【あらすじ・ネタバレ】「世界でいちばん透きとおった物語」杉井光(著)

小説

愛人がいっぱいいるろくでなしの作家が死んで、愛人の息子が作家の残した未発表の小説をわりとイヤイヤ探す、という物語です。

この内容のどこに「世界でいちばん透きとおった物語」があんねん、って感じなんですが、あんねん(笑)

ということで、どこらまわしが透きとおった物語なのかをネタバレで書きたいと思います。

その他、あらすじと登場人物、「a先生」や「ありがとう」についても書きます。

いまえださく
いまえださく

お越しいただきありがとうございます。

お時間ございましたら、最後までお付き合いください。

 



あらすじと登場人物

あらすじ

ミステリ作家の宮内彰吾みやうちしょうごが死にました。

宮内は愛人いっぱいで愛人の中には子供を産んだ人もいました。

この子供が宮内が亡くなる寸前まで執筆していた「世界でいちばん透きとおった物語」を探し回ることになります。

宮内にあったこともない実の息子の藤阪燈真ふじさかとうまは、父親に悪いイメージしかありません。

しかし、物語を最後まで読むと、宮内が残した「世界でいちばん透きとおった物語」の意味がわかります。

その意味には、宮内の愛人愛情がいっぱいあふれていました。

「世界でいちばん透きとおった物語」の意味を知ったとき、燈真と一緒に感動と驚きを味わうことができます。

いまえださく
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「世界でいちばん透きとおった物語」の大まかなあらすじはこのような感じでしょうか。

登場人物

藤阪 燈真(ふじさか とうま)


主人公。宮内彰吾の息子。認知はされていない。
10歳のとき、高額な脳外科手術を受けている。
手術費用は宮内が家を売ったお金で支払った。そのことを燈真は知らない。
手術は成功したが後遺症が残り、燈真は本を読んでいると目がちかちかする。
燈真の後遺症が、宮内の「世界でいちばん透きとおった物語」を書こうと思った理由となっている。

深町 霧子(ふかまち きりこ)


編集者。燈真の母親と仕事をしていた。
母親の死後、燈真の力になってくれた。
隙のない才媛で、物語の後半は「シャーロック・ホームズか?」という推理を披露します。
理路騒然と「世界でいちばん透きとおった物語」の謎を燈真に語った人物。

藤阪 恵美(ふじさか めぐみ)


燈真の母親。宮内彰吾のファンだった。
トラックに跳ね飛ばされて運悪く傘の骨が良くないところに刺さり亡くなる。

宮内 彰吾(みやうち しょうご)


愛人がいっぱいいるベストセラー推理作家。
妻子持ちだが、愛人がいっぱいる。
甘いマスクと手の早さで知られるプレイボーイで愛人がいっぱいいる。
とにかく、愛人がいっぱいいる。
本名は松方朋泰まつかたともやすで、松方朋泰ほうたいのときがある。
「まつかたほうたい」のアナグラムで「魔法使いタタ」のときもある。
どんなときも、愛人がいっぱいいる。
愛人がいっぱいいて今まで刺されていないのは、愛人がいっぱいいても「愛をいっぱい与えられる人だから」かもしれない。
でもやっぱり、愛人がいっぱいいるのは許されないことだと思う。

松方 朋晃(まつかた ともあき)


宮内彰吾の息子。燈真の腹違いの兄。
燈真に「世界でいちばん透きとおった物語」を探すよう依頼する。
適当な性格だからか若く見える。
実の母親と宮内彰吾は10年前に離婚している。母親は千葉在住。
この母親がクセ者で、作中で人の家から物を盗んだり、人の家に火をつけたりします。

世界でいちばん透きとおった物語の仕掛けとは?

本のページが透けたときに、文字が裏写りしない作りになっている、という仕掛けです。

右と左のページを合わせると、右のページと左のページの文字が「ペタッと」くっつきます。なので裏写りしません。

この仕掛けが本の終わりまでずっと続きます。

ちなみに、物語の中だけ・・の仕掛けではなくて、実際の「世界でいちばん透きとおった物語」にも当てはまります。

「世界でいちばん透きとおった物語」は200ページ近くあるので、この作業をするために「めっちゃ時間がかかったんだろうなぁ」と思いました。

いまえださく
いまえださく

手に取って試していただきたい。

「うわっ、すげえ」って自然に言っちゃうと思います。

ちなみに、どうして宮内彰吾はこんなめんどくさいことを考えたのか、ですが、理由は二つあります。

息子に自分の作品を読んで欲しかったから。

息子の後遺症のため。

この二つです。

藤阪燈真は後遺症のせいで、本を読むときに文字の裏写りが気になります。

燈真は、裏写りが原因で本を読むと頭が痛くなりました。

そのことを知っていた宮内は、アナログな手作業でこの偉業を達成しようとしていました。

作中、燈真も言っていますが、無理です(笑)

献辞の「a先生」って誰?

a先生は、泡坂妻夫あわさかつまおさんです。

泡坂妻夫さんが書かれた「しあわせの書」という作品があります。

著者の杉井光さんはこの作品をリスペクトされているようです。

最後のページの「ありがとう」

宮内彰吾が残した手製の大判原稿用紙にはカギカッコが書いてありました。

カギカッコは物語の最後のページにあって、そのカギカッコには5文字入るようになっていました。

カギカッコには、どんな5文字が入る?

これが素敵な謎でしたが、「ありがとう」だと思っていたら、本当に「ありがとう」だったという得した気分を「ありがとうございました」みたいな。

最後の「あとがきにかえて」のページの「『ありがとう』ございました」の『ありがとう』が、前のページの空のカギカッコに「ありがとう」と入る工夫がされていました。

透けて「ありがとう」って見えたときには感動しました。

さいごに

ページを合わせて透かして裏写りしないことを確認すると、本当に感動すると思います。

ぜひぜひ、本書を手に取り透かしてみてください。

カギカッコの謎は最初「『さようなら』かな?」と考えたのですが、息子のためにいろいろなことをしていた宮内彰吾の良い面が最後の方で明らかになっていたので「『さようなら』よりは『ありがとう』だな」と考えてしまいました。

そこはちょっと残念ですかね。「さようなら」と考えていて、「なるほど『ありがとう』かぁ」と間違えたかったかな、と少し思いました。

あと、宮内彰吾の偉業は「世界でいちばん透きとおった物語」をアナログで完成させようとしたことではないと思います。

宮内彰吾はあれだけの愛人を作っておきながら、どの愛人からもかなり愛されていたという偉大な事業をやってのけたこと。

どう考えても、こっちの方が偉業だと思いました(笑)

いまえださく
いまえださく

以上です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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