「魔力の胎動」のあらすじ

小説

東野圭吾さんの「魔力の胎動」を読みました。

「魔力の胎動」は「ラプラスの魔女」の前日譚ぜんじつたんです。

「魔力の胎動」が2018年の作品で、「ラプラスの魔女」は2015年の作品。その他に映画化された「ラプラスの魔女」があり、映画が公開されたのは2018年。

すべての作品を楽しむ気でいるので、どの作品から見るべきか迷いました。

2015年の「ラプラスの魔女」が好評だったので、2018年の「魔力の胎動」が作られたのだとすると、たぶん1番おもしろいのは「ラプラスの魔女」のはず。今までの経験上、あとあと作られた前日譚やスピンオフ、序章やエピソード0などは、オリジナルよりもお口に合わないことが多いという個人的な理由からです。

また、「ラプラスの魔女」の映画は評価がよろしくないので、映画を見てストーリーを知ってしまったあとに「ラプラスの魔女」を読むのはイヤだ。どっちかというと、映画を見て「本の方が良かった」と文句を言いたい(笑)

このような理由から、「魔力の胎動」「ラプラスの魔女」「映画版、ラプラスの魔女」の順番で「ラプラスの魔女」シリーズを楽しむことにしました。

そんなこんなで「魔力の胎動」を読み終わったあと、「ラプラスの魔女」を続けて読もうと思ったので・す・が、近所の図書館では「ラプラスの魔女」が貸出中で読めず。

ではと、これまた東野圭吾さんの「白鳥とコウモリ」を借りたので今から読む予定。

「白鳥とコウモリ」を読んでいるあいだに「魔力の胎動」のあらすじを忘れるはずなのでアウトプットしておきます。

 



第一章 あの風に向かって翔べ

スランプ中のスキージャンパー坂屋幸広さかやゆきひろを、羽原円華うはらまどかが魔力を使って立ち直させるストーリー。

スキージャンプのことなど知らないはずの羽原円華が坂屋幸広のジャンプを見てダメなところをバンバン当てるので、「当てずっぽうだろう」といちゃもんをつけるのが鍼灸師しんきゅうし工藤くどうナユタ。

ナユタは那由他で数の単位。なぜナユタなのかも、のちのちわかります。この二人、羽原円華と工藤ナユタが物語を引っ張っていくことになります。

羽原円華の魔力は、指先から火が出るとか天空からいかずちが……とかではなく、するどい直感力や観察力、あと風の流れを読む力があるのがこの章でわかります。

羽原円華はスキージャンプの大会で坂屋幸広を勝たせるために魔力を使いますが、魔力が使えるのは1本目のジャンプまで。2本目のジャンプは坂屋幸広一家を信じるという運まかせでした。はたして、2本目のジャンプの結果は……みたいな。

羽原円華が「今夜は、ここに泊めて」と工藤ナユタに言うシーンがあります。工藤ナユタが「君は嫌じゃないのか。男と同じ部屋で」と言いますが、「全然。あたしは平気」と答え、羽原円華は工藤ナユタが宿泊している部屋に泊まります。なぜ「全然。平気」と答えることができたのか、第四章でわかります。

第二章 この手で魔球を

羽原円華うはらまどかが魔力を使ってプロ野球選手を救うストーリー。

ピッチャーの石黒達也いしぐろたつやが投げるナックルボールを受けることができるのは、キャッチャーの三浦勝夫みうらかつおだけ。しかし、三浦勝夫の体は限界でキャッチャーをいつまで続けることができるのかわからない。

そこで後輩キャッチャーの山東さんとうを後継者として育てようとしますが、山東は石黒達也が投げるナックルボールをキャッチすることができない。原因は、ナックルボールがキャッチできると心から信じていないから。

そこで、華奢きゃしゃな羽原円華が催眠術を使い、石黒達也が投げるナックルボールをキャッチできるようになったという芝居を山東に見せますが、芝居がバレて失敗。そのあと、羽原円華は練習してナックルボールをキャッチできるようになったのだと明かし一件落着。本当は乱流を見切り、魔力でナックルボールをキャッチしてたんですけどね。

いや違うか、円華が山東に「あんたがしっかりしてたらこんな苦労はしなくていいのにって、正直、むかついてんだよ。プロの選手が何やってんのさっ」と殺傷能力の高い魔力を使い、山東さんをボコボコにしてしまいます。

それを見ていた石黒さんが、「負け犬のままで逃げるのか」「意地を見せてくれるのなら、俺も手を貸そう」と言ってくれ、山東さんもやる気を出して一件落着しました。

その他に、工藤ナユタが「男の世界のことだ。君にはわからないよ」と言い、羽原円華が「あなたにはわかるわけ?」と答え、ナユタが「わかるよ、もちろん」と言い、円華が「ふうん」と答えるシーンがあります。これも第四章への伏線なのかもしれません。

第三章 その流れの行方は

工藤くどうナユタ西麻布にしあざぶを歩いているとき、高校時代の同級生、脇谷正樹わきたにまさきと10年ぶりに出会います。その脇谷正樹が、工藤ナユタの容姿を言うシーンがあります。

そのシーンによると工藤ナユタは無精ひげで坊主頭、真っ黒に日焼けしている「どこのチンピラだよ」という容姿のようです。工藤ナユタは、サラサラヘアーでちょっと色白のお肌つるつるのイメージを想像しながら読んできたので、ある意味「魔力の胎動」の中で一番の衝撃でした。

それはさておき、この章は羽原一家が、工藤ナユタや脇谷正樹の高校の担任教師であった、石部憲明いしべのりあき一家を救う物語です。

石部憲明の息子、石部湊斗いしべみなとが川でおぼれてしまい1年以上ものあいだ植物状態であることを工藤ナユタと脇谷正樹は知ります。

石部湊斗が溺れたときに、川に飛び込み助けようとした奥さんを止めたことが正しかったのか、と、今でも考え続けている石部憲明。止めた理由は、二次被害。溺れかけた子供を助けようとした親が溺れて命を落とすケースがあることを知っていたからです。

でも、その判断は本当に正しかったのか。

その判断が正しかったことを羽原円華が証明します。また、日本を代表する脳外科医にして天才脳科学者、そして円華の父である羽原全太郎うはらぜんたろうの羽原手法で息子の湊斗も回復しそうな予感を残しつつ、第三章は終わります。

円華がナユタに羽原手法のことを説明するシーンで「ラプラス・コアへは、羽原手法を施してはダメ。怪物が増えると面倒だから」と言います。この言いまわしだと、円華さんはラプラス・コアへの羽原手法を受けているのでしょうね。「ラプラスの魔女」でここらへんのことは書かれているのでしょうか。「ラプラスの魔女」を読むのが楽しみです。

第四章 どの道で迷っていようとも

羽原円華うはらまどか工藤くどうナユタが、ピアニストであり作曲家の朝比奈一成あさひなかずなりを救う物語です。また、羽原円華が工藤ナユタを救う物語でもあります。

朝比奈一成はパートナーである、尾村勇おむらいさむが自殺したことを自分のせいだと思い悔やんでいました。尾村勇は銀貂山ぎんていざんの崖から飛び降り自殺したとされていましたが、実は違った。尾村勇は朝比奈一成の力になるために銀貂山に登ったことを円華とナユタが証明します。

尾村勇の死が自殺でないことを証明し朝比奈一成を救う理由を、羽原手法のためと円華はナユタに説明していました。でも、本当の目的は過去のトラウマから工藤ナユタを救い出すことでした。

過去のトラウマから救われた工藤ナユタは、本名である工藤京太くどうけいたを名乗ることになります。

また、第一章で円華がナユタと同じ部屋に泊まるのに抵抗がなかった理由がわかります。

第五章 魔力の胎動

第五章だけ書き下ろし。工藤ナユタは出てきませんし、羽原円華の後ろ姿っぽいのは出てきますが、それも羽原円華かどうかわかりません。

第五章は3年前に灰堀温泉村はいぼりおんせんむらで起こった硫化水素中毒事故の真相を、大鵬大学たいほうだいがくの先生である青江修介あおえしゅうすけとその助手、奥西哲子おくにしてつこが解き明かす物語です。

吉岡一家3人が硫化水素の事故で亡くなります。はじめは事故として扱われていましたが、一家心中の自殺かもしれない証言が出てきました。ですが、真相は違った。悲しい偶然がいくつも重なり起こった事故でした。また、本当に自殺しようとしていた人をついでに助けます。

第五章は、哲子さんが青江修介に言い放った「美人は自殺しません」「死にたくなっても美人は死なずにすむ方法がすぐ見つかります」「男にふられたぐらいでは、女は死にません」「女の死んでやるを真に受ける男はアホです」のセリフを読むだけでも価値があります。

最後に

「魔力の胎動」は、第四章が1番おもしろかったです。

尾村勇の死んだ理由を探しながら、朝比奈一成と尾村勇の関係を工藤ナユタの過去とからめて描いてあったところが上手くまとまっていましたから。

「おもしろいので、第四章だけでも読んでみて」と言いたいところですが、第一章から続けて読んでみて第四章が盛り上がった感があるので、第一章から読んでください(笑)

「魔力の胎動」おもしろかったです。

「ラプラスの魔女」を読むのが楽しみです。

映画は、う~ん……(笑)