【あらすじ・ネタバレ】「俺ではない炎上」朝倉秋成(著)

小説

「俺ではない炎上」朝倉秋成(著)を読みました。

とてもおもしろくて、1日で読破しました。

あらすじ、登場人物、からにえなくさ、えばたんの動機、犯人や叙述トリックなどについて書きます。

ネタバレで書きますので、まだ「俺ではない炎上」を読んでいない方は、もったいないのでまた来てください。よろしくお願いいたします。

いまえださく
いまえださく

お越しいただきありがとうございます。

お時間がある方とネタバレをものともしない方は、お付き合いください。

 



からにえなくさ

「からにえなくさ」とは、虫食い文章の残った文字を読んだものです。

順葉緑地じゅんようりょくちにある朽ちた看板に書かれた文章で、瓦屋根が三つ並んだ真ん中の家のことを指していました。

ちなみに元の文章がこれ。

ここから先、私有地つき立ち入り禁止
※動物にサを与えいで

  から 、   に
※   エ    な  く さ

山縣 泰介 311ページ

311ページまでの文章をどれだけほじくっても、311ページまで来ないと「からにえなくさ」の謎は解けません(笑)

「動物にエサを……」と書いてあるのは、ここが元は牧場だったからです。

ちなみに「からにえなくさ」は物語の冒頭で出てきます。

[文字どうりのゴミ掃除完了。一人目のときもちゃんと写真撮っとけばよかった。『からにえなくさ』に持ってくかどうかはまだ考え中]

住吉 初羽馬 6ページ

「からにえなくさ」のことを「なんだろ? なんだろ?」とずっと考えていましたが、くたびれもうけでした(笑)

えばたん 動機

えばたんの犯行の動機は、楽をして生きている人間がゆるせなかったからです。

「楽をして生きている人間が、許せなかった。あんな生き方をしている人間の存在が許されていいはずがない。ネットであいつらに纏わる情報を見つけたときに、絶対に見逃してはいけない巨悪だと思った」

「世の中はあまりに不公平だ。それが許せなかった。甘い汁を啜っているやつには罰が必要だと思った」

堀 健比古 329ページから330ページ

「本当は今のような仕事をするつもりはなかった。仕方なく働かざるを得なくなった。別の夢があったのに、幼い頃に父が亡くなったせいで進学できなくなって、高卒で働く必要に迫られた。自分のような不幸な人間がいるのに、へらへらと楽して大金を稼いでいるクズが許せなかった」

堀 健比古 330ページ

援助交際をしていた女子大生3人を殺害した理由を、えばたんは取り調べで上記のように話していました。

また、泰介に罪をなすりつけたのは副次的なものであるが、泰介に罪をなすりつけることに抵抗はなかったと話しています。

個人的に、えばたんが泰介を巻き込んだ動機は、建築士になれなかった腹いせと、えばたんが小学生のときに自分の前に立ちはだかった敵である泰介への復讐からだと思います。

問題の本質を誰かのせいということにしてしまえば、それ以上考える余地がなくなって楽になるからだ。

山縣 泰介 317ページから318ページ

泰介が上記のようなことを言っていますが、えばたんは自分が建築士になれなかったことを誰かのせいにしたかったのだと思いました。

叙述トリック

叙述トリック

「俺ではない炎上」の叙述トリックは、夏実が小学5年生のときの話か、学園大2年生のときの話かという時系列のトリックです。

ワクワクドキドキな展開に加えて、ツイートの引用で行間がら空きのスピード違反気味で読み進められるので気がつきにくいとは思いますが、「住吉初羽馬と一緒にいるサクラって夏実じゃね?」とか思うともうダメ。

小学校5年生だったはずの夏実が大人になり、シンデレラフィット。「あぁ、そういうことか」みたいな。

「殺戮にいたる病」我孫子 武丸(著)を読んでから、時間的なズレには敏感に反応するので、今回も「これひょっとして?」と思ったら、思った通り夏実さんはすでに大人でした。

いまえださく
いまえださく

ちょっと損した気分です(笑)

文庫化 いつ 何ページありますか?

文庫化 いつ

文庫化は、2024年の終わりから2025年の春ごろだと思われます。

理由は、単行本が発売され、2年半から3年後に文庫本が発売されることが多いからです。

何ページありますか?

「俺ではない炎上」の単行本は、3ページから363ページまであります。

俺ではない炎上の犯人は? 主人公は?

犯人は?

俺ではない炎上の犯人は、江波戸えばと 琢哉たくやです。

えばたん、と呼ばれています。

主人公は?

俺ではない炎上の主人公は、山縣やまがた 泰介たいすけです。

登場人物

山縣 泰介(やまがた たいすけ)

日本でもっとも有名な一般人に名乗りを上げた人物で、警察が予想した走査線エリアを軽々と超えた筋肉50代。

間違った日本語には厳しい。

青江(あおえ)

株式会社シーケンLIVEリヴの営業担当者。営業担当なのに愛想が悪い。

ピンチで四面楚歌の泰介のもとへ降臨したコンテナ救世主。

江波戸 琢哉(えばと たくや)

夢は建築士! あだ名は「えばたん」。

スズシタ工務店で働く「翡翠ひすい雷霆らいてい」の遺志を継ぐ者。身長158cm。

山縣 夏実(やまがた なつみ)

山形の夏の果実がサクランボなので、サクラというあだ名だった。

ちなみに、今回の見出しの色を「桜色」にしてみました。普段使わない色ですが、どうでしょうか? って、どうでもいいですか(笑)

山縣 芙由子(やまがた ふゆこ)

泰介の妻。パニックで「泰介が犯人です的な」話を警察にするが、最後には「主人は犯人ではない!」と言い切る。

コールセンターでパートをしている。同僚は高橋さん。

六浦(むつうら)

県警の巡査部長。警察サイドの人間なのに、「泰介は犯人じゃなくね?」と考える人物。

小学生のえばたんと夏実に「翡翠の雷霆のピンバッジ」を渡したのは六浦ではないでしょうか? なんて思っているのですが、そこまでの伏線はないかな。

堀 健比古(ほり たけひこ)

所轄の巡査部長。「泰介は犯人だ!」と考える、警察サイドの人間。

住吉 初羽馬(すみよし しょうま)

事の発端。自分の都合でリツイートしたために泰介を地獄へ突き落とした人物。

はたから見ると、上手くまとまった人生のように見えるが、すべてがそれなり・・・・の心がぺらっぺらの大学生。

体もぺらっぺらで、自分よりも体が小さい「えばたん」に、簡単にマウントポジションをとられた。

篠田 美沙(しのだ みさ)

いちばん最初に公園のトイレで見つかった被害者。

石川 恵(いしかわ めぐみ)

二番目に見つかった被害者。山縣家の倉庫で見つかる。

砂倉 紗英(すなくら さえ)

「からにえなくさ」の家のクッキーが入っていた棚に押し込められていた被害者。おそらくは、いちばん最初に殺害されている。ような気がする。そんなことはどこにも書いてありませんが。

「からにえなくさ」の家が燃えて、そのあとどうなったのか不明。

あらすじ ラスト

あらすじ ラスト

住吉初羽馬すみよししょうまのリツイートで、山縣泰介やまがたたいすけが女子大生を殺害した犯人にされます。

泰介は「すぐ納まるだろう」と思っていましたが、自宅からさらに死体が出てきたりして、女子大生を殺害した証拠がすべて泰介の足元に転がってきました。

逃げることを余儀なくされた泰介は、警察の予想を上回る動きを見せて逃げまくります。

「これまで自分は周りから尊敬される人生を歩んできた。だから、みんなが助けてくれる」と思って疑わない泰介でしたが、元部下の家に行くと「帰れ!」「気づいてないのか。お前は嫌われている」とハッキリ言われてしまいました。

始めは「なんでやねん!」と思っていた泰介でしたが、時間が経つにつれて自分が嫌われキャラだったことを自覚させられます。

満身創痍まんしんそういでたどり着いたシーケンのショールームで救世主青江メシアあおえの助けを借り、泰介は心身ともに少しだけですが元気をチャージすることができました。

その後、また死体が出てきて「これで3人を殺害した犯人だ……」ってことになり、泰介は再度心が折れて死にたくなりますが、娘の夏実なつみが助けに来てくれて「ごめん。この騒ぎわたしの責任」と言いました。

泰介は「この程度の責任を引き受けられなくて何が父親だっ!」と足の骨が折れていることをなかったことにして、ラストへ向けて走り出します。

ラストは、暴れる犯人に苦戦している夏実と住吉初羽馬を助け、翡翠ひすい雷帝らいてい江波戸琢哉えばとたくやを取り押さえます。

いまえださく
いまえださく

あらすじは、ざっくりこんな感じです。

青江のすごいところ

女子大生を殺害した証拠が、すべて泰介の方を向いていて、誰もが「山縣泰介が犯人だ」と思っていても青江は違いました。

理由は、犯人がツイートした日本語がポンコツだったからです。青江は「泰介があんなポンコツな日本語を使うはずがない」と考え、「泰介は犯人ではない」と判断しました。

泰介の本質を理解していたということよりも、周りの声に惑わされずに、自分の目で見たもの、自分の耳で聞いたもの、自分の肌で感じたことを頭で考えて答えを出せるところが、青江のすごいところだと思いました。見習わねば。

いまえださく
いまえださく

以上です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。