タイタニックのDVDは2枚組だったんですよね、長すぎて。
第五章 青春
登場人物
● 伊藤 花
ちょっと、吉川黄美子の嫌なところを見つけてしまう。
● 吉川 黄美子
「難しいことはわからない」で済ます、必殺技を披露する。
● 加藤 蘭
スナック「れもん」で働きはじめた。
● エン
雑居ビル1階にある「福や」の女将さん。
最近、昼間から酒を飲んでいるせいか、料理の味がチャランポラン。
● 玉森 桃子
未来では行方不明の「紅」の桃子JAPANが第五章で初登場する。
あだ名が「ゴリラ玉サターン」で筋肉質というナイスキャラ。実家はお金持ち。
● ニャー兄(にゃーにい)なかさわ猫太
31歳のライター。
語る内容の意味不明度がヤバい方向にやばい人物。
「れもん」が入っている雑居ビルの2階にあるタトゥーの店主と知り合い。
あらすじ
「れもん」に警察が来て、伊藤花は漠然と「バレたんだ」とビビります。
警察が来た理由は、雑居ビルの2階にあるタトゥーの店に泥棒が入ったからでした。
警察が帰ったあと「福や」のエンさんが来て、素晴らしい名言を残していったので紹介します。
1.金は今のうちにしっかり貯めておけ
2.金を持っている男にろくなのはいない
3.金を貯めて貯めて、こぼれ落ちるのをちょっとすすって生きていくくらいがちょうどいい
4.仲間や友だちがいても、金がないと共倒れになる
5.友達が死んで一人になったとき、金がないとみじめになる
6.あの世に金は持って行けないと言うが、持って行く必要なんてない。金が余ったらおいていけばいい
7.人は年をとって死ぬが、金は年をとらないし死なない
8.貧すれば鈍する(貧乏だと、生活が苦しいので心までのろまになる)
以上。エンさんの名言の数々でした。
警察の来店からしばらくして、玉森桃子とニャー兄が「れもん」に来店します。
玉森桃子がX JAPANの「紅」を熱唱し、それを聞いた伊藤花は紅に染まり、X JAPANのファンになり、玉村桃子と友達になって第五章が終わります。
トロスケにお金を盗まれたことよりも、エンさんの名言の数々の方が、伊藤花のお金に対する考え方を変えたと思います。
エンさんの名言は素晴らしかった。ただ、お金に対する将来への不安がありあり過ぎて、伊藤花のお金に対する不安をあおり、人生を少しずつダメな方へゆがめていったのは間違いありません。
第六章 試金石
登場人物
● 伊藤 花
最高のパフォーマンスが詰まった夢を見る。
名著の「夢判断大辞典」と出会う。
● 吉川 黄美子
父親の墓参りに行く。
● アン・ヨンス
1パック2千円以上するウナギのせいで、伊藤花に自分の過去を話すことになる。
● 玉森 桃子
HIDEが亡くなり、瀕死中。
初めて携帯電話を持った。
● 加藤 蘭
カリスマ居酒屋店員の彼氏に顔を殴られる。
あらすじ
1998年の話。
伊藤花と吉川黄美子が住んでいるハイツが更地になるので、7か月以内に引っ越ししなければならなくなります。
吉川黄美子とアン・ヨンスは「部屋なんかいつでも借りられるだろ」というスタンスですが、伊藤花は不安になりました。
HIDEが亡くなり、玉森桃子が半狂乱で伊藤花のところへやってきます。
そのあと、何となく伊藤花と吉川黄美子、加藤蘭と玉村桃子は一緒に過ごす時間が多くなりました。
高級なウナギのかば焼きのパックを「れもん」の冷蔵庫に入れたままだと気づいた伊藤花が、昼間の「れもん」に行くとアン・ヨンスが野球賭博をしているところに出くわします。
アン・ヨンスは、「ギャーギャー」と騒ぐ妖怪メンドクサイ女と化した伊藤花に自分の過去を話しました。
雨俊という5歳年上の実の兄と、志訓という兄貴分がいたこと。
雨俊と吉川黄美子が付き合っていて、志訓と琴美が付き合っていたこと。
雨俊は27歳で亡くなり、志訓は行方不明になっていること。
アン・ヨンスは、吉川黄美子についても話します。
吉川黄美子の母親には借金があり、刑務所を出たり入ったりしていること。
吉川黄美子の母親の借金をアン・ヨンスが返済していること。
吉川黄美子は、ふるまいや反応が普通の人とは違い、出来ないことや考えられないことがたくさんあること。
吉川黄美子は幼い頃、右と左が覚えられなかったので、右手にタトゥーを入れられたこと。
アン・ヨンスからいろいろと聞いた伊藤花はショックやら、切なさやら、さまざまな感情に襲われて第六章は終わりました。
195ページから226ページのアン・ヨンスが語る昔ばなしが波瀾万丈でおもしろかったです。
昔ばなしには物語のキーになる話も盛り込まれているので、必読です。
第七章 一家団欒
登場人物
● 伊藤 花
一生懸命に貯めた235万円が生きがい。
● 吉川 黄美子
相変わらず、伊藤花のピンチの道しるべ。
● 加藤 蘭
実家にお金を仕送りしていたことがわかる。
● 玉村 桃子
ラッセンの絵を家から持ってきて「ラッセンパワーでいくっきゃない!」とか言い出す。
● ジン爺 陣野(じんの)
「れもん」のビルのオーナー。
家なき子になるはずの伊藤花の前に現れた救世主。
「れもん」に来たら必ず新曲を歌うチャレンジャー。
● 伊藤 愛
久しぶりに登場。
不動産屋と別れ、矯正下着の詐欺まがいに遭って借金地獄に堕ちていた。
あらすじ
賃料120,000円也。
伊藤花と吉川黄美子は一軒家へ引っ越しすることになります。
その一軒家には、加藤蘭&玉村桃子も一緒に住むことになりました。
しばらくして、伊藤花の母親がお金を借りにやってきます。
伊藤花が「お金を貸す」と告げると、母親はピースサインをしました。
ピースサインは「やったー!」でもなく2万円でもなくて、なんと200万円のピースサインでした。
伊藤花は必死に貯金したお金から200万円を母親に渡します。残金は35万円になってしまいました。
へこんでいた伊藤花に吉川黄美子は「れもん」があるから大丈夫だと言います。
そんな話をしていると、蘭&桃子がイルカが超笑っているクリスチャン・ラッセンの絵を持って家に帰ってきました。
ラッセンの絵を「れもん」に飾る予定でしたがかなわず、「れもん」が燃えてなくなり第七章は終わります。
伊藤花が抱えている問題や不安を簡単に吹き飛ばす吉川黄美子は素敵だと思える第七章でした。
ラッセンというワードが出てきて「ゴッホより普通にラッセンが好き」と頭の中をよぎったのは内緒だったりします。
第八章 着手
登場人物
● 伊藤 花
19歳。無免許。
第八章で、売上高がほぼ手に入る新しい仕事をすることになる。
● アン・ヨンス
伊藤花にヴィヴィアンを紹介する。
● ヴィヴィアン
アン・ヨンスの知り合い。40歳過ぎ。
伊藤花に仕事をくれる。
小さい所帯で、顔が見える人数で仕事をするのが流儀な人。
仕事をするとき、間に人が入るのを嫌う。また、「あらめん」が嫌い。
「あらめん」とは?
「新入り」とか、「新顔」のことです。
● 蘭&桃子
第八章では、少しだけ出演。
二人がじっくり話し合うと、かなりズレが出てくることがわかる第八章。
あらすじ
「れもん」が燃えてしまい、従業員一同は新しい仕事を始めることになります。
伊藤花はアン・ヨンスにヴィヴィアンという女性を紹介してもらい、1回につき15万円稼ぐことができる仕事を紹介してもらいました。
仕事の内容は、ATMでカードを使い出金するというもので、月に2度仕事をして月収30万円ですけど「犯罪よね」という内容です。
ちなみに、「れもん」の火事の原因は、1階の「福や」からの出火でした。
「福や」の女将のエンさんはやけどを負い入院しましたが、命に別状はありませんでした。
またみんなで「れもん」のようなスナックをしたいと願う、伊藤花の今の全財産は49万円です。
新しくスナックを始めるためには500万円以上必要という絶望的な数字が出てきて第八章は終わります。
お金を稼ぐために伊藤花の必死を見ているのが楽しく、物語が大きく動き「今後に期待」な第八章でした。
というか、第八章で吉川黄美子は何してたんだっけ?
第九章 千客万来
登場人物
● 伊藤 花
宮殿で光り輝く肉を食べて泣く。
● ヴィヴィアン
もう、そうめんは食べたくないらしい。
理由は死ぬほど食べたから、つゆなしで。
● 吉川 黄美子
「Haaaー!」でも「波ぁぁぁーっ!」でもなく。
「は」の一言で、伊藤花を撃ち抜き、後ずさりさせた。
● 加藤 蘭
元カレに彼女ができてしまい、ショック。
心機一転! 電話を変え、iモードにするらしい。
iモードって久しぶりに聞きました(笑)
● 玉村 桃子
妹に「ゴリ」と呼ばれている。
妹のことは「しーちゃん」と呼んでいる。
この第九章で、ばぁちゃんの金を勝手に使っていたことがバレて、親に出金を制御された。
● 琴美
及川(おいかわ)という、お薬中毒のヤクザと付き合っていることがわかる。
やっぱり名字はわからない。
●玉森 静香
玉森桃子の妹。大きな瞳と高い鼻で小顔の美人さん。
がしかし、グッドデザインは顔だけ。体はダルダルだし、歯が壊滅的に汚くて足が短い。
おまけに、部屋もパンツもぐちゃぐちゃでゴリゴリにやばい(蘭 談)
あらすじ
ヴィヴィアンが伊藤花をライトニング☆ビーフを出す宮殿のような焼肉屋さんに連れて行ってくれます。
その店でヴィヴィアンは吉川黄美子や琴美と知り合いであることを話し、そのあとバカラについて話し始め、やがて1億を賭けたバカラに勝利し「金の奥」を感じた、という昔ばなしをしました。
このあと、伊藤花は仕事のとき以外でもヴィヴィアンと会うようになり、ヴィヴィアンからいろいろな危ない仕事の話を教えてもらいました。
伊藤花は、ATMカードの仕事を続け「れもん」再開への資金を順調に増やしていきますが、伊藤花以外のメンバーがつまづき始めます。
琴美は付き合っていたヤクザに殴られケガをしたり、アン・ヨンスに連絡が取れなくなりました。アン・ヨンスが現れないので吉川黄美子への現金の供給もありません。
加藤蘭はキャバクラを辞めてしまい、玉村桃子はパーティー券を販売できなかった代わりに50万円の借金ができました。
追い詰められた伊藤花は、ヴィヴィアンに相談します。
ヴィヴィアンはカードの仕事をくれ、伊藤花、加藤蘭と玉村桃子はカードを使って金券を買いまくり、手にした金券を金券ショップへ売りまくるという仕事をし始めて「なんか悪い方向へ行っているぞ」で締めくくる第九章でした。
「今日や明日の続きを生きていける人たちは、続きを生きていけるまともな世界で生活していく資格をどのように手に入れたのか?」
「どのように、そっちの世界の人間になれたのか?」
せっぱ詰まった伊藤花が考えたこの問いが印象的でした。
わたしは、こんなことを一度も考えたことがなかったです。
あらためて「幸せな場所へ生まれてきたことに感謝せねば」と思いました。
第十章 境界線
登場人物
● 伊藤 花
蘭&桃子に「わかめラーメン&ピノ」を食べられたことでキレたあと、倹約家にもかかわらず黄色のペンキを8,300円で買う大人買いを見せた。
● 蘭&桃子
どちらかが伊藤花の「わかめラーメン&ピノ」を食べて、伊藤花の逆鱗に触れた二人は追い込みをかけられた。
● 吉川 黄美子
金鳥の「サッサ」でせっせと壁やら棚やらを拭く穏やかな毎日を過ごす。
そんな黄美子さんの返事は「あいあい」っす!
● ヴィヴィアン
韓国に出張し、儲かるネタをいっぱい仕込んでくる。
アン・ヨンスの近況は知らないみたい。
あらすじ
2か月3人で走り回り、カードの仕事で貯金できた額が575万3,000円になっていました。
大金を持った伊藤花は、小さいことでも不安にかられます。
そんな中、ヴィヴィアンと連絡が取れなくなりました。これからのことを考えると不安はさらに大きくなり、伊藤花は蘭&桃子にきつく当たってしまいます。
「この不安を取り除くためにはイエローしかない!」
ということで、伊藤花は黄色のペンキを買い、蘭&桃子と一緒に換気もせずに黄色い油性のペンキを家の壁に塗りたくり、3人仲良くラリることに成功しました。
壁をイエローにしたのが良かったのかどうなのか、伊藤花の携帯にヴィヴィアンから連絡があり「またカードで稼ぐことが出来そう」となり一件落着? で、第十章は終わりました。
伊藤花がペンキを買ったのを読んだときに「絶対ラリるな」と思っていたら、予想通りで笑いました。
「アンメルツヨコヨコ」で涙を流して死ぬほど笑うところは想像できませんでしたけどね。
というか、ラリっていると「アンメルツヨコヨコ」で笑えるんですね(笑)
第十一章 前後不覚
登場人物
● 伊藤 花
何のエモーションもないまま20歳になったが、ポンコツコンビの蘭&桃子にイライラする毎日が続いている。
● 蘭&桃子
コンビでポンコツ過ぎて、伊藤花に詰められる毎日が続いている。
● 吉川黄美子
相変わらず、のほほんと暮らしている。
でも、アン・ヨンスから連絡があったときはうれしかった様子で静かに喜んでいた。
● アン・ヨンス
久しぶりの登場。
トラブル発生でほとぼりが冷めるまで身を隠していた。
● ヴィヴィアン
みかじめ料のことで詰められ中。若干、余裕なし。
● 琴美
カラオケで「想い出がいっぱい」を歌う。
あらすじ
桃子の借金50万円を返済します。そして、久しぶりにアン・ヨンスから連絡が来ます。
アン・ヨンスは「行方不明の『志訓』を大阪で見つけた」と話しました。
黄色い家に帰ると桃子の友だちが家の中でくつろいでいて、伊藤花は激怒しました。
激怒した理由は、ヴィヴィアンから預かった偽造カードが黄色い家にあったからです。
この出来事のあと、「会議」と呼ばれる話し合いが行われるようになり、3人の関係がどんどんこじれていきます。
偽造カードを使った仕事も減っていきました。そんなとき、ヴィヴィアンが新しい仕事を持ってきて、伊藤花、アン・ヨンスはチームを組みます。
仕事内容は、琴美のお店「セラヴィ」で、カードの情報を抜き取ってよそへ売るという内容でした。
新しい仕事(ミッション名:セラヴィ)は順調に進みましたが、黄色い家の雰囲気は重く、いよいよ2165万9,000円を4人で分けて解散、という事態に追い込まれていました。
そんな中、伊藤花は琴美と久しぶりに会います。
二人は、昔ばなしに花を咲かせ、ビールを飲み酔っ払い、カラオケを歌いました。
琴美は、気分どん底の伊藤花に、とてつもなく素敵な時間をプレゼントしてくれました……が、家に帰ると、ちょうど玉森桃子がお金を持ってトンズラーしようとしているところに出くわして終わる第十一章です。
吉川黄美子がイライラする伊藤花に言った言葉が感動的でした。
「花、花。わたしは、腹が減ってんのかなとか、泣いてるなとか、そういうのだよ。なにすればいいか、そんならわかる」
第十一章「前後不覚」 503ページ
また、第十一章の最後、伊藤花と琴美が二人で共有する素敵な時間は、読んでいるこっちにも楽しさが伝わりました。
第十二章 御破算
登場人物
● 伊藤 花
トロスケごときに「見ため変わりすぎだろ」と言われる。
● 吉川 黄美子
ゴッホやピカソの方が好きだったのかも?
ラッセンの絵を破壊する。
● 加藤 蘭
伊藤花と玉村桃子の間に挟まれて、辛そう。
● 玉森 桃子
割と口が達者なところを見せるが、そのせいで伊藤花を怒髪衝天させた。
怒髪衝天とは?
怒り狂って髪の毛が逆立つような状態をさします。
● 琴美
亡くなる。はっきりとした死因はわからない。
● アン・ヨンス
第十二章に出演するメンバーで一番きつい立場に追い込まれる。
● ヴィヴィアン
円広志にそそのかされたのかどうかは知らないが「夢想花(とんで、とんで)」する。
● トロスケ
久しぶりの出演。
あらすじ
伊藤花は玉森桃子が貯金を持ってトンズラーしようとするところを阻止します。
二人は取っ組み合いになり、「花 WIN!」で決着しますが、玉森桃子は「蒲田行進曲」クラスの階段落ちを見せて救急搬送クラスのケガを足に負いました。
もはや黄色い家のカルテットは限界で、お互いが敵同士、いつ崩壊してもおかしくない状態でした。
しばらく崖っぷちの上体が続いたある日、アン・ヨンスから電話があります。
「ヴィヴィアンが飛んだ」と。
「800万円持って、アムロ行きます! しました」と。
でも、伊藤花には、何もできず、そして何もする気にはなれませんでした。
そんな気持ちで街を歩いていたら、コソ泥トロスケを見つけました。
「わたしの金を返せ!」とトロスケに詰め寄る伊藤花でしたが、返り討ちに会って、さらに惨めな気持ちになりました。
どん底気分で公園のベンチに座っていると、アン・ヨンスから電話がありました。
「琴美が死んだ」と。
琴美が死んだのは、伊藤花に「志訓が大阪にいる」と聞いたことが原因かもしれませんでした……が、それを確認する手立てはありませんでした。
琴美が死んだ原因が自分にあるかもしれないのに、それを確かめるすべがない伊藤花はどんどん壊れていきました。
伊藤花は、蘭&桃子が言った「吉川黄美子やアン・ヨンスたち大人に、私たちは操られていた」「貯金を4で割って解散しよう」という誘いにのります。
伊藤花は吉川黄美子には何も告げずに黄色い家をあとにして第十二章は終わりました。
琴美が死ぬのは最初からわかっていましたが、なんか悲しい第十二章でした。
3人娘の黄色い家の去り方は「自然な感じかな」と思いました。
第十三章 黄落
登場人物
● 伊藤 花
コロナで総菜屋をレイオフされる。
● 吉川 黄美子
白髪まじりの短く刈り上げた髪型になっていた。
● アン・ヨンス
腎臓とリンパと肝臓のトリプルリーチで闘病中。
あらすじ
黄色い家を出たあとの伊藤花の人生が語られます。
黄色い家を出て東村山の清風荘に帰り、黄色い家のことを思い出さないように馬車馬のように工場で働いたこと。
清風荘に帰って2年後に母親が結婚すると言って九州へ行ったこと。
勤めていた工場が閉鎖されたので、湯河原のホテルや箱根のホテルで清掃員として働いていたこと。
36歳のときに、母親が59歳で死んだこと。
九州にいると思っていた母親が亡くなったのは都内の小さなアパートだったこと。
箱根のホテルを退職して母親が住んでいた6畳のワンルームで暮らすことにしたこと。
近所の総菜屋で働き始めて3年目の春に吉川黄美子の事件をを見つけたこと、などです。
吉川黄美子がどうしているか知りたいのに知るすべがない伊藤花は、古い電話のアドレスを引っ張り出して、アン・ヨンスに電話しました。
アン・ヨンスと話した伊藤花は、吉川黄美子が東村山のスナックの2階に住んでいることを聞き、会いに行きます。
久しぶりに会った吉川黄美子は60歳には見えないほど、年老いていました。
伊藤花は「一緒に行こう」と話しましたが、吉川黄美子は「いかない」と言います。
吉川黄美子は「ここにいるから、お母さん、琴美やアン・ヨンスに会える」と言いました。
伊藤花は「わたし、会いにくる。会いにくるよ」と言って帰路につき、第十三章は終わります。
ヴィヴィアンのその後や、黄色い家に置いて行った1000万円近くのお金がどうなったのかが知りたいです。
また、吉川黄美子が起こした事件の内容なども明らかにされず、ちょっぴり不完全燃焼でした。
伊藤花の誘いにのり、吉川黄美子が一緒に行くと、ボケたおばあちゃんを引き取る感がするので、再会を約束して東村山のスナックでさらりと別れたのは良かったと思います。
さいごに
「黄色い家」を読む前は、頭のいかれたサイコキラーが黄色い家でチェーンソーを振り回すような話で、「そこからの脱出劇のような感じ?」だと思っていました。
読み始めて間もなく「ちょっと違うかなーっ!?」と思ったんですけど、引き込まれ気味な感じで601ページにたどり着くことができました。
わたしは、伊藤花と吉川黄美子との中間の年代を生きてきました。
そのことも「黄色い家」を楽しく読めた理由かな、と思います。
「HIDEが亡くなったときのテレビで見るファンの大行列はすごかったなぁ」とか。
2000年問題のときは古いビルの管理人室でジャーナルとにらめっこして、2000年になって10秒ぐらいしてからジャーナルに印字して「2000/1/1/00:00:10」とか出たときは、「何もなくてよかったー」とか言ってたな、とかを思い出しました。
また、琴美が死ぬ前に歌った「想い出がいっぱい」も、「アニメの『みゆき』のエンディングだったなー」とかを思い出し、ちょっとセンチメンタルを味わえて得した気分になりました。
「黄色い家」はボリュームたっぷりなページ数ですが、最後まで飽きずに読めると思いますので、お時間がある方はぜひ手に取ってみてください。
以上です。
約14,700文字、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
「存在のすべてを」も2024年本屋大賞ノミネート作品です。
お時間ございましたら、こちらもよろしくお願いいたします。