「赤ずきん、ピノキオ拾って死体と出会う。」を読みました。
軽いノリの推理小説でした。
「赤ずきんちゃんはあんなことしないし、そんなことも言いません」なんて、ツッコミどころ満載。そして、「白雪姫はそんな娘じゃねー!!」と、推しの小人のおっちゃんたちが叫びそうなところもあります。
軽いノリで進んでいくので、わたしが推理小説でよくやる「あれっ、なんだったけ?」で数ページ戻る呪いは一切なし。なので、身構えずに楽しく読めました。
「赤ずきん、ピノキオ拾って死体と出会う。」は、眉間にシワ寄せて本を読みたくないときにオススメの小説だと思います。
ざっくりあらすじを書きますので、興味を持たれた方は、ぜひ。
第一幕 目撃者は木偶の坊(でくのぼう)
赤ずきんがピノキオの右腕を拾って帰宅したら、お母さんに「可哀そうだから、体も見つけてやれ」と言われてピノキオのカラダ探しを始めます。
するといつの間にやら自分が殺人犯になっていて、真犯人を見つけないとギロチンで絞首刑になるところまで追い詰められた赤ずきん探偵。
ということで、赤ずきん探偵は、カラダ探しから犯人探しへ目的をスイッチし、真犯人を追い詰めるというものです。
殺人というか、殺されるのは見世物小屋の猫なんですけど、謎解きはないに等しいかな、という感じ。
その分、ダラダラとは続かないのでサクッと読めます。
この章の最後でピノキオのカラダが魔女に持ち去られ、ピノキオのカラダ探しが今後の目的になります。
第二幕 女たちの毒リンゴ
魔女に子供ができ結婚しようとしますが、相手に逃げられて結婚が白紙になります。
魔女は落ち込みますが、親友のカガミさんに応援されて「わたしは、シングルなお母さんが安心して暮らせる制度をつくる!」の名のもとに超絶努力し、とある国の国王と再婚。一国の王妃にまで駆け上がり「シングル母さんでも人生は最高よ!」な、母親相談制度を実現させるサクセスストーリー。
かと思いきや、国王が亡くなったあと義理の娘が邪魔になり、娘の殺害を計画し始めます。この義理の娘が白雪姫。
ちなみに、この魔女は人を殺すと魔力がなくなってしまうので、自分では白雪姫を亡き者することができません。
そこで登場するのが、半日以内に実と根を食べると毒になるゴブリンビーンズを使った殺害トリックです。
ゴブリンビーンズを使ったトリックと、なぜ白雪姫を殺そうとしている動機が今っぽくて良かったです。赤ずきん探偵とピノキオワトソンの名コンビによる、名推理の章でした。
この「女たちの毒リンゴ」は面白かったです。前の章よりも「あぁ、そういうことか」がありありだったので。
この章では、ピノキオの左腕が見つかります。今後は胴体と足を探すことになります。
第三幕 ハーメルンの最終審判
ピノキオのカラダ探しで訪れたハーメルン。早々にピノキオの胴体は見つかりますが、今の胴体の持ち主、ミファンテさんは「こんな理想的な音が鳴る木の塊はない」とかなんとかでピノキオの胴体を気に入っており、ピノキオの胴体を返してくれません。
それでもなんとか胴体を取り返そうと赤ずきんは食い下がり交渉しますが、昔話が始まります。
その昔話とは、ハーメルンに大量にネズミが発生して楽器という楽器をかじりまくり大変なことになった話。頭を抱えていたハーメルン市民の前に「そのねずみを退治してやろう。報酬は五千ペルクね」と言ってきたフルート吹きがいて、フルート吹きは見事にねずみを一掃しました。
がしかし、ハーメルンのお偉いさん方は報酬を支払いませんでした。仕返しにフルート吹きは呪いの曲を吹いて、ハーメルンの町の子供たちを連れ去ってしまいます。フルート吹きは捕まって終身刑を言い渡されました。45年たった今でもフルート吹きは収監されていて、牢屋からは音楽が流れてきます……みたいな。
ざっくりなあらすじは30年近く計画を練ったお父さんの敵討ちなんですけど、いろいろな伏線があり、最後に回収されますので納得のいく物語でした。またもや、赤ずきん探偵の名推理が炸裂します。
幕間 ティモシーまちかど人形劇
豚の三兄弟がオオカミを返り討ち。
オオカミが持っていたブドウのネックレスを手に入れて魔女の弱みを握り、魔女を従え起業してのし上がるサクセスストーリーです。
短いです。15ページほど。
第四幕 なかよし子豚の三つの密室
赤ずきん探偵はブッヒブルクの町で巧妙なトリックの殺豚事件に巻き込まれます。
豚長男のマイケルさんが殺害され、そのあとに次男豚のアンドレさんも殺害されてしまいます。
長男豚のマイケルさんを殺害したのは次男豚のアンドレさんで、次男豚のアンドレさんを殺害したのは三男豚のパトリックさんです。
話の途中で赤ずきん探偵はトカゲにされてしまいピンチにおちいりますが、ピノキオやハーメルンバンドのみんな、貴族の息子のジルや赤ずきんをトカゲに変えた魔女の手を借り、銀のブドウのネックレスに変身して事件を解決します。
物語の最後にピノキオは人間の子供にしてもらい、めでたしめでたしでした。
おわりに
「赤ずきん探偵、トカゲにされちゃったけど大丈夫かな?」みたいなことにならないのが、この小説のいいところ。
失礼な言い方ですが、これっぽっちも感情移入できないのが、この小説のいいところです。感情移入しないので、軽い感じで読み進めることができるところが良かったです。
逆に感情移入したくてしたくてのようなとき、ような方には向かない小説だと思います。
赤ずきんちゃんは「こんなこと言わねーよ」だとかツッコミを入れつつ、軽快なノリで全編ポンポン進んでいくのが楽しくて楽しくてのような気分のとき、ような方にはとてもおすすめ。
ただ、ポンポンと進んでいくぶん、推理小説としては、うす塩味な感じかな、と思いました。
善がひどい目に遭う理不尽なことも起こりませんし、悪い奴にはそれなりの鉄槌が飛んできますので、かるーい感じの推理小説を読みたいときにはオススメです。
以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。