チラッとテレビドラマの「ハヤブサ消防団」を見ただけなのに、三馬太郎が出てくると中村倫也さんの顔がチラッチラッするという「小説|ハヤブサ消防団」でした。
さらに中村倫也さんの爽やかウイルスの感染力が強すぎて、立木彩が出てくると川口春奈さんではなくて、水卜麻美さんの顔が浮かぶという爽やかハッピーウイルスの暴れっぷりです。
小説の作中、水卜麻美さんが中村倫也さんのもとから笑顔でバイバイしながら去って行くときに、「ちゃうねん、ちゃうねん。ち・が・う・ね~ん! 結婚したばっかりじゃーん!」と、頭の中で叫んでいました。みたいな(笑)
おかげさまで、小説を読んでいると爽やかウイルスが少し邪魔でした。「『ハヤブサ消防団』のテレビドラマが放送される前に小説を読んでおけばよかった……」なんてことはこれっぽっちも思わないくらい、中村倫也さんってスベスベの可愛らしい顔してますよね、というところに結局、落ち着くんですけど。
まあ、ジジイが中村倫也さんのことを「可愛らしい顔」とか言うのも気持ち悪いのですけどね。
お越しいただき、ありがとうございます。
登場人物、あらすじとちょっぴりな感想しか書いておりませんが、
よろしかったら、お付き合いください。
登場人物
「ハヤブサ消防団」には、すごい数の人が出てきます。
嫌がらせにエキストラのような人たちも紹介してやったぜぃ! みたいな(笑)
ちゅうちょせず、登場人物は飛ばしてください。
でも、頑張って書いたので読んでくれるとうれしいなっ! みたいな(笑)
● 三馬 太郎(みま たろう)
主人公。三馬は母方の性で、父方の性は野々山。
ミステリ作家で、明智小五郎賞を受賞したことがある。
ハヤブサ地区に移住し、桜屋敷を復活させた。
とにもかくにも、中村倫也さんがチラつきます。
● 宮原 郁夫(みやはら いくお)
八百万町消防団ハヤブサ分団の分団長。大柄。
律義で一本やりな性格。「まあ、ぇえやないか」の山原賢作とは犬猿の仲。
序盤の活躍を見ていると最後まで突き抜けて活躍するのかと思いきやそうでもなく、犬猿の仲の山原賢作に活躍の場を持っていかれます。
● 藤本 勘介(ふじもと かんすけ)
三馬太郎のマブダチになる人物。おしゃべり。
工務店に勤務。母親の名前は、苫子(とまこ)。
スバルの軽トラを「農道のポルシェ」だと三馬太郎に教えました。
日本酒の「ヤオロズ」が好き。
なんだかんだと登場しまくる人物ですが、物語の核心に近づくとともに、こっそりとフェードアウトしていくような人物です。
● 森野 洋輔(もりの ようすけ)
消防団の副団長。痩せ型。町役場に勤務している。
ところどころ活躍の場があるものの、あまり記憶に残っていません。そんなキャラでした。
● 徳田 省吾(とくだ しょうご)
洋品店、一徳堂の若旦那。気弱な人物。
消防車の運転が上手い。
この人もところどころです。
● 中西 陽太(なかにし ようた)
大工。背は低いがガッチリ体系。
この人は、さらにところどころです。
● 山原 賢作(やまはら けんさく)
荒くれ一族の豪胆な人物。山原林業を経営している。殺された山原博信の叔父。
宮原郁夫とは同級生だが水と油の関係。
みんなが思っていても言えないことを「サラッと」言ってくれる便利な人物。
自宅を放火されたり、殴られて死にかけたりと、災難続きでしたが、最後まで三馬太郎とコンビを組み、事件を解決に導くタフな人物でした。
● 立木 彩(たちき あや)
映像クリエイターで、名古屋アーツクリエイトで講師をしている。
愛車は赤いプリウスで司教の称号を持つ。
東京からハヤブサ地区に、というか、三馬太郎のところへ戻ってくることを信じ、「笑顔で去っていくんじゃねー!」と突っ込んでしまってゴメンと言いたい。
● 江西 佑空(えにし たすく)
随明寺の住職。かなりの曲者。というか、うさんくさいモンク。
全国の「たすく」さんには申し訳ないけれど、リアルで知り合いの「たすく」さん2人もことごとく、うさんくさい人たちです(笑)
実家は繊維問屋でした。
「うさんくさい」とかボロクソ言ってますが、江西佑空さんの最後の伏線回収はおもしろかったです。
● 信岡 信蔵(のぶおか しんぞう)
町長。八百万町長を二期務めている。長身。白髪を七三分けで品がある顔立ち。
ハヤブサ地区が嫌い。
実家が酒蔵で、銘酒「ヤオロズ」を製造している。
父親の「信匡(のぶただ)」は、あくどい高利貸しで早死にします。
母親は「とき」といい、八百万地区の名家、信岡家の令嬢でした。
物語の最後の最後にとても感動的なシーンを届けてくれます。
● 吉田 夏夫(よしだ なつお)
郵便局長。60代半ば。ひょろりとした男性。
たまに「居酒屋△」で会う。
途中退場します。
● 永野 誠一(ながの せいいち)
S地区の警察署長。
頼りないように見えるが、軽トラにポルシェのエンジンを積んだような切れ者。
これだけの切れ者だったら、吉田夏夫の途中退場を防げたかもしれないのに……とか思いました。
● 中山田 洋(なかやまだ ひろし)
草英社の編集者。太郎を担当している。
独身。ゴルフやフライフィッシングを趣味にしている。
ポンコツのようでポンコツではなく、ところどこでナイスアシストを決める人物。
● 田村 冨一(たむら とみいち)
オルビス・テラエ騎士団の事件を追いかけている、フリーの記者。
● 高斎 道春(こうさい みちはる)
オルビス・テラエ騎士団の教祖。
死刑が確定している。
● 杉森 登(すぎもり のぼる)
現オルビス十字軍総長で、元オルビス・テラエ騎士団の広報担当者。
オルビス・テラエ騎士団の解散後、オルビス十字軍を設立した。
● 藤掛(ふじかけ)
自治会長。八百万工務店に勤務している。
● 滝井 悠人(たきい ゆうと)
消防団員。
太郎が初めて居酒屋△へ行ったときに一緒に飲んだ人物。
● 賀来 武彦(かく たけひこ)
居酒屋△(サンカク)の主人。
居酒屋△のシーンで、鶏ちゃんがよく出ますが、鶏ちゃんとごはん、漬物とお味噌汁で、だいたい1,500円ぐらいですよね。
鶏ちゃんが運ばれてくると「キャベツばっかりじゃん!」とか、いつも突っ込んでおりまして、個人的に鶏ちゃんは値段が高いと思います。
「でも、好きでよく食べます」とか、どうでもいいですよね(笑)
● 近藤 重春(こんどう しげはる)
町おこしプロジェクトのリーダー。
三馬太郎に町おこしの脚本を依頼したとき、「一の滝で人が死ぬ話とかどう?」とか言い出したナイスガイ。(「少し前、ホントに一の滝で人が死んでるっちゅーねん」みたいな)
● 木戸 ヒサシ
60歳くらい。前歯が一本ない。
● 斎藤 直弘(さいとう なおひろ)
若手の消防団員。
● 山原 浩信(やまはら ひろのぶ)
問題児。23歳。上司とケンカし、知多の工場からハヤブサ地区へ都落ち。
親のすねをかじってパチンコばかりプレイ中!
ぶらぶらしていて、見なくていいものを見てしまい、一の滝で水死で見つかる。
● 杉本 徳一(すぎもと とくいち)
ハヤブサ地区を「スーパーナチュラルな場所」と表現した、センスの塊なサム&ディーンな人。
銀色の軽トラ愛用。三馬太郎のご近所さん。70代。
以前は名古屋のメーカー勤務。今は妻と田舎暮らし。
都会から田舎へ移り住んだという意味で三馬太郎の先輩である。
● 矢内(やない)
おかっぱ頭。八百万町役場に勤務している。町おこし担当者。
● 長塚 芳治(ながつか よしはる)
八百万消防団の団長。本職は工務店の社長さん。
● 関(せき)
紫野集落に住んでいる。60代半ばの男性。軽トラじゃなく、カブに乗っている。
● 真鍋(まなべ)
ソーラーパネルを売る、タウンソーラーという会社の営業マン。
ハヤブサ地区でタウンソーラーと言えば、真鍋。真鍋と言ったら、タウンソーラー。
愛想抜群の営業マンだったが、途中から荒くれ者にジョブチェンジ。
相方の騎士(ナイト)と一緒にハヤブサ地区で暴れん坊将軍する。
● 花邑 一也(はなむら かずや)
「怪盗ハヤブサの憂鬱」の監督をするはずだった人物。
● 本田(ほんだ)
少々ヌケ作なハヤブサ駐在の巡査。「ホンカンさん」と呼ばれている。
● 江島 波夫(えじま なみお)
3番目の火事の被害者。お金がないはずなのに、随明寺に300万円寄進していました。
● 富岡 和夫(とみおか かずお)
随明寺に100万円寄進していた、2軒目の火事被害者です。
● 山田 崇彦(やまだ たかひこ)
最初に火事に遭った。随明寺に150万円寄進していました。
寄進(きしん)と寄付の違いは?
寄進が何かわからなかったので、いくつかの辞書をまたいで調べました。
寄進とは、神社やお寺に金銭や物品を贈ることです。
寄付とは、団体や個人に金品を贈ることです。
● 野々山 久則(ののやま ひさのり)
八百万で仏壇店をしている。奥さんの名前は沢子(さわこ)。
「久則やったら知っとるんやないか?」でおなじみの、推理に行き詰ったときの久則さん。要所要所でナイスアシストをしてくれる、どこぞの編集者と同じ立ち位置の人。
しかし、実際にアシストしているのは、奥さんの沢子さんだったりする。
三馬太郎の父親、野々山勝夫の遠縁にあたる人物。
野々山久則のお婆さんの弟が、三馬太郎のお爺さんの妻の兄らしい、もはや他人な複雑な関係の人。
● 立花 和宏(たちばな かずひろ)
山原賢作のところへ「土地を売ってくれ」と通っていた人物。
オルビス・テラエ騎士団の幹部で、高斎道春の右腕と言われていたが、逮捕されている。
● 枝島 孝多(えだじま こうた)
タウンソーラーの社長。
元オルビス・テラエ騎士団の広報担当、杉森登の仮の姿。
● 浅野 ヤスノリ
新進気鋭の脚本家。
ドラマ「きのうの明日」が大ヒットしたが、このドラマの脚本は立木彩が書いたもの。
● 野々山 一茂(ののやま かずしげ)
三馬太郎に「野々山神様」のことを教えてくれた人物。
● 野々山 映子(ののやま えいこ)
野々山リストの11番目の人物。ちなみに三馬太郎は12番目です。
オルビス十字軍の信者で、山原本家のお墓の世話をしていました。
● 山原 孝典(やまはら たかのり)
紫野集落の住人。実直な人物で、定年まで中学校の教師をしていました。
● 山原 展子(やまはら のぶこ)
信岡信蔵の妹だが、母親が違う。
江西住職の姉だが、血はつながっていない。
お妾さんの子なので、山原家の家系図にのっていません。
物語の終盤は、この人の独壇場。
終盤は山原展子の人生をたどることが、ハヤブサ地区で起こった出来事の謎を解くカギになっています。
● 君津智 世子(きみつ ちよこ)
三馬太郎に、山原展子の素性を教えてくれた人。
信岡信蔵のお母さんの妹。
● 西山 庄之助(にしやま しょうのすけ)
「株式会社ニシヤマ」の会長。
三馬太郎に山原展子の情報をくれた。
● 滝川 明日香(たきがわ あすか)
オルビス・テラエ騎士団の渉外担当の元責任者。
登場人物の紹介は以上です。
飛ばさずにお付き合いくださった方、ありがとうございました。
以下、あらすじです。
あらすじ
第一章 桜屋敷の住人
三馬太郎が東京からハヤブサ地区に引っ越してきます。
ハヤブサ地区の人たちに消防団に勧誘され、三馬太郎は消防団に入りました。
三馬太郎の消防団への入隊式の真っ最中、ハヤブサ地区にある野中の江島 波夫(えじま なみお)さんの家が火事になります。
消防団員の藤本勘介によると、今年に入ってから今回で火事は3件目でした。
藤本勘介は、連続放火を疑っているようでした。
テレビドラマの「ハヤブサ消防団」を1話目だけチラッと見たことがあります。
小説を読んでいると、中村倫也さんのキラッキラの笑顔が頭の中でチラッチラして、物語が頭の中に入ってきません(笑)
第二章 だんじり祭り
放火の話題は消えませんでしたが、ハヤブサ地区は祭りの準備で大忙しでした。
ハヤブサ祭りは400年以上続いている由緒ある、だんじり祭りです。
ハヤブサ祭りは滞りなく終わりましたが、一部で「放火犯では?」と噂があった人物、山原浩信の水死体が見つかりました。
まったくハラハラドキドキがないな……なんて思っていたら、まさかの水死体です。
ここからのハラドキな展開に期待しました。
第三章 消防操法大会始末
八百万地区の消防大会が開かれます。
三馬太郎のいるチームは、小型ポンプ操法の種目にエントリーしました。
三馬太郎は消防大会の練習を毎晩していたので多忙でしたが、町おこしのためにミステリ仕立ての脚本を書くことになります。
ちなみに消防大会の結果ですが、来賓のお偉いさんをびしょ濡れにするという惨劇をやってのけた三馬太郎たちのチームは、採点不可能で失格でした。
来賓を水攻めで蹴散らす消防大会の描写がおもしろかったです。
第四章 山の怪
町おこしの脚本、「怪盗ハヤブサの憂鬱」が完成します。
町おこしミステリ「怪盗ハヤブサの憂鬱」
女怪盗ハヤブサの速水 優佳(はやみ ゆうか)が、弟子のマサルとともに、誘拐された教師の三島 裕太(みしま ゆうた)を助けるため、ハヤブサ地区に隠された謎を解いていくストーリーです。
タウンソーラーの真鍋が三馬太郎のところへやって来て「土地を売るか、ソーラーパネルを買うか、どっちだ?」と言ってきます。
真鍋が持ってきた資料で、三馬太郎は自分が持っている土地が3,000坪あることを知りました。
編集者の中山田がノリノリでハヤブサ地区へ遊びに来ます。
三馬太郎と中山田はフライフィッシングに行きますが、遭難しかかり変な白いものを見てパニックになっているところを山原賢作に助けられました。
その後、居酒屋△で飲んていると、山原賢作の家が火事になりました。
火事を見ていた中山田が飲み込んだ言葉に、火事が悲惨だということをあらためて思い知らされました。
第五章 気がかりな噂
「怪盗ハヤブサの憂鬱」の映像化が中止になりました。
三馬太郎と立木彩は残念会を開き、少し親密になります。
三馬太郎は中山田からのメールで、立木彩が「オルビス・テラエ騎士団」のPR映像を制作していたと知らされます。
中山田のメールは、「彼女は危険。近づかないように」と念を押すように結ばれていました。
オルビス・テラエ騎士団とは?
高斎道春を神の代理とする宗教団体。
脱退しようとした信者12人を拷問の末、殺害した事件で有名になった。
教団のトップ5人に死刑が求刑されているが、教団は名前を変えて存続している。
第六章 夏の友だち
「怪盗ハヤブサの憂鬱」の企画をつぶし、「ツチノコ・アドベンチャー」という企画を信岡町長がゴリ押しします。
名古屋のテレビ局が来るので、三馬太郎ら消防団のメンバーがツチノコ探索に駆り出されました。
当たり前ですが、ツチノコは見つかりませんし、消防団のメンバーは文句言いまくりです。
三馬太郎は、所用で随明寺を訪れたときにあることに気づきました。
火事になった家は、賢作の家を除き、タウンソーラーに土地を売っていたのです。
さらに、真っ昼間のハヤブサ地区でタウンソーラーの真鍋が営業していても変に思われないことにも気づきました。
ツチノコのことを「スッポンを食ったマムシ」と表現した宮原郁夫さんのセンスがサイコー!
第七章 推理とアリバイ
立木彩の過去がわかります。
立木彩はオルビス・テラエ騎士団の元信者でした。
オルビス・テラエ騎士団を脱退しようとした大学時代の友人が殺されて、立木彩は「逃げるようにハヤブサ地区へやって来た」と三馬太郎に話しました。
タウンソーラー社はオルビス・テラエ騎士団と関りがあることがわかり、物語がきな臭くおもしろくなってきました。
第八章 仏壇店の客
三馬太郎と立木彩、随明寺の住職の江西と山原賢作の4人は、タウンソーラーとオルビス十字軍を探ることにしました。
タウンソーラーとオルビス十字軍を探っている三馬太郎のところへ、タウンソーラーの営業マン真鍋が突撃してきて、ヤクザまがいの態度で「首を突っ込むな!」とクギを刺して帰っていきます。
八百万町産業文化祭が行われている中、信岡信蔵の家が放火されます。
第八章で「野々山神様」というワードが出てきました。
野々山神様とは?
紫野集落に伝わる氏神祭りのことです。
野々山があがめる氏神があって、年に一度、祭祀(さいし)がおこなわれます。
祭祀の内容は、簡単な祝詞を読んで手を合わせるだけ。
そのあと、集まった集落の人たちにお菓子を巻きます。
子どもたちがよろこぶそうです。
第九章 没落する系譜
三馬太郎は野々山映子の家を訪ねました。
そこで三馬太郎は、オルビス・テラエ騎士団の信者の証、ロレーヌの十字架を抱いたマリア像を見ます。
その後、町長の信岡信蔵のところへ行き、タウンソーラーとの関係を聞きだそうとしますが失敗しました。
宮原郁夫の家でイノシシの解体ショーがあり、三馬太郎と藤本勘介が解体ショーを見学しゲロゲロにされます。
そこで、三馬太郎は自宅に来た不審者の手掛かりを得ました。
第九章の冒頭、家が燃えた信岡信蔵が、消火活動を頑張ってくれたハヤブサ分団に誠心誠意の感謝を伝えました。
そのときの宮原郁夫の「あっ、あー」みたいな態度がリアルで良かったです。
同時に信岡信蔵への「コイツ絶対に裏でなんかやってんな」が消えましたけど。
第十章 オルビスの紋章
三馬太郎の自宅へ来た不審者は吉田夏夫でした。
三馬太郎は吉田夏夫が乗っていた軽トラの特徴的なエンジン音を武器に吉田夏生を追い詰めますが、自白を得ることはできませんでした。
しばらくたち、吉田夏夫に助けを求められた三馬太郎でしたが、吉田夏夫の家が燃え、吉田夏夫は亡くなります。
焼け落ちた吉田夏夫の家には、ロレーヌの十字架を抱いたマリア像がありました。
第十章は緊迫感ありでイイ感じでした。
居酒屋△で平和に飲んでいる藤本勘介の隣で、三馬太郎が吉田夏生を静かに追い詰めるシーンが良かったです。
第十一章 或る女の運命について
吉田夏生が亡くなり、三馬太郎は警察に知っていることを話します。
三馬太郎は山原賢作とのやり取りで、ロレーヌの十字架が山原家の家紋「山原一本矢」であることを知ります。話を聞いた三馬太郎は「山原家とオルビス・テラエ騎士団との間になにか関係があるのではないか?」と考えました。
三馬太郎は、山原賢作の助けを借りて山原家とオルビス・テラエ騎士団と関係がありそうな人物、山原展子を探すことにしました。
ちなみに
山原展子は、八百万町の町長である信岡信蔵の妹ですが、展子はお妾さんの子なので信蔵とは血がつながっていません。
また、二人の父親である山原信匡の死後、展子は養子に出されました。
三馬太郎は、君津智世子という人物から山原展子のことを聞きましたが、山原展子が今どこでどうしているかまではわかりませんでした。
君津智世子から山原展子と関りがある会社のことを聞いた三馬太郎は、名古屋にある繊維問屋街へ行き、そこで驚くべき情報を得ます。
養子に出された山原展子は、江西展子になっていました。
ガタイの良い人物が山原賢作の家の防犯カメラに映っていたときから「江西住職には何かあるかも?」なんて思っていましたが、「江西モンク、展子の弟かよっ!」みたいな。
第十二章 偽の枢機卿
東京で三馬太郎と立木彩は、フリー記者の田村冨一から様々な情報を得て、江西住職がオルビス十字軍の枢機卿だと知ります。
ハヤブサ地区に戻った三馬太郎と立木彩は、山原賢作とともに警察署長の永野誠一に今までに知り得た情報を話しますが、永野誠一は初めから逃げ腰でまともに話を聞いてくれませんでした。
警察署から帰ろうとしたとき「三馬くん、お土産を持って行って」と、三馬太郎だけが永野誠一に呼ばれます。
「土産って……」と、呆れて署長室に戻った三馬太郎でしたが、そこには別人のようなキレッキレの永野誠一がいました。
そこで三馬太郎は、江西住職が吉田夏夫を殺害した犯人ではないことと、立木彩がオルビス十字軍の幹部の可能性が高いことを永野誠一から聞かされました。
永野誠一から聞いた話を山原賢作にした三馬太郎は、立木彩をオルビス十字軍から守るフリをすることにします。
立木彩の家で監視を続けていた三馬太郎に中山田からメールが入りました。
このメールで、立木彩がオルビス十字軍の司教であることがわかり、これまでの経緯を立木彩は三馬太郎に話します。
怪しい気配を感じ「ちょっと見てきます」と外に出た三馬太郎は、タウンソーラーの真鍋に肩を撃たれて気を失いました。
撃たれた三馬太郎は二週間ほど入院します。
入院中、立木彩が何度か三馬太郎を見舞ってくれます。立木彩は、東京に戻りドラマを手掛けているプロダクションで仕事をすることを伝え、笑顔でバイバイしながら何事もなかったように高タンパク低カロリーに去っていきました。
三馬太郎が入院している間にタウンソーラー真鍋の自供により事件の真相が明らかになります。
● 江島波夫の家を放火したのはタウンソーラー真鍋
● 放火したところを山原浩信に見られた真鍋は、吉田夏夫に命じて山原浩信を呼び出し殺害
● 吉田夏生を殺したのは、タウンソーラー真鍋とその相方(騎士)
タウンソーラー真鍋は、放火と殺人容疑、銃の不法所持と三馬太郎殺人未遂の罪で逮捕されています。
彩さん、彩さん。バイバイしながら去っていくって……太郎と彩は何にもないのかよっ! みたいな(笑)
第十二章は、ヒヨコの皮を被ったハヤブサのような警察所長がグッド! でした。
というか、「タウンソーラー真鍋」って書くと、タウンソーラーというお笑いコンビの真鍋さんみたいになりますね(笑)
最終章 聖地へ続く道
ということで、伏線回収の始まり。
江西住職が、三馬太郎と山原賢作に山原展子のことを話します。
高斎道春が立ち上げ、鳴かず飛ばずだったオルビス・テラエ騎士団を大きく強くしたのは、山原展子でした。
ところが、こころざし半ばで山原展子はガンで亡くなります。享年29歳でした。
山原展子が亡くなってから、オルビス・テラエ騎士団は、どんどんおかしな方向へと進んでいきました。
江西住職は「姉を弔いたい」と、何度も高斎道春を訪ねます。しかし、高斎道春は「オルビス・テラエ騎士団として山原展子を葬り、供養する」と言い、江西住職は遺骨を渡してもらえませんでした。
山原展子は亡くなる3日前、「ハヤブサ地区にいたころが一番楽しかったな」と江西住職に言います。
そのことが心に残っていた住職は、「ハヤブサ地区の随明寺を継いでくれないか」という申し出に飛びついたと、三馬太郎と山原賢作に話しました。
「ハヤブサ消防団」における、山原展子のキーマンっぷりがすごい最終章です。
さらに山原展子旋風は続きます。
後日、山原本家のお墓が紫野の墓地から撤去されます。
あれだけ立派なお墓を移動させるだけでも相当なお金と人手が必要になるのに、「信岡信蔵はそこまでしてハヤブサでのしがらみを断ち切りたかったのだろうか?」と、三馬太郎は思いました。
しかし、三馬太郎は間違っていました。
山原本家のお墓は、山原本家がもともとあった土地に運ばれていたのです。
お墓の前で合掌していた信岡信蔵は、三馬太郎にこう言いました。
ここが一番相応しいと思ったんや
「ハヤブサ消防団」 最終章 聖地へ続く道 473ページから
お墓を移動させた理由は、山原家の宗派ではない山原展子のことを想った、信岡信蔵の「これでもか!」という配慮であり、仲の良かった妹に何もしてやれなかったことを悔やみ続けた信岡信蔵が、今できる精一杯の償いでした。
その話を聞いた三馬太郎は、信岡信蔵に言いました。
ぼくも、これがふさわしいと思います
「ハヤブサ消防団」 最終章 聖地へ続く道 473ページから
山原展子は、信岡信蔵の妹であり、江西住職の姉ですが、ともに血はつながっていません。
妾の子として生まれ、29歳と若くして亡くなった山原展子でしたが、亡くなってからも自分のことを想ってくれる、やさしいお兄ちゃんと姉思いの弟がいることは幸せだったと思います。
以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。