「存在のすべてを」塩田武士(著)のあらすじと登場人物を書きました。
あと、「野本貴彦はどこへ行ったねん!」という、わたしの考えを書きます。
ネタバレ全開です。ご注意ください。
お越しいただきありがとうございます。
お時間がありましたら、お付き合いください。
野本貴彦はどこへ行ったねん!
ゴリゴリに存在感を残して意味深に行方をくらました、野本貴彦さん。
物語の最後で「じゃじゃーん!」と登場するのかと思ったら、出てこなかったシャイなあんちくしょうの野本貴彦さん。
「野本貴彦はどこへ行ったねん!」という個人的な考えを書きます。
だらだらと書いた挙句に答えは出ていません。
暇で、怒らない優しい方、読んでいただけるとうれしいです。
野本貴彦は「亮を連れまわした挙句、木島家と勝手にイイ感じにまとめたこと」を理由に、ろくでなしアニキの野本雅彦に「全部バラすぞ」なんて脅されます。
「どうすんねん。どうすんねん」となり、関係各所との話し合いの結果、「自首しよう」という運びとなりました。
がしかし、自首する前に野本貴彦は姿を消しました。
※
ろくでなしの兄ちゃんに好き勝手されると、内藤亮の人生に悪影響が出ますし、木島茂や岸朔之介にとてつもなく迷惑が掛かることになります。
また、自首したとしても裁判でいろいろなことが暴かれることも予想できます。
結局、どちらを選んでも同じような結果となります。
なので、ろくでなしアニキが世間にバラすよりは「わたしたちの手で事件のことを公に……」てなことで、「自首しよう」という運びになったはずなのに、野本貴彦はロンリーで「あばよ!」しました。
※
単純に考えると、野本雅彦が邪魔なだけ。バラされる前にバラしてしまえばいいだけです(笑)
さらに、野本貴彦はトラブルばかり持ち込むアニキの行動にほとほと愛想が尽きていました……という裏ドラつき。
いくら良くできた弟の野本貴彦でも、「亮と出会えたのは、ろくでなしの兄ちゃんのおかげなのだ!」とか、「アニキのおかげで今まで知らなかった愛情を知ることができた!」なんて考えも、さすがにしないでしょう。
ということで
普通だったら、野本雅彦を亡き者に。というのが、合理的というか、しっくりくると思います。
がしかし、生きてるんですよね。ろくでなし☆アニキ。しぶといなコノヤロー。
2016年ごろに「『ソーラーシステム』社債詐欺事件」で警察に目をつけられています。
ということは
野本貴彦はアニキ退治に出かけて返り討ちにあった可能性が考えられます……が、この線も薄そうです。
物語の最後で写実画家になった内藤亮が「お父さんが描いていた未完成の絵」を引き継いで描いています。
ちなみにこの絵のサイズは約500号。500号の絵の大きさは、おおよそ3メートル×2メートルもあります。
内藤亮を木島家に送り出してから、野本貴彦がすぐにこの絵を描き始めたとは思えません。あの頃は亮くんロスで、野本夫婦にそんな気力はございませんのよ的な時期なので。
※
内藤亮が絵を引き継いで描き始めたときに、500号の絵がどれだけ進んでいたのかはわかりません。
ですが、さすがに500号の絵を描こうと思ったらかなりの時間、気力と体力も必要なはず。そんな絵を描き始めようと考えるには心身ともに健康でなければいけないと思います。
なので、野本貴彦はアニキ退治で返り討ちにあった線も薄い……かなぁ、と思うのです。
※
では、野本貴彦は家族写真を写実画にするために行方をくらませたのでしょうか。野本貴彦は「絵で僕らはつながっていられる」とか、亮に話していたので。
これはいくら何でも勝手すぎる行動だと思うんですよね。この行動に野本貴彦のキャラがチラつきません。
家族写真を写実画にするために、野本優美を残して野本貴彦が行方不明になったのは考えにくいです。確かあの時期は、優美さんは体調不良で苦しんでいたはずですし。
個人的な考えでも、物語上で描かれる野本貴彦はそんな人ではありません。「野本貴彦はくそヒデェ男だ!」なんて言ったら、「貴彦さまに陳謝して土下座なさいよっ!」って、ノモタカ☆ファンに怒られますよ、絶対に。
※
じゃあ、野本貴彦はなぜいなくなったのか?
やっぱり、単純に逃げただけ?(笑)
あのとき、あの場所から、何も考えずに逃げたかっただけかもしれません。
まぁ、どんなできた人物でも、そういうことってあるよね。みたいな☆
では、ダメですか?(笑)
いやだって、野本貴彦という人物はかなり思慮深いはずです。
こんなことも考えたのではないでしょうか。
学校帰りの内藤亮を、野本雅彦が ま☆ち☆ぶ☆せ
そんなことを想像したら野本貴彦はゾッとしたと思います。なので、野本雅彦には静かに消えてもらうしかないと、野本貴彦は考えたはずなんですよね、きっと。
また、木島家や岸朔之介に迷惑がかかるうんぬんよりも、野本貴彦は内藤亮の心と身体が傷つくのは絶対に嫌だったはず。
野本貴彦の中で内藤亮は自分の残りの人生をかけるに値する存在だったことは確かです。
でも、ろくでなしアニキってば、生きているんですよね。
もう私、どうしたらいいですか?
野本雅彦すっげ―邪魔(笑)
読み始めたころは、野本貴彦という人物は誘拐犯一味の陰の親分的な存在で、気まぐれに誘拐した子供を三年間育てていたのかもしれない、とか。
誘拐犯一味だった弟が、実は正義感が強くて同じ一味の兄から子供をかくまい、逃げながら誘拐された子供を育てたのかな、なんて思いましたがそうでもなく。
野本貴彦は、一緒に過ごした血のつながりがない少年を我が子のように愛した人でした。
野本貴彦が生きているのか死んでいるのかわかりませんけど、理想のアトリエで好きな絵を好きなだけ描いてすごしていることを願います……。
とか
カッコイイことを書いて締めくくろうと思ったんですけど、警察側から見ると「野本貴彦、ふざけんな!」ってことになるんですよね。
ただ、誘拐されたあとの方が、内藤亮にとっては幸せだったと思いますし、野本夫婦と過ごさなければ、内藤亮は写実画家なんてしていないはずです。
「みんな幸せ!」ってのは難しいので、内藤亮の幸せな現在の姿を見たら、児童同時誘拐事件に関わった警察関係者も「しぶしぶ納得してくれんじゃね?」というところが落としどころなのかもしれません。
いやでも
「児童同時誘拐事件のもう一人の被害者の子は可哀そうよね」と思います。名前も憶えていませんが(笑)
狂言誘拐で怖い思いをした上に、大人になったらなったで、野本雅彦も容疑者に名を連ねる「『ソーラーシステム』社債詐欺事件」に関わっていた犯罪者に落ちぶれていましたからね。
って、「まぁーたお前か、野本雅彦っ!」みたいな(笑)
いかがでしたでしょうか。野本雅彦のことを好きになれたでしょうか?(笑)
答えを出せなかった、くだらない考察にお付き合いいただき、ありがとうございました。
「黄色い家」も2024年本屋大賞ノミネート作品です。
お時間ございましたら、こちらもよろしくお願いいたします。
登場人物
門田 次郎(もんでん じろう)
大日新聞の記者。
中澤洋一とは、ガンプラ仲間。
中澤洋一の死後、ガンダムを受け継ぐ。
中澤 洋一(なかざわ よういち)
182センチの長身でトンカツソース顔。ガンプラが好き。
児童同時誘拐事件を担当していた。肺がんで亡くなる。
奥さんの性格がとてつもなくイイ感じ。
内藤 亮(ないとう りょう)
またの名は如月脩!!
児同時誘拐事件の被害者で、現在は写実画家。
写実画以外の特技は、パンパンのおむつでのウォーキング。
土屋 里穂(つちや りほ)
「わかば画廊」の一人娘でストーカー。
内藤亮とは同級生で、内藤亮のストーカーをしていた。
野本 貴彦(のもと たかひこ)
豆腐屋のせがれで写実画家でアニキはろくでなしだけどイケメン。
イケメンなのに野本優美ひと筋の大真面目さん。
内藤亮の才能を見い出し伸ばし、愛した人物。
岸 朔之介(きし さくのすけ)
画商会のおしゃれ番長というか、影の軍団長。
内藤亮に豊かな人生を歩ませるべく野本軍を指揮した人物。
警察にとっては、余計なことをしたろくでなし。
野本 優美(のもと ゆみ)
野本貴彦の奥さん。英語が得意で、野本家を英語で支えたレインボーな存在。
「レインボーな存在って何ぞ?」って感じですが、内藤亮の乳歯一本にも愛情を注いだ優しい人物。
木島 茂(きじま しげる)
内藤亮のおじいちゃん。
横浜アイアン身代金マラソンを走りぬいた鉄人で海陽食品を一代で築いた人物。
野本家との約束を守り通した義理堅い賢人でもある。
あらすじ
序章 誘拐
1991年の12月に誘拐事件が二つ同時に起こる話です。
一つの事件は社長なんだけどもお金がない家の子どもが誘拐されます。
ちなみにここんちの預金残高は500万円ちょい。犯人からの要求は2000万円です。
ぜんぜん、足りねー!
もう一つの事件は「一億用意しろ!」という犯人の要求に「はいっ! よろこんで」くらいの居酒屋の元気なニーちゃん的な勢いでお金が用意できるおじいちゃんを持つお孫さんが誘拐されます。
だからと言って、このお孫さんが超絶しあわせかというとそうでもなかったりします。
取り替えてもらえないパンパンのおむつでウォーキングをするのが日課の、「お孫さんが誘拐されましたよ」と言った警察に対して、「そこらへんで遊んでるから問題なし!」と言い放ってパチンコを続けた、素敵な母親をお持ちなお孫さんです。
さて
このリッチなおじいちゃんが犯人に横浜の街を行ったり来たりさせられるのですが、「はいっ! よろこんで」と元気なのはふところ事情だけ。
65歳のおじいちゃんには一億円が入ったバッグを両手に持ってのYOKOHAMAランニングがめっちゃきつい。
疲労と、「こうした方がいいんじゃね?」という勝手な考えと、犯人の「あっちへ行け」「次はこっちだ!」というめんどくさい要求が重なって、おじいちゃんは警察の指示どおりに動かなくなっていきます。
警察の指示を無視しまくりましたが、バッグを指定場所に置いたことで「ゴールっ!」と気が抜けたのか、直後におじいちゃんは疲労で寝込んでしまいました。
約6時間後
お金がない家の子どもは解放されて安堵する警察関係者でしたが、頑張って駆けずり回ったおじいちゃんの事件はというと、6時間放置された一億入りバッグを善意の馬鹿野郎が交番へ届けてしまいます。
さすがに交番に届けられたリッチバッグを再度同じところに置きなおすこともできずにゲームセット。リッチなおじいちゃんの孫は帰ってきませんでした。
お孫さんは犯人に殺されちゃった? 後あじ悪ぃー
……
なんて思っていたら、1994年12月14日におじいちゃんの家に「ただいまー」ってなノリで孫が帰宅して、序章は終了しました。
お孫さんがなぜ帰ってこれた? とか。
犯人の目的ってなんだろ? とか。
お孫さん、洗脳されてんじゃないの? とか。
ここからどうなるのかワクワクする終わり方です。
第一章 暴露
いきなり2021年12月に話が飛び、門田次郎が中澤のお葬式に出席するところから始まります。
門田次郎は新聞記者で、誘拐事件からしばらくして二児同時誘拐事件の担当者に取材をするために中澤に近づきました。
始めは門田次郎のことを警戒していた中澤でしたが、ガンプラが共通の趣味だと知った二人は仲良くなります。そのあと三十年、二人はマブダチでした。
中澤洋一は誘拐事件の時効が成立しても、「犯人の顔が見たい」と事件を調べ続けていました。
※
中澤のお葬式から帰るところで、門田次郎は中澤洋一の後輩刑事だった先崎に「ちょっと時間をください」と声をかけられました。
ちなみに先崎は、「二十年ぶりぐらいですかね」と言った門田に、「十八年です」とか言い返したメンドクサイやつです。
門田次郎は、先崎と富岡という白髪の男と話すことになります。
※
話の内容は「二児同時誘拐事件」のことでした。
門田次郎は「フリーダム」という雑誌を見せられます。「フリーダム」には、誘拐事件の被害者だった内藤亮が「如月脩」と名乗り、人気の写実画家になっている、という記事がありました。
ちなみに如月脩の原画は、B4サイズほどで100万円近いらしいです。しかも、予約がゴリゴリに入っているそうです。
犯人グループから解放された内藤亮が画家になっていたことを知った先崎と富岡は、「犯人グループの一人じゃね?」と考えていた「野本雅彦」の弟が画家だったことに新たな展開を期待したようでした。
がしかし、時効になってからずいぶん経過した事件を警察手帳をぶら下げて操作する訳にもいかず、「門田ちゃん、やっちゃいなよ!」と門田次郎を勧誘しに来たのでした。
※
「土屋里穂」の話。
今、土屋里穂は新宿にある「わかば画廊」で働いています。わかば画廊は土屋里穂の父が経営しています。
なんで、第一章の終わりに土屋里穂が突然出てきたのかというと、土屋里穂が内藤亮の高校の同級生だったからです。
以前、「福栄」という百貨店で働いていた土屋里穂にLINEが届きます。送信してきた人物は福栄時代の後輩でした。
そのLINEには、「如月脩=内藤亮」の雑誌の記事の画像がありました。
雑誌の画像を見た土屋里穂は、如月脩と内藤亮が同一人物だったことに驚きます。さらに、内藤亮が画家になっていたことを知らなかったので、ダブルで驚きました。
第二章 接点
門田次郎の取材の話です。
門田次郎は「兵庫新報の『磯山恵子』」に電話取材します。
磯山恵子への取材で、フリーダムが如月脩のことを書いた記事に対して「六花」の「岸朔之介」が、カンカンに怒っていることを知ります。
六花は如月脩が出入りしている画廊で、岸朔之介は六花のオーナーです。ちなみに長男の岸優作もカンカン。親子でカンカンとのことでした。
さらに
門田次郎の取材は続きます。
「百貨店『福栄』の『西尾義明』」にウェブで取材します。
嘘かホントか知りませんが、作中にこんな話がありました。
百貨店で個展を開いて1枚の絵が売れたとします。取り分は?
百貨店4、画廊4、命を削って絵を描いた人2の割合。だそうです。
キッつぅー。ありえん。10万円で絵が売れても、2万円しか残らんのか。絵の具代にもならんわな。
専業画家はひと握り。なんて書いてありますが、うなずけますね。
そんなことよりも
30年ほど前に西尾義明は六花の岸朔之介と大喧嘩をした話をしてくれました。
もめた原因は、岸朔之介がプッシュする天才的な写実画家の個展を福栄で開催する予定だったのに、百貨店側の都合で個展の開催が中止になったことでした。
企画がつぶれた原因は圧力でしたが、どこからの圧力かは語られずでした。
ちなみに、天才的な写実画家の名前は「野本貴彦」です。
野本キター! という感じですね。
内藤亮と野本貴彦が六花でつながりました。
誘拐された子供と、誘拐犯じゃね? という男の弟です。
絶対に関係あるわな、みたいな。
楽しくなってきました。盛り上がってまいりました。
門田は又吉圭と会います。又吉圭は野本貴彦と同じ大学出身で、同じ予備校で講師をしていました。
又吉圭いわく、野本貴彦は写実画家としての才能は素晴らしかったけど、政治的な駆け引きが下手くそで、師匠につばを吐いたのが原因で百貨店に圧力がかかり、六花の個展がつぶされたことを門田に話しました。
「野本貴彦に会ったのはいつ?」と聞いた門田に、又吉圭は「憶えてないけど、年賀状を見たらわかるかも」と答えました。
※
門田は先崎と会い、又吉圭に聞いた話をしました。
先崎は門田に資料を渡します。資料には、特殊詐欺に関わった人物の名前が書いてあり、その中に「野本雅彦」「黒木充」「立花敦之」の名前がありました。
「黒木充」は主犯格でマル暴。「立花敦之」は30年前に誘拐された被害者です。
※
高校に入学する直前の、土屋里穂と内藤亮の出会いが描かれます。
ここの「横浜港のシンボルタワー」での出会いでは、内藤亮の「り」の字も出てきませんが、たぶん内藤亮でしょうよ。みたいな。
とてつもなく精巧な階段の絵を描いていた内藤亮に、里穂さん一目惚れでした。
※
里穂さん、高校生になります。
よくできた恋愛ドラマよろしく、愛しの内藤亮さんと同じ高校、そして同じクラスになりました。
がしかし、二人はシャイなあんちくしょう同士です。二人の距離は縮まらず、やきもきしてきた里穂さんは、内藤亮のファンを通り越し、ほぼストーカーのようなマインドで学生生活を送ります。
ストーカーさんは内藤亮のことを考えてもんもんとしているときに、内藤亮が誘拐事件の被害者だったことを知りました。里穂さんは、誘拐事件のことを調べに調べまくります。
なんだかんだと二人の間の距離が縮まらないまま、二年生になって二人は違うクラスになってしまいました。
里穂さんショック。
第三章 目的
「ピアノ一緒に習わない?」で、天国から地獄へ落ちる「里穂さんを見ないであげて」な第三章です。
※
門田次郎は「『立花明美』の自宅のアパート」へ行き取材しました。
立花明美からは有益な情報は得られず、ちょうど帰ってきた長女に「なんでいきなり来るんですか!?」「帰らないとSNSに名刺の画像をアップするぞ、ゴルァ!」と言われます。
※
門田次郎は、藤島と会います。
藤島は門田が駆け出しの記者だったころにお世話になった人物で、児童同時誘拐事件が起こったときには、二人で取材にあたった縁がありました。
門田はこれまでの経緯を藤島に話します。
藤島は「門田君は何が知りたいの?」と聞いてきましたが、門田次郎は言葉に詰まります。それを見た藤島は、「なぜそれを伝えるかってことが大事なのよ」と門田次郎に言いました。
最後に藤島は、「『内藤瞳』は北九州にいて、商店街で働いている」という情報を門田次郎に話しました。
ということで
門田次郎は自宅から6時間かけて、北九州市に到着。
かなり行き当たりばったりの取材だったので、あちこちたらい回しにされる門田さんでしたが、門司港駅の近くで「内藤瞳」を確保しました。
内藤瞳に名刺を渡すと、「変わった名前ね」と言われました。30年前にも「変な名前」と言われたのを思い出す、モンデン☆ジロウでした。
内藤瞳は「フリーダム」の記事のことを知らなかった様子でした。息子の記事を見て「画家になっていたんだ」と言います。
門田次郎は内藤瞳にいろいろと質問します。しかし、これといった新発見はありませんでした。
がしかし
内藤瞳は思い出したように、一枚のはがきを出してきました。
そのはがきは、内藤亮が誘拐されていた時期に届いたはがきでした。
「ちょwww。おいおい」と声が裏返りそうになる、モンデン☆ジロウです。ちなみに、このはがきの存在を警察は知りません。
そのはがきには、京都の風景印が押されていました。
※
完全にストーカーとかした里穂さんは、水曜日限定で内藤亮のあとをスニーキングする高校二年生の青春まっ盛りです。
とある日、スニーキングを楽しんだ帰りの里穂さんはピンチになります。めんどくさい奥田という学年主任にからまれそうになったのです。このピンチを救ったのが内藤亮でした。
その後、里穂さんは内藤亮に誘われ内藤亮の豪邸にお邪魔しました。
おばあちゃんの木島塔子にそつなくあいさつをし、ディナーにまで誘われる愛想の良さを披露して見せる里穂さんでした。
内藤亮のアトリエで話が盛り上がりいい雰囲気になり、バックにはジョージ・ウィンストンの素敵なピアノが流れ、「これは告白される気配で間違いなし!」と確信した里穂さんに内藤亮は
……
「一緒にピアノ習わない?」と言いました。
里穂さん瀕死。里穂さんを見ないであげて(笑)
そういう勘違いってあるよね~
で、済ますことができない大事故です。
第四章 追跡
門田次郎50代が「マジっすか!?」「はいっ!喜んで」な第四章です。
※
望月徹という人物が、野本貴彦に肖像画を描いてもらい、「ものすごい出来栄えだった」と大絶賛。
そのあと、野本貴彦は行方不明になったと「『美術通信』のコラム」に書きました。
※
門田次郎は岸朔之介と会います。岸朔之介は画廊「六花」のオーナーです。
岸朔之介はすっごいおしゃれさんで、行きつけの店がこれまたおしゃれさんでした。
極上の料理と酒を楽しみながら二人で腹の探り合いをしていると、百戦錬磨の岸朔之介が折れてくれて、門田次郎に野本貴彦の絵を見せてくれました。
二人で野本貴彦の絵を見ながら話していると、岸朔之介のところへ電話がかかって来ます。
朔之介は、「ちょっと野暮用。行かなきゃいかん」てなことで、「絵を見終わったら、カギ閉めて帰ってね」と言い、ザ☆ギンへ行ってしまいました。
残された門田次郎は、ここぞとばかりに絵の写真を撮りまくり、野本貴彦の絵を注意深く見た門田次郎はギンジます。
「なんだか、野本貴彦と内藤亮は同じ時期に京都にいたような気がするぅ~!」
※
門田次郎が吟じていると、中澤洋一の奥さんのみき子さんから電話がかかって来て、「ガンダムのプラモもらってくれ」と言われます。
「マジっすか?」「喜んで」と答えた門田次郎は、「なんだか今日イケそうな気がするぅ~!」と心の中でガッツポーズをしたとかしなかったとか(笑)
※
門田次郎は、中澤ガンダムを頂戴しに中澤家にお邪魔します。
奥さんのみき子さんといろいろなことを話すうち、生前の中澤洋一が誘拐事件のことを独自捜査していて、県警捜査一課長だった三村智也に資料を送っていたことを知りました。
門田次郎は、みき子に仲介してもらい、三村智也に会いに行きます。
※
三村智也と会い、内藤亮が帰ってきたときに抜けた乳歯を持っていたことを門田次郎は知りました。
乳歯は手作りのケースに入っていて、歯が抜けた日の日付まで書いてあったという、至れり尽くせりっぷりでした。
実の親でも「上の歯が抜けたら縁の下へ。下の歯が抜けたときは屋根の上へ」的なおまじないで済ますことも多いはず。明らかに誘拐されてからの方が、内藤亮にとっては幸せだったような気がします。
三村智也から中澤洋一の捜査資料を見せてもらった門田次郎は、「なんだか、潜伏先の京都からハガキは出さないような気がするぅ~!」「あいつら滋賀県にいたんじゃね?」なんて考えました。
※
里穂さんが「わかば画廊」で企画したグループ展が失敗します。
万全の態勢で勝負するも38点あった中から、売れた絵は2点だけでした。
「くそ、コロナめっ!」とか「くそ、ロシアめっ!」とか思いつつも、どうしようもなく、めっちゃ疲れて自宅に帰り、18年前のストーカー時代の黒歴史のことを思い出します。
※
18年前、内藤亮に「ピアノのレッスン一緒にどうよ?」と誘われた里穂さんは、塔子の知人の家で二人してピアノのレッスンを受けることになりました。しかし、内藤亮は絵があんなに上手なのに、音楽の才能は壊滅的でした。
内藤亮がピアノのレッスンを受ける目的は、ジョージ・ウィンストンの「Longing/Love」という曲を演奏することです。この曲は1年や2年で演奏できる曲ではありません。
ストーカーな里穂さんは、「レッスンが続けば、Loveな亮と毎週あ・え・る」なんて考えますが、そうは問屋がストーカー退治。ピアノの先生が大腸ガンで入院し、ストーカーは左手首を骨折してしまいます。
骨折後、ストーカーの家にLoveな亮さんがお見舞いに来てくれて、誘拐された昔話をしてくれますが、ストーカーは最適解な返答ができず、Loveとストーカーの間に不穏な空気が漂い、微妙に自然消滅してしまいそうな予感になってしまいました。
第五章 交点
元ストーカーがストーカーされて、ストーカーに「金返せっ!」と言われて元ストーカーがぶん殴られる第五章です。
※
門田次郎は滋賀県へ行き、野本貴彦が描いた琵琶湖の風景と同じ場所を見つけました。
そこで、30代くらいの女性を見ます。女性は涙を流しているように見えました。この女性は元ストーカーです。
※
里穂さんが百貨店に勤めていたときにストーカー被害に遭います。
中田剛史というロクデナシが、里穂さんご指名で約80万円ほどの絵を立て続けに買います。といっても、最後の1枚は里穂が婉曲的に「やめとけ」と言い、剛史くんはホッとした表情を見せます。
ストーカーはストーカーを呼び寄せるのか、ホッとした表情と以前から自分が買った絵に興味を示さない剛史くんを見ていた里穂さんは「このすっとこどっこいは、わたし目当てねっ!」と確信を得ます。
※
剛史くんの突撃をひらりひらりとかわしつつの里穂さんでしたが、ある日突然、お母さんが亡くなります。
ものすごいショックを受けた里穂さんでしたが、少しずつ時が解決してくれたように見えたのも束の間、剛史くんが里穂さんの自宅に突撃してきます。
「お前なんかクソくらえっ!」と言った里穂さんに、剛史くんは「金返せっ!」と言い返し、買った絵の領収書を叩きつけました。
元ストーカーが「てめえが納得して買った絵だろうがぁ、ゴルァ!」と言い放つと、ストーカー真っ最中は元ストーカーをぶん殴りました。
やられっぱなしの元ストーカーを助けたのは若い兄ちゃんで、ストーカー真っ最中は若い兄ちゃんにねじ伏せられ、そのあと屈強な警察官にパトカーに押し込まれて去っていきました。
そのあと里穂さんも、ストーカー被害を訴えたのに助けてくれなかった上司に嫌気がさし、百貨店から去ることになります。
同じように去っていく元ストーカーと現ストーカー。やはり気が合うのね、という(笑)
※
門田次郎と土屋里穂は滋賀県でニアミスしました。
また、二人は滋賀県で内藤亮が描いた景色と野本貴彦が描いた景色をそれぞれ見つけました。
里穂は東京に帰り、岸優作と会います。
岸優作は内藤亮のことをよく知っているようでした。
内藤亮に会いたいと言った里穂に、岸優作は「そんなにLoveなら、亮に手紙を書けば」と言います。
第六章 住処
門田次郎は琵琶湖と野本貴彦の接点を岸朔之介に聞いてみようと連絡をしますが、岸朔之介からは返信がきません。
「あのおしゃれ番長め、逃げ回ってやがるな」とか思っていると、神奈川県警の元刑事、富岡克己から電話がかかってきました。
富岡の弟情報で、おしゃれ番長が見せてくれた野本貴彦の絵の一部が、北海道の「伊達紋別駅」だとわかりました。
ということで
門田次郎は北海道へやってきました。
そして、念願のキノコを見つけます。内藤亮と野本貴彦がキノコでつながった瞬間でした。
何のキノコ、というか、何の話か分からないと思いますので補足です。
野本貴彦の描いた公園の絵と内藤亮が描いたキノコのオブジェがある公園が北海道の同じ地域に存在していたのです。
門田次郎は「もろたで工藤!!」的なノリで図書館へ行きます。
1993年と1994年当時の地図から「野本」というワードを探すべく、門田次郎はジャケットを脱いでやる気満々の腕まくり。しかし、図書館司書さんに「1時間まででお願いします」と言われ、「クソ☆コロナがぁっ!!」と内心思うモンデン☆ジロウでした。
ちなみに司書さんには「充分です」とジェントルマン対応しておきました。
翌日も一番乗りで図書館へ行き、一番乗りで「1時間までね」と司書さんに言われたモンジロウじゃなくて門田次郎でしたが、お宝の地図じゃなくて地図の中からお宝を発見します。
門田次郎は「英語塾『レインボー』」というワードを発見しました。
「レインボー」は滋賀県にあった英語塾で、野本貴彦の足取りを追って琵琶湖へ行ったときに出てきたワードです。
滋賀県の「レインボー」で英語を教えていた女性は「橋本孝子」という女性でした。北海道で聞き込みをしてみると、北海道の「レインボー」で英語を教えていた女性も「橋本孝子」でした。
「橋本孝子」の画像を、野本貴彦を知っている又吉圭に送ってみると「橋本孝子=野本優美」だということがわかります。
「野本優美って、野本貴彦の奥さんやないかい」ということで、「もろたで工藤!!」とご満悦の西の名探偵モンデンジロウでした。
※
大日新聞北海道支局に連絡を入れて協力してくれるように依頼した門田次郎のところへ小樽支局の記者から連絡が入ります。
「英語塾『レインボー』」の土地は「酒井龍男」という人物のもので、酒井龍男は小樽で「北星物流」という会社を経営していました。北星物流は社員380人の立派な会社で、現在、酒井龍男は会長になっていました。
酒井龍男は絵画コレクターだということもわかります。添付されていた画像をよく見てみると、そこには酒井龍男と一緒に岸朔之介が写っていました。
※
門田次郎は酒井龍男に会いに行きます。
「ヘネシーX.O」をごちそうになりながら、門田次郎はこれまで自分が取材で得たことを酒井龍男に話しました。
質問に受け答えをする目の前の男から門田次郎が感じた印象は、「深さ」と「強さ」を兼ね備えたジェントルマンという印象でした。
そのジェントルマンに「きちんと人間を書きたい」「わたしは人間を書きます」と門田次郎は言います。
その言葉を聞いた酒井龍男は、「ユー、今日はここに泊まっちゃいなよ!」「明日、岸朔之介がここへ来るから」と言いました。
※
里穂さんがバレンタインデーに内藤亮にチョコレートを渡して、お返しに里穂さんを描いた油絵をホワイトデーにもらいました。
この絵に背中を押してもらった里穂さんは、万全の態勢でしたためた手紙を卒業の日に内藤亮に渡そうとしますが、それっきり内藤亮は行方不明になりました……という、里穂さんのハートブレイクな18歳のころの話です。
今、里穂さんは内藤亮に会うために北海道に向かっていました。
岸優作に「ユー、北海道へ来ちゃいなよ!」と言われたからです。
第七章 画壇
野本貴彦のむかし話が語られる第七章です。
野本貴彦の上には「松本豊寛」がいて、松本豊寛の上には「天地信幸」がいて、天地信幸の上というか、絵画界のトップには「大河原兼光」大先生がいるという、絵画の世界のめんどくさい縦社会が紹介されます。
あと、野本貴彦の実家が豆腐屋で、家の前に引っ越してきたのが奥さんの木原優美だったこと。優美とは幼馴染で仲が良く、結婚してからもずっと一緒にいることや、兄の雅彦が警察に捕まったことなどが紹介されました。
野本貴彦の家に個展で知り合った岸朔之介が来て、三人でケーキを食べながら愚痴を聞いてもらった話なども語られました。
すっごい人を引きつける写実画を描く以外、謎のベールに包まれていた野本貴彦でしたが、第七章でどんな人物なのかがわかります。
野本貴彦という人物は、絵画会のろくでもない権力争いに憤りを感じたり、絵が売れず稼ぎが少ないので子供を持てないことに悩んだり、奥さんの優美さんに申し訳ないと思ったりと、わりと普通の良い人だとわかります。
第八章 逃亡
続いての昔ばなしです。
野本貴彦は松本豊寛に「あばよ!」と言い放ち、しがらみだらけの絵画会から去りました。
怒った松本豊寛はなんやかんやと野本貴彦の邪魔をしてきます。岸朔之介が取って来てくれた百貨店で個展をする話も松本豊寛に潰されてしまいます。
めんどくさいことは連続するもので、長いあいだ音信不通だった兄の野本雅彦が自宅にやってきました。そして「三日ほど男の子を預かったくれ」と言いました。これが内藤亮です。
野本貴彦と優美は、内藤亮の絵の才能に気づいて驚き、そして虐待を受けていることも知り、内藤亮に同情しました。
二人はしばらく内藤亮を預かりますが、ろくでなしの雅彦は内藤亮を迎えに来る気配がありません。
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二人は「児童同時誘拐事件」のことを知りました。
児童同時誘拐事件の被害者が内藤亮だと知った野本貴彦は、亮の母親である内藤瞳がどんな人物なのかを確認しに行きます。
内藤瞳を報道陣にまじって観察した野本貴彦は「アカン、こいつはダメだ」と思いました。
第九章 空白
野本貴彦が内藤瞳に対して「こいつに子供を返したらアカン」と感じてから7か月が過ぎ、滋賀県、北海道と三人で逃避行を続けて、最後に内藤亮との別れが語られる第九章です。
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野本夫婦の「亮は返さん!」という決意は半熟ぐらいに固まりましたが、「これ東京にいて大丈夫か?」ということになり、三人は滋賀県へ行くことになります。東京から滋賀県への移動中に、野本貴彦はお世話になった岸朔之介に「もう会えません」と連絡をしました。
ちなみに滋賀県の家は野本貴彦の学生時代の友人の実家で、友人のご厚意によって家賃はタダです。がしかし、生活費は必要になります。
東京を出てから7カ月が経過し、資金ショートを前に頼ったのが「画商会のおしゃれ番長」岸朔之介でした。
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岸朔之介は、東京から滋賀県まで来てくれて、これまでのいきさつを黙って聞いてくれました。
さすがの岸朔之介も「児童同時誘拐事件」の話が出たときは深呼吸をするほどビックリしました。
が、そこはそれ、画商として銀座のど真ん中で海千山千を相手に戦ってきた歴戦の勇者のおしゃれ番長さん、野本夫婦の不安をすべて受け止めてくれて、これからのことを一緒に考えてくれました。
岸朔之介は、「木島家には亮が無事なことを伝えてはどうか」と野本貴彦に提案します。具体的には、木島家に手紙を書くという方法でした。
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滋賀県でしばらく暮らしていると野本夫婦の正体がバレそうになり、今度は北海道へ行くことになります。移り住んだのは、門田次郎も訪れた伊達市でした。
岸朔之介が「野本一家を、ちょっと面倒見てくれへん?」と酒井龍男に頼んだら、北の達人コーポレーションは二つ返事で快諾してくれたようです。
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伊達市に移住してから1年がたちました。
1年の間に、亮が高熱を出したり、予防接種をしていないことに気づいたりします。
このまま逃亡生活を続けると、亮が病気になったときに何もできないし、亮を小学校に通学させることもできません。
野本優美は、滋賀県で岸朔之介に言われた「この生活は長く続かないよ」という言葉がだんだんと近づいてきたのだと感じました。
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東京を出てから2年7カ月が過ぎました。本当なら内藤亮は小学一年生です。さすがにもう限界。タイムリミットが近づいてきました。
亮は「ずっといっしょにくらしたい」と願いますが、そんな亮に貴彦は「一緒に暮らした、わたしたちのことは忘れなさい」と言いました。
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最後に三人で縁側に座って記念写真を撮りました。
シャッターを押してくれたのは岸朔之介です。
シャッターを押す岸作之助に三人は無理やり笑顔にさせられましたが、三人の顔は引きつっていました。
終章 再開
で、野本貴彦は? という終章です。
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酒井龍男が建てた夢のようなアトリエが北海道の京極町にあり、そこへ岸朔之介に連れられた門田次郎と、岸優作に連れられた土屋里穂がやってきます。
なぜなら、その理想のアトリエには野本優美が……ではなく、内藤亮がいるからです。
アトリエの前室で顔を合わせた門田次郎と土屋里穂は「あーーーっ!?」てなことに。二人は滋賀県の高木浜でニアミスしたことを覚えていました。
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内藤亮が木島家に帰り、世間は大パニックになりましたが、木島茂は野本貴彦たちとの約束を守り、だんまりを貫き通しました。そして、しばらくすると世間もマスコミも事件に飽きました。
誘拐された子供のことは世間では過去のものになっていましたが、野本貴彦と優美の中で亮と過ごした日々は過去のものになってくれませんでした。
二人の生活は、ぽっかり穴が空いたどころではなく、現在進行形で亮への思いが募り、満ち足りていた生活が霧のように消えたことに二人は打ちのめされていました。
最悪な気分のまま2年ほどがたち、アイツが突然やってきます。そう、アニキです。
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ろくでなしアニキの野本雅彦は「全部バラすぞ!」と、おどしたりすかしたりしながら、結局は「お金ちょうだい」と言いたいけど言えないシャイなあんちくしょうな態度で野本貴彦の心をわさわさしてきます。
アニキは最後の切り札的に「岸作之助にお金ちょうだいって言うぞ」とのたまいました。岸朔之介に迷惑はかけられないと考えた野本貴彦と優美は自首することにしました。
自首することを酒井龍男に報告する前日に野本貴彦は行方不明になります。
ひと月ほどして、野本優美も行方をくらませました。
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岸朔之介は中学生になった内藤亮に野本貴彦が残した作品を見せました。
亮は「お父さんとお母さんに会いたい」と涙を流しましたが、岸朔之介は「どこにいるかわからない」としか答えることができませんでした。
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うん十万円する電動イーゼルがある理想のアトリエで内藤亮は野本一家が三人で縁側に座っている絵を描いていました。
内藤亮は、この絵を「お父さんの絵」と紹介します。お父さんが描いていた未完成の絵を内藤亮が引き継いで描いているのです。
その絵の家族は、本当の家族にしか見えませんでした。家族は絵の中で生き続けていました。
内藤亮は「芸術に完成はない。諦めただけ」という野本貴彦の言葉を胸に、いつまでも家族の絵を描き続けるようです。
それは、野本貴彦と内藤亮が、この絵でつながっている証拠でした。
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昔のことを楽しそうに話す、内藤亮と土屋里穂はうまくいきそうな予感がします。
アトリエの外を歩いていた門田次郎は、アトリエでお茶を出してくれたお手伝いさんと会いました。
お手伝いさんはマスクを外し、門田次郎に深く一礼しました。
その女性は野本優美でした。母と子は再開していました。
で、野本貴彦は? ってなるんですよ絶対に(笑)
以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。