クロワッサンはコゲますが、人はコゲないので小学生の読書感想文としておすすめできる本書。
小学生に安心しておすすめできる分、ミステリーとしてはちょっぴり物足りなさを感じました。
とはいえ、ちゃんと謎があり、謎を解決していく過程は楽しく読ませていただきました。
読み終えたあとに口の中が鉄くさくなる小説も好きですが、「たまには読了後にお口の中がバターの香りでいっぱいになるような作品も良いな」と感じました。
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このミステリーがすごい どこのパン屋？
このミステリーがすごい
「謎の香りはパン屋から」土屋うさぎ（著）は、第２３回「このミステリーがすごい！」の大賞を受賞しています。
その他の最終候補作品には「一次元の挿し木」や「どうせそろそろ死ぬんだし」などがあり、この二作品は「文庫グランプリ」を受賞しています。
どこのパン屋？
作中の「ノスティモ」は大阪府豊中市にある架空のパン屋さんで、作者が学生時代にアルバイトをしたパン屋さん「LOAF Bakery」がモデルになっているそうです。
ちなみに「ノスティモ」の意味は、ギリシャ語で「美味しい」という意味です。
その他、作中に登場する架空のパン屋さんにもモデルとなるパン屋さんが存在しています。
興味がある方は「シティライフニュース 謎の香りはパン屋から」で検索してみてください。
「このお店のモデルはここ」のように紹介されています。
登場人物
レナ先輩 鈴木 レナ
豪快で派手な髪の色と性格が最高な人物。大学４年生。
「ノスティモ」のオープニングスタッフで、パンコーディネーターの資格を持っている。
いかついヒップホップが好みで、つり目のまぶたには大粒ラメのアイシャドウが輝いている。
仕事中に売れ残りのパンをチェックしていると、だいたい堂前店長が後ろからやってくる。
堂前店長いわく、「『ノスティモ』には売れ残ったパンは存在しない。多めに作ったパンがあるだけだ」らしいです。
でも、レナ先輩は売れ残ったパンを目の前に「大漁っ！ 大漁っ！」とか店長の哲学は気にもしません。
フランスパンをきれいに作るコツを小春に聞かれ、「パッションかな」と答えた情熱の人。
「パッションかな」が原因かどうかは知りませんが、最終的に音楽の好みがヒップホップからレゲエになります。
シフトを間違えて静岡に遊びに行ったりする自由人。
レナ先輩のように生きていけたらかなり人生は楽しいかもしれない。
市倉 小春（いちくら こはる）
主役。漫画家志望。
売れ残りのパンが目当てで「ノスティモ」でバイトをしているが接客は苦手。
漫画家になるには致命的な持病を持っていて、「そっとしておけばいいのに……」を謎にしておけない探偵病も持っている。
福尾（ふくお）
「ノスティモ」の社員。２６歳。小柄な女性。小麦色の肌がきらめく関西弁。
小春が突然送りつけた「鬼殺の剣士」という迷走しまくりな漫画にも素敵なコメントをくれる優しさあふれる人物。
婚約者の名前は、永瀬満（ながせ みつる）。
婚約者とともに自分のパン屋さんを開店しようとしているが、ある問題を抱えていて躊躇している。
堂前（どうまえ）
「ノスティモ」の店長。スキンヘッドで無精ひげ。
パンへの愛が重すぎる４０代半ば。
フランスで修業経験があり、パン職人として国内外で賞を受けている。
「パンとは心だ」が口癖。野球が好き。
高校時代は「送りバントの堂前」とか「左中間の不動明王」と呼ばれていた。
由貴子（ゆきこ）
小春の親友。付き合いは高校時代から。
東京から大阪へ小春とともにやってきて、「ノスティモ」を小春に紹介した人物。
「想剣演舞」のファン。推しのハセピーと内緒で付き合っていたがバレる。
ライブ会場の人員整理をするために「ノスティモ」を辞める気満々。
第一章で登場する由貴子さん、もっと出番が多いのかと思いきや、親友をないがしろにした罪で降板させられたようです。
堀田 紗都美（ほりた さとみ）
またの名は、Vチューバ―の香箱チョキミ。
身長１５０センチぐらいで小柄な女性。聡明な顔立ちでまつ毛は長い。
小春と大学が一緒。石川弁を操る工学部３年生。金沢出身。
「ノスティモ」のケーキ部門でバイトしているが、ちょくちょくパン部門のヘルプに入る。
道長（みちなが）くん
豊中中央高校の野球部でキャッチャーをしている。
ピッチャーの隼人と道長の黄金コンビで甲子園に行ける、とか言われている。
カフェでアクエリアスを注文しようとした素敵男子。
美桜（みお）ちゃん
高校生。道長くんとは幼馴染で道長くんのことが好き。
凛（りん）ちゃん
チョココロネLOVEな小学１年生。
お母さんは、葉子さん。
塩原 梢江（しおばら こずえ）さん
気品があふれるおばあさん。
旦那さんの思い出が詰まったカレーパンを探しに「ノスティモ」に来店する。
あらすじ・ネタバレ
第一章 焦げたクロワッサン
由貴子にダマされフラれた小春が、親友を追い詰めていくストーリーです。
「想剣演舞」という舞台のライブビューイングを二人で見に行く約束だったのですが、由貴子はドタキャンします。
由貴子が言ったドタキャンの理由がかなりの苦しまぎれに聞こえた小春は、持ち前の観察眼と推理力で親友を追い詰めていき、ドタキャンした本当の理由を突き止めます。
第二章 夢見るフランスパン
小春が友達と熱海へ旅行中のレナ先輩に電話をし「先輩、今日シフト入ってます」と伝えたときの「まじで！？」と答えたレナ先輩が素敵すぎる第二章です。
旅行中のレナ先輩のヘルプで「ノスティモ」のケーキ部門から紗都美さんがパン部門へ来ます。
この紗都美さんがフランスパンのクープ（切り込み）がうまくできない謎を小春が解き明かしていきます。
第三章 恋するシナモンロール
美桜ちゃんが野球部マネージャーのサキュバス桃花ちゃんから、道長くんを守ろうとするストーリーです。
美桜ちゃんが「ちゃぶ台返し」よろしくな強引な手を使って道長くんを守ろうとするので、道長くんが「ぎゃあああーーーっ！」とか悲鳴を上げるシーンがあったりします。
小春のひらめきで孔明桃花ちゃんの策は失敗し、美桜ちゃん＆道長くんはイイ感じの雰囲気になって物語は終わりました。
第四章 さよならチョココロネ
凛ちゃんが大好きな「ノスティモ」のチョココロネの販売が終了しようとしていました。
そんな中、凛ちゃんと葉子さんがひったくりに遭います。
小春は凛ちゃんが目撃した「首元の赤い十字傷」を手掛かりにひったくり犯を特定します。
堂前店長のはからいでチョココロネの販売も続けられることになり一件落着という内容でした。
第五章 思い出のカレーパン
梢江さんのために、小春、レナ先輩と紗都美が幻のカレーパン探しの旅に出るお話です。
３人は腹パンパンになりながら福尾さんの助けも借りて幻のカレーパンにたどり着き、３０年越しの梢江さんの願いをかなえました。
小春が困ったときにそっと手を差し伸べてくれる福尾さん。
そんな福尾さんがずっと隠したがっていた謎を小春が無理やり引っ張り出したうえ、強引に解決して第五章は終了します。
エピローグ
福尾さんのお店「ベーカリーまんぷく」に大学二年生になった小春が訪れます。
「ベーカリーまんぷく」に並んだクロワッサン、フランスパンやシナモンロールなどをトングでトレイに運びながら、これまでの物語を振り返るエピローグでした。
わたし一押しのレナ先輩が大学を卒業し、「ノスティモ」に就職したこともわかります。
最後に
全体を通して、とても読みやすい小説でした。
忙しくなければ、１日で読むことも可能だと思います。
章の最後に「クロワッサンはこんな感じで生まれました」みたいな感じでパンの歴史が語られ、その歴史が物語とちょっぴり関わっているのが良かったです。
以上です
一応、カレーパンの画像も用意していたのですが、使いどころがなかったのでここに置いておきます♡
最後までお読みいただき、ありがとうございました
